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実際の指導はラクじゃない。JFAリフレッシュ研修会レポート

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■リフレッシュ研修会とは?

 先日、C級以上の指導者にはおなじみのリフレッシュ研修会を受講しました。これは東京都サッカー協会が主催するもので「4種年代向け指導内容コース」と明確にターゲットを絞り実施されました。リフレッシュポイントとして20ポイントが与えられるコースです。リフレッシュポイントというのは、C級以上の有資格者向けに4年間で40ポイントの取得が義務付けられたもので、このポイントを期間中に取得することができないと、資格を更新することができません。この制度によって、有資格者の指導技術の向上や最新の指導理論を知ることができ、それらの現場での展開のために役立てられています。

 なお、このリフレッシュ研修会の検索や取得ポイントの確認を行うことができるJFAの登録システムが4月1日から大きく変更になります。これまでの登録に加え、JFA‐IDを取得して管理するシステムに移行します。詳しいことはJFAのページ(http://www.jfa.or.jp/newkickoff/index.html)を参照してみてください。

 ということで、申込が受理されると手元に案内状が届きますが、ここに今回の指導実践で行うテーマが記されています。それが以下の4点です。

1・ゴールを奪う(突破)
2・ゴールを奪う(シュート)
3・ゴールを目指す(パス&コントロール)
4・ボールを奪う

 ここでまず注目して欲しいのは、「点を取る」という一つの目的を、4つの要素に細分化できるという点です。勉強熱心な読者には釈迦に説法ですが「点を取るのだからシュート練習でいいだろう」という考えは指導としては浅いのです。子どもたちの可能性を引き出すためにも、シュートに至るまでの過程を細分化し練習メニューに落としこむ必要があります。

 自らのチームを指導し試合を行うM-T-M(Match-Training-Match)メソッドの中でチームが今必要とする要素を抽出し、得点が取れていないのなら、ゴールを奪うという目的に向けた練習メニューを組む必要があります。守備に課題があるのであれば、守備の局面で欠けている要素を抽出し、同じように練習メニューを組まなければなりません。指導者としてはこうした点を意識してメニューを組む必要があります。

■指導実践を考える

 今回の研修会では、受講者が上記4つのテーマに従った練習メニューを考え、指導実践を行いました。今回の研修会の指導実践は、くじによって組み分けされた2人1組のペアで行われました。僕のペアとなったのは、中学生年代の指導者。このくじによって自動的に僕らのペアは、3の「ゴールを目指す(パス&コントロール)」が課題となりました。

 指導実践に先立ち、指導計画案を完成させる必要があります。これは1・ウォーミングアップ、2・トレーニング1、3・トレーニング2、4・ゲームと進行する練習案で、指導実践では、3のトレーニング2と、4のゲームを行うことになります。

 実際に受講生が指導実践を行うのは午後で、午前中はU12年代の大会のビデオを教材とした講義に加え、守備面の改善を意図した実技が行われました。その後、お昼の時間となった1時間半の間に、ペアごとに指導実践の指導計画案を完成させます。

 今回、指導計画案の作成にあたり課題となった「ゴールを目指す(パス&コントロール)」について個人的に要素を分解してみました。頭に浮かんだのは「1・止める、蹴るの質の向上」「2・視野の確保」「3・ゴールへ向かう仕掛けの意識」の3点でした。

 そこで、このようなウォーミングアップを考えました。5人の子どもを+の形に配置。

    A


B   E    D


    C

 AからEにパスを出す場合、「背負っている」か「ターン」のどちらかのコーチングを行います。Eは「背負っている」の際には真横に位置するBかDにパス。「ターン」の場合は振り返ってCにパスを出します。時間や回数などによって適時、Eの位置に入る子どもを入れ替えます。これにより、パス&コントロールの練習を、コーチングと共に習慣づけることができないかと考えたのです。

 しかしウォーミングアップ後に行うトレーニング1、トレーニング2、ゲームのアイディアが湧きません。一般的にトレーニング1は、相手のプレッシャーがかからない状態での練習で、トレーニング2は相手からのプレッシャーを想定したより実践的な練習になります。もちろんゲームは、そこまでのステップを組み込んだ応用編として行う必要があります。

 そこでペアとなった指導者と相談し、それぞれのメニューを完成させていきました。それが、以下の写真にある指導計画案です。

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 今回指導実践を担当したトレーニング2は、20m×10mほどのグリッドの中で2対2+フリーマンの3対2を作り、その両端に設定した5mほどの立ち入れないエリアの外側で待機するサーバーにパスを通すという練習になります。

 サーバーからのパスを受け、攻撃側の2人+フリーマンが2人の守備選手のプレスをかわし、逆サイドのサーバーにパスを通すという練習で、パスを受けた際のファーストチョイスとして前を向く意識を出して欲しくて数的優位を作りました。また、パスがブレたりトラップをミスしたら、前を向けません。そのタイミングでフリーズさせて指導すれば形になるかと考えました。

■実際の指導は簡単じゃない

 しかし実際に行った指導実践では、7分しかない時間のうちルール説明に3分を費やしてしまい、その点を指摘されました。3分の説明後にもルールが徹底できておらず、受講生は戸惑いながらのプレーとなりました。普段から指導し慣れていないということは言い訳にはなりませんが、自己採点でも0点に近い指導実践となりました。

 参加したほかの指導者の指導実践を実際にプレーしながら見させてもらいましたが、本当にうまく受講生を導いている人も中にはおり、参考になりました。今回行った指導実践では、受講生が自ら入れ替わることができない練習だったのですが、うまい指導者は受講生の入れ替わりが自然だったり、出番を待つ時間が少なかったりとスムーズでした。また声がけも適切で、参考になりました。

 なお、1日の研修会を終えて藤原和彦インストラクターの指導の中で最も伝わってきたのが、子どもたちに1プレー毎にこだわらせるということでした。シュートを打つにしても、ふかした時に「そこでなんでふかしたの?」という声がけをすることを求めていました。パスをミスしたり、コントロールをミスした時にも「なぜ?」という問いかけをするよう求めていました。
 
 そうすることで、子どもたちは自らのミスを振り返り、ひとつひとつのプレーを大事にできるようになるのではないかということだと感じました。ミスをさらっと流さない。育成年代に限らず大事なことだと感じました。


江藤高志(えとう・たかし)
1972年12月生まれ。大分県中津市出身。99年にコパ・アメリカ観戦を機にライター業に転身し、04年シーズンから川崎の取材を継続。取材に活かすべく2007年にJFA公認C級ライセンスを取得する。近著として、川崎U12を率いダノンカップ4連覇など成績を残した髙﨑康嗣元監督の「『自ら考える』子どもの育て方」の構成を担当した。