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子どもの遊びがヒント。ドイツ式室内トレーニングメニュー

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■遊びを応用したトレーニング
冬のドイツでは、雪が多かったり氷点下が続いたりするため、室内トレーニングが中心になります。同じように主に北陸、東北地方の皆さんは、雪や天候の影響が大きく、体育館でトレーニングをする機会が多いかと思います。あるいは、これから梅雨の時期に、室内でトレーニングをする地域も出てくるかもしれませんね。

今回は、悪天候の影響で室内トレーニングが多くなるチームがどのようなトレーニングを行なっているのか、ひとつのケース・スタディとして、実際に僕が行なっているトレーニングを紹介させていただきます。皆さんの参考にしていただければ、指導者仲間の一人として嬉しく思います。

まずは、僕が監督をしていたチーム、ないし、今シーズン手伝っているチームの状況を説明することで、文脈を掴んでもらおうと思います:

    <条件>
    ・年代は11歳未満の女子チーム(小学1年生から5年生まで)
    ・人数は1回10人から15人
    ・割り当てられたコートの広さはバスケットボールコートの半面
    ・時間は1時間(実質約45分)
毎年20人ぐらいチームに登録している選手はいますが、毎回トレーニングに来るわけではないので、だいたい10人から15人ぐらい、というように毎回のトレーニングで人数がばらけます。そういう状況なので、まず、トレーニングプランを組むことはありません。

基本的に、僕の室内トレーニングは裸足かソックスです。ボールも普通のサッカーボールの他にバレーボールのような軽いボール、マスコットボールのような小さなボール、風船などです。サッカーボールを使うのを好まれない施設の場合は、バレーボールのような軽くて柔らかい色違いのボールを3つぐらい用意するといいかもしれませんね。

最初の10分ぐらいは、子どもたちが遊んでいるのを見ながら、どんなことをしているのか観察しています。そこからトレーニングのアイデアが出ることが多いのです。つまり「こういう効果があるから、こういうトレーニングをさせよう」というのではなくて、目の前で子どもたちが夢中になってやっている遊びの中に、トレーニング効果を見出して、それをトレーニングに応用するんですね。

「始めるよ」という合図の前に、顔を真赤にして息を切らしている子どもたちを見ていると、身体に負荷がかかっているのが良く分かります。今回は、子どもたちの遊びを観ていて閃いた、コーディネーションのためのレクレーション・ゲームを紹介しましょう。

■ 「鬼ごっこ+α」=「効果的なフィジカル・トレーニング+α」

「目隠し鬼」というのがあります。ルールとポイントは次のとおりです:

    ・二人組になって、一人は前に立って、目をつむる。
    ・もう一人は後ろから前の人の両肩に手を載せて、進行方向を言いながら、一緒に動いていきます。そうやって、鬼ごっこをします。
    ・後の人がしっかり、「前、まっすぐ、右、左」というように教えてあげないと、前の人は目を閉じているので、どこへ走ったらいいのか分かりません。
     動きながら、とっさに必要な状況を伝えるコミュニケーションやコーチングのトレーニングになると思います。
    ・これは、足元が滑って、かつコートが狭いからできる遊びですね。子ども自身が「スピードを出してはいけない」ということを感じているんですね。
    ・指導者や保護者の方も一緒にやってみてください。必要な言葉って意外に出て来ないものですよ。

他には、「クモ鬼」というのもあります:

    ・両手、両足をついた状態で、鬼ごっこです。膝をついてはいけません。選手によると、この体勢がクモのように見えるので、クモ鬼らしいです。 ・これは、キツイです。1分3セットを指導者の皆さんも、保護者の方々も一緒にやってみてください。ふらふらになって目の前が真っ白になります。子どもはこういうことをケロッとやるので凄いですね。

やはり、サッカーは人と一緒にやるものなので、コーディネーショントレーニングでも、駆け引きやコミュニケーションのようなゲームの要素を常に取り入れてやりたいな、と心がけています。他には「手つなぎ鬼」など、即興でいろいろ変えながら休憩を入れて10分程度やります。

その後、さまざまな種類のボールや風船を使ったトレーニングを15分程度して、最後にボールを複数使ったり、複数のチーム同時に同じコートでプレーするミニゲームをルールを変えながら2,3セットやってトレーニングは終わります。機会があれば、そういったものの、具体的な内容も紹介したいと思います。

小学校低学年から中学年の(6歳から11歳未満)年代の女の子たちのチームなので、コーチが細かく指導する形の顕在的なトレーニング・メソッド(Exiplicit Training)ではなく、遊び・ゲームの中に内在的にトレーニング効果が入っているようなトレーニング(Implicit Training)を中心にメニューを組んでいます(※)。小学校高学年の選手たちやサッカーに慣れている10歳前後の男の子には、もう少しコーチがしっかり説明したり、修正する時間を取ったほうが良いと思います。

※Mariana Calabria Lopes, "Wirksamkeit von impliziten und expliziten Lernprozessen Aneignung taktischer Kompetenzen und motorischer Fertigkeiten im Basketball",Heidelberg (2011)

■ドルトムントでも取り入れられるトレーニング
これらのトレーニングは全て、遊びやゲームの中で、身体を使って覚えることを目的としています。例えば裸足やソックスでのプレーは、床の摩擦が効かないため、足で踏ん張らずに身体を動かすコツを感じられるようになるでしょう。狭いコートにおいて同時進行でルールを変えることで、常に同時に複数の情報を集めながら、頭のなかで変化し続ける情報を処理しなければならない負荷がかかるようになります。

ドルトムントのクロップ監督をはじめ最近のブンデスリーガのクラブでも『ライフキネティック』(参照[独語])のような、複数のことを同時にすることで、頭と身体の神経系の繋がりに負荷をかけるトレーニングが取り入れられ始めています。

狭くて滑りやすいコートなので、できないこともありますが、そうだからこそ楽しめることもあると思います。案外、限られた環境をフルに楽しむ方法は、子どものほうが、よく知っているかもしれませんよ。子どもたちからヒントをもらって、昔、自分たちがやっていた遊びには、どんなトレーニング効果があったのか、振り返ってみませんか?


鈴木達朗(すずき・たつろう)
宮城県出身、ベルリン在住のサッカーコーチ(男女U6~U18)。主にベルリン周辺の女子サッカー界で活動中。ベルリン自由大学院ドイツ文学修士課程卒。中学生からクラブチームで本格的にサッカーを始めるも、レベルの違いに早々に気づき、指導者の目線でプレーを続ける。学者になるつもりで渡ったドイツで、一緒にプレーしていたチームメイトに頼まれ、再び指導者としてサッカーの道に。特に実績は無いものの「子どもが楽しそうにプレーしている」ということで他クラブの保護者からも声をかけられ、足掛けで数チームを同時に教える。Web: http://www.tatsurosuzuki.com/

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