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日常生活がイメージトレーニングになる。 "メンタルの強い選手"の育て方(2)

※本稿は、『徹マガ』(著者・宇都宮徹壱)に掲載された『心はトレーニングで強くなる(前篇)メンタルトレーニング・コーチ大儀見浩介(株式会社メンタリスタ代表取締役)インタビュー』を転載したものです。※

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■誤審でイライラしないためには?

――例えば誤審の判定など納得いかないことがあって、試合中にメンタルが混乱してしまうことがあると思います。一度混乱してしまうとその試合中はどうにもならないとは思いますが、ネガティブな状況でメンタルを混乱させないためにはどういった準備が必要ですか?

 まず一つは、試合中イライラするということはプラスにならないことのほうが多いわけですよね。逆に言うと、相手をイライラさせたいわけです。人間は当然、イライラすれば視野は狭くなります。発汗量が多くなりエネルギーも消費しますし、疲れやすくもなりミスも増える。いいことがないわけです。感情にコントロールされるんじゃなくて、コントロールしたい。イライラから来るネガティブイメージには発展性がありません。発展性があるとしたら、その直後の局面くらい。長期的な展望で考えたら、何のプラスもないわけです。局面的にイライラして、その時は達成感や満足感みたいなものはあるかもしれない。でも、その先の成長を考えた場合、プラスってあまりないんですよね。そうならないために自分自身がクールでいられるように、ミスも逆手に取れるくらいに。
 
 微妙な判定で勝つよりは、しっかり勝ちたい。そっちの方が価値は大きいわけですから。先のことも考えて、局面的なことだけではなくて。過去は変えられない場合の方が多いですが、未来は変えられます。この未来をどう変えていくか、というところだと思いますけどね。

――常にそういうメンタリティを持っておかないと、一度崩れてしまえば、そのまま試合が終わってしまう。

 基本的に、ジャッジが覆ることはないと思います。しかし、覆ったならそれでいいのか。どうしようもない不運もあるかもしれません。けど、あくまでそれは目に見えないもの。運を引き寄せるような心技体をバランスよく充実させていけば、自信というものは揺るがないものになるはずなんですね。

――今回のインタビューで「心はトレーニングで強くなるんだ」という発見を得て、メンタル・トレーニングを実際にやってみようと思う読者の方もいると思います。そこで質問なのですが、メンタル・トレーニングを継続していく工夫というのはどういったものがありますか?

 まずは練習中だけじゃなく、24時間で考えることです。日常生活からちょっとしたことを意識すること。たとえば挨拶は姿勢とか表情、コミュニケーション、プラス思考のイメージトレーニングになります。朝起きてからの時間の使い方で、1日のコンディションは大きく変わってきます。そこで慌ただしく生活せず、時間的にゆとりをもって生活していくこと。それから、イライラするようなことが起きたら、対処策を講じてみる。深呼吸や気持ちの切り替え、セルフトーク、姿勢であったり表情であったり。そういったことを最初は意識して始め、最終的には無意識にできるようにしていく。(トレーニングが)続かない原因というのは目標や課題がないからだったりします。明確な目標や課題をハッキリさせる、ということが入口だと思いますね。

――何のためにこれをやっているのか、ということですね。

 そうです。漠然と夢のような目標だけ持っていると、続かないと思うんです。迷路に対する矢印、小さなプランやプロセスがあれば日常的にも意識して続けていくことができる。三日坊主になったり面倒くさくてできないっていうのは、自分自身が変わっていこうとする前に欲求が不足していると思うんですよ。

 細かく明確化し、指標を見つけていく。目的や自分自身の変化を見つけていく。自分自身が変わっていくことがモニタリングできれば、続くはずなんです。たとえばダイエットも、体重がだんだん減っていくとうれしくなるわけですよね。「ああこんなに減った!」「また減ってる! うれしいな!」という嬉しさや達成感があるから続く。自分自身に達成感が得られるような工夫、これを『セルフモニタリング』と言います。これを日誌の中でやっていくとか、定期的に心理テストを受検するとか、そうすると変化が見えてきます。「続けててよかったな、もっと良くなりたいな」っていう風になると思うんですよね。

――小さな達成感を積み上げていくことで、徐々に自信が形成されていくわけですね。

 初めに「いけそうだ」って気持ちをまず持つことです。「やってみたいな」「いけそうだな」「やってみよう」「やれた!」「よかったな」「次はこうやってみよう」「やれた!」っていう感じに。「もっと良いことやってみたい」「もっとすごいことしてみたい」「もっと良くなりたい・より良くなりたい」、この繰り返しでしょうね。

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■「結果からくる自信」は大崩れしてしまう?

――こういう考え方をいろんな人に広めたいですね。僕はどちらかというと叱られて育ったもので、自分に自信を持つことが難しかった時期があります。適切な自信を手に入れる、というのは非常に大事だなと、今回のお話を伺って思いました。

 そうですね。自信というのは、構成している要素が三つあります。一つが成功体験。うまくいった、結果を出した、点を取った、こういう成功体験からくる自信です。次が、能力に対する自信。心理面、体力面、技術面、こういった自分自身の持っている能力、生まれ持った能力に対する自信ですね。もう一つが練習量、日常生活、学校生活、こういったところになると社会生活。この三つから自信というのは成り立つんです。どれが一番崩れやすいかっていうと、結果からくる自信なんですね。これはもう、大崩れするんです。

――結果は崩れてしまうんですね。

 どんなにいい成績を残していても、どんなに素晴らしい点を取っても、点が取れなかったり、負けたりしたときにはガクンと落ちてしまう。例えば、能力に対する自信というのは奪われることがないわけです。なくなることはないから低下しない、というよりこれから上がっていくだけ。

 あとは日常生活の自信。ここがなくて自信を崩す人って結構いるんです。一生懸命練習して勝ち進んできた、でもここ一番で力を出せずに負けたっていう選手は、だいたい机の上がしっちゃかめっちゃかで部屋はぐちゃぐちゃ。行き当たりばったりで、普段から努力して積み上げている気持ちがない。だから迷うし、不安になったりする。

 この3つの構成要素を自分で高めていけるような工夫や努力が、大事になってくるわけです。そうすると自信って崩れないですから。不安になるのは自分の考えすぎであったり、サボっていた気持ちだってことに気づくわけです。結果が出なくても、自信というのは努力次第で積み上げられるものです。本番が楽しみになる、次へのチャレンジをしたくなる、ということに気づくんですね。

■正解だけじゃなくて、成果を見極めてほしい

――今後、メンタルトレーニングを通じてどのように日本の社会に影響を与えていきたいと思っていらっしゃいますか?

 今やっている競技であったり、スポーツというものをもっともっと好きになってもらいたいと思います。今現在サッカーをやっている人は、もっとサッカーを好きになる。今現在バスケをしている人は、もっとバスケが好きになるように。怒鳴る、やらせる指導ではなく、自ら進んでやっていく気持ち、より良くなりたいと内側から出てくる内発的なやる気。こういうものを部活、授業、勉強、仕事、介護でも浸透させて、当たり前になっていくお手伝いをしていきたいと思います。

――実際、大儀見さんの考え方はまだまだいろんな現場に足りていないなということを今回お伺いして非常に思いました。僕自身も自覚する部分として、例えば仕事で誰かがミスした時に、僕は指摘してしまう方なんです。でも、それで長いスパンで見て良い影響が出ているのかっていうと出ていない。同じ人が同じミスを何度も繰り返し、僕は同じ指摘をしてうんざりする。

 僕は、ミスがあったときは冷静に「なんでミスが起きちゃったの?」と聞きます。なんでミスが起きたかを話してもらって、話すことでまとめてもらうようにします。「何でミスが起きたんだ!?」という(強い)言い方をすると焦って、考えるどころじゃなくなるんですよね。

――間に合わせの言い訳しかできなくなる、と。

 そうですね。冷静に「なんでミスが起きちゃったの?」って聞くと、いろいろ出てくると思うんですよね。じゃあ次はどうしたら上手くいくか、どうすれば見立て以上のことができるようになるか、そういう工夫自体を楽しめるようにしたら次はもっともっといいだろうねっていう形でまとまればいいわけです。自分から探ってやっていくような形にならないとロボットになってしまいますし、伸びていかない。正解だけを求めるようになりますから。正解だけじゃなくて、その先にある成果を見極めてほしい。これはミスも成功も含めて。決まっていたことや良かれと思ってやったことが上手くいかない、ということもあるわけですよね。その時は、上にいる先輩や指導者が良くないということになります。指導者自身の失敗ということ。当然部下の失敗もありますけれども、上司である僕自身の見立て不足です。

 ミスする前に思っていた成功イメージというのはあくまでも過去の見立てで、またそれを目指しちゃいけないと思うんです。より良くなりたいっていう気持ち、やりがいを見つけていくこと。その辺は、コーチング心理にも繋がっていきます。

――少しずつでもできるようになっていけば、毎日をワクワクしながら送れますね。

 結果やメダルの色というのは、あくまで人が評価すること。相手と競ったから、相手がいたから成り立つことであって、自分自身がすべてやったことではないわけです。一番は、自分が自分にご褒美をあげられること。自分で自分を評価できる、次に向かっていけることの素晴らしさ。それが、一番の報酬です。

――本日は、貴重なお話をありがとうございました。

<了>

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大儀見浩介(おおぎみ・こうすけ)
株式会社メンタリスタ代表取締役。静岡県清水市生まれ。東海大学第一中学校(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に、元日本代表の高原直泰氏とともに全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将として鈴木啓太氏(浦和レッズ)とプレーした。東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。

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