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人生はサッカーだけじゃない。社会に適応するバルサの人間教育

サカイク 2013年10月4日掲載記事より転載
 
「全員がプロのサッカー選手になるわけではありません。だから人間として何かが欠けることのないように人間教育にも力を入れているのです」
 
 それはそうです。よく聞くフレーズです。でもこの言葉の主が、FCバルセロナの下部組織(以下カンテラ)の総責任者を務めるギジェルモ・アモール氏の言葉だとしたらどうでしょう?
 
 メッシ、シャビにイニエスタ、ピケ、ブスケツ。2012年のレバンテ戦ではピッチ上の11人全員がカンテラ出身、今シーズンの登録選手のうち68%がカンテラからの生え抜きというとんでもない“育成強者”クラブの責任者が「サッカーでも、サッカー以外でも、バルセロナが大切にしているのは“バルセロナの選手としてふさわしい”行動をとること」と言い切るのです。
 
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■12歳の選手たちが見せた“バルサらしさ”

 U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2013に合わせて来日したFCバルセロナU-12は、そのプレーだけでなく、試合前の態度、ウォーミングアップ、優勝後の表彰式の振る舞いでも「バルサらしさ」を見せてくれました。
 
 試合前に声を出し、気持ちを高める。対戦相手全員に握手をして試合に入る。バルサの選手たちは、プレーだけでなく、その行動も成熟していました。
 
「バルセロナの下部組織では、どんな年齢でも“バルセロナの価値観”を学びます。すべての子どもがサッカー選手として活躍できるわけではありませんから、生活面、態度、もちろん勉強もおろそかにしてはいけません。何かひとつでも欠けることのないようにそれぞれの専門家が指導に当たっているのです」
 
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 アモール氏はグアルディオラ元監督、元スペイン代表の右SBフェレール氏らとバルセロナのカンテラでしのぎを削り、ドリームチームと呼ばれた最強チームの中盤を支えたバルサのレジェンド。誰よりもカンテラや自身が育ったバルセロナの選手寮“ラ・マシア”を誇りにしている人物でもあります。
 
 今回、約10,000kmも離れた遠い国、日本へやってきたバルサの選手たち。東京の観光地にも足を運んだようですが、そういった行動のなかでも彼らには“バルサの選手として振る舞うこと”が当たり前のように求められます。選手の誰かが道端に落ちていたゴミを素通りすれば、「あのゴミは自分で捨てたものではないかもしれないけれど、見て見ぬ振りすることがバルサの選手として相応しいか?」とコーチが問いかけたそうです。こういったプロセスがピッチに立ったとときの振る舞いにもあらわれるのだというのです。
 
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■人生は長く、サッカーだけではない

「サッカー選手になれる、なれないだけではありません。サッカー選手になれたとしても人生は長く、その後のキャリアもあります。社会に適応していく術を学ばなければいけません。それはカンテラから育ったいまのトップの選手たちを見てもらえば、わかっていただけると思いますよ」
 
 アモール氏は世界最高峰のサッカー選手の集団であるバルセロナが、カンテラで育つ子どもたちにとって、サッカーだけでなく、人間的なお手本であると強調します。
 
 では世界中から選りすぐられてくるバルセロナのカンテラでプレーする選手たちは、人間性の適性まで見抜かれて入団してくるのでしょうか? アモール氏の答えはこうでした。
 
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「正直に言えば、精神的にまだ固まっていない年代の子どもたちは、人間性にものすごく問題を抱えているというケースはほとんどありません。その部分はバルサの一員になってからというところですね。プロ選手として活躍するには“闘争心”や“向上心”も非常に大切なことです。ただ大人しい選手がいいわけではないですからね」
 
 バルセロナに入るような選手たちは、その地域ではナンバーワンの飛び抜けた実力を持つプレーヤーたち。鼻っ柱の強い、いわゆる“ガキ大将”のような子どもたちばかりです。そういった選手たちは、どうやってバルセロナの哲学、バルセロナらしさを身に付けていくのでしょう。
 
 次回はアモール氏の言葉と、今回の大会期間中に見られたその一端をいくつかご紹介しましょう。
 
▼後編の記事はこちら
 
 
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ギジェルモ・アモール・マルティネス//
元スペイン代表のMF。FCバルセロナの下部組織で育ち、トップチームのUEFAチャンピオンズリーグ初優勝、リーガ・エスパニョーラの4連覇に貢献。公式戦421試合に出場し、チーム歴代4位の記録を持つバルサのレジェンド。現在は、下部組織のテクニカル・ダイレクターとしてチームの育成を支える。
 

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サカイクより転載