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「99%の集中=100%の失敗」。10人で勝利する方法とは?

※本コラムは、「COACH GARY」のブログ記事「THE NEW BARRIER TO SUCCESS: WINNING WITH TEN MEN」を翻訳したものです。※

 モダンフットボールにおいて、11対10で戦う状況が急速に増えている。ファンはトップレベルの、紙一重の差で競い合うチーム同士が激突することを期待するが、試合は1枚のレッドカードによって変貌する。1人多くなったチームは巨大なアドバンテージを得て、極めてプレーしやすいように見える。

 我々はこうした光景を、UEFAチャンピオンズリーグのアーセナル対バイエルン、マンチェスター・シティ対バルセロナという2試合で目撃した。ゆっくりと広まっているトレンドは、「こうした状況にどう対応するか?」だ。パターンはだいたい決まっており、避けがたい。レッドカードが提示され、選手たちは固まり、試合の行方は不透明になり、コーチは試合後に嘆き、ファンもメディアもこの話題で持ちきりとなる。
 
 ただ、これは逃れられない運命として扱われるべきだろうか? 現代は、試合のあらゆる面について準備が進んでいる時代である。コーチとして、やれることはあるはずだ。運命をただ受け入れる代わりに、この過酷な状況を耐え忍び、生還する方法があるはずだ。

 戦術的なレベルにおいては、10人になった際の戦い方にはある種のテンプレートがあるように思う。すなわちフォワードの選手に犠牲を強い、DFラインを下げることだ。ただ、DFラインを下げることは、相手のチャンス数を増やすことの妨げとして必ずしも十分ではない。世界のトップチームともなれば、守備的な4バックにダメージを与えることなど造作もないのだ。
 
 彼らは、相手のMFラインとDFラインをサイドからサイドへ揺さぶりを掛ける。ヨーロッパのトップチームで、最近のマンチェスター・ユナイテッドのように1試合で82本のクロスを上げるようなチームは稀だ。チャンピオンズリーグで戦うトップレベルのチームは、もう少し辛抱強くプレーする。ダイレクトにプレーする代わりに、各エリアを徹底的に調査し、スペースが空くことを待つ。右サイドにスペースが空かなければ左サイドへ、その逆もまた然り。中盤に、小さなスペースが生まれることを待ち続けるのだ。
 
 こうしたことを踏まえれば、深い位置に引きこもることが大した違いを生み出さないことはわかるだろう。2014年2月20日に行われた試合で、アーセナルはボールの後ろに多くの選手を配置し、MFラインとDFラインに生まれるスペースを絞った。しかしながら、バイエルンが次々とサイドを変えることで、アーセナルはスペースの管理に非常に苦労することとなった。
 
 バイエルンは数的同数となればより広いスペースに展開し、アーセナルに多くの問題を引き起こした。2点目のゴールは、その典型といえる。多くのディフェンダーがいるにも関わらずボールにプレッシャーが掛かっていず、世界的なFWにとって理想的といえる状況となっていた。

 こうしたトップレベルのチーム相手に守備をするにあたっては、ある考え方を捨てる必要がある。それは、「片方のサイドに相手を限定すること」だ。アーセナル戦におけるバイエルンは、ファイナルサードにおいて251本中242本ものパスを成功させた。同エリアにおいて、このパス成功数は驚愕すべきものだ。アーセナルはバイエルンにプレッシャーを与えることに失敗し、彼らの選択肢を奪うことに失敗した。片方のウイングにロッベンがいるようなチーム相手では、決壊は時間の問題と言えた。
 
 スポーツ心理学者のダン・エイブラハムスは、選手たちがボディランゲージを効果的に使うことの重要性について語る。ダンはまた、心理は生理によって動かされると考えており、こうしたケースはこれ以上ないほど有用な例になると考えている。相手にスペースを与え、サイドからサイドに振り回されるように動かされれば、最終的にはアグレッシブに動けなくなってしまう。
 
 スペースを埋めるためにアグレッシブに動き、ボールを保持する相手を難しくすることは、守備側のチームにポジティブな影響をもたらす。注意力が高まり、常にコミュニケーションが図られ、非常に高い集中力を保てる。また、ファンにも助けを求めることが可能だ。劣勢でいるときに観衆が静かなら、そこから力を得ることは難しいだろう。

 10人となったチームが逆境を抜け出しポジティブな結果を得るためには、選手たちの姿勢にすべてが掛かっている。ディフェンダーとゴールキーパーだけではない。アタッカーの選手たちも、袖をまくり、チームのために一層のハードワークを行わねばならない。2010年のカンプ・ノウにおいて、10人となったチェルシーのディディエ・ドログバが果たした役割を思い起こそう。彼は自らの役割を受け入れ、左サイド全域を走り回った――結果としてPKを与えてしまったが。バイエルン戦におけるアーセナルのエジルの守備意識と比較すれば、巨大な差があることがわかるだろう。
 
 また、マンチェスター・シティは自分たちのゴールからバルセロナを遠ざけるために素晴らしくハードワークした。試合終了直前にガエル・クリシが集中を切らし、ダニ・アウヴェスを捕まえることに失敗するまでは。このレベルにおける99%の集中は、100%の失敗と同義である。誰もがこのことを認識せねばならない。

 さて、これらのことにコーチは準備できるだろうか? 他の事柄と同様、特定のシナリオへの対策を織り込んでいるチームは、より効果的に準備ができるはずだ。レッドカードが提示されても、ひざを屈してはならない。その代わりに、こうした状況では日々のトレーニングにおける姿勢が問われる。ロッカールームを離れるときに、どのようなマインドセットだったかが試される。コーチは、いずれにも深く影響を与えることが可能だ。

 準備することが難しいものもある。例えば、「PK戦を準備することは難しい」という話はよく聞く。「あのプレッシャーを再現することは不可能だから」ということが理由だ。だが、10人でプレーする局面は練習で再現できないだろうか? もちろん、答えはノーだ。我々は練習において同じ状況を再現し、選手に戦術的な答えを求め、状況に対処するメンタリティを培うことができる。
 
 守備的で圧力を強める練習では、大抵数的不利の状況でトレーニングが行われる。選手は、こうした状況に対処し、試合につなげることが求められる。かつての名監督であるファビオ・カペッロやジョージ・グレアムは、練習において4バックとGKに対して11人がプレーするような状況を作った。伝説的なコーチは、アタッカーの枚数がディフェンダーに対して10対5で優っている状況を作ったが、アタッカーはとうとうその守備網を突破して得点することができなかった。
 
 ディシプリン、そして絶え間なく努力を続けるメンタリティは、何物にも代えがたい財産だ。「ゴール前にバスを駐車する」話をしているのではない。目の前の状況に対して準備し、チャレンジするメンタリティのことだ。タフなメンタリティについて、こうした定義を聞いたことがある。「どういった状況が生じようと、試合開始と同じだけの努力を払って試合を終えること」。
 
 チャンピオンズリーグも多くの試合が過ぎ、早いものでワールドカップの時期が近づいている。ネガティブなシチュエーションをポジティブなものに変えるチーム、そしてそのチームをどのようなコーチが率いるのか、私は今から楽しみでならない。

翻訳:澤山大輔

Original text: 「THE NEW BARRIER TO SUCCESS: WINNING WITH TEN MEN」 twitter: https://twitter.com/GaryCurneen

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