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ルーティン化が重要。試合当日ミーティングのコツとは?

 ジュニア年代における試合当日のミーティング、皆さんはどのように行なっているでしょうか? チームによって千差万別でしょうが、新年度に新チームを担当したり、あるいはコーチとしての経験がまだ浅い方には、なかなか難しい部分もあるのではと思います。
 
 ドイツでコーチ経験を重ねておられる鈴木達朗さんから、試合当日のミーティングにおけるヒントが届きました。すぐに使える即効性の高い内容となっています、ぜひお読みいただければ幸いです(文:鈴木達朗)。

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 試合前のミーティング、皆さんはどのように行っていますか?経験を積みながら、徐々にひとつの型、チームの流れのようなものが出来上がってくるとは思いますが、コーチになりたての方や、新年度になり、新チームで経験したことのなかった年代を受け持つ方もいると思います。

今回は、新年度に当たり、私自身も指導者としての経験がなかった頃に、ミーティングやチームビルディングに関して「こういうことを知りたかった」という記事を見つけたので、それを紹介したいと思います。

■試合前のルーティーンの重要性


ミーティングや試合前の準備は、「各チームそれぞれにやり方があるはずだ」と考える方もいると思います。どのぐらいの長さにするのか、どのような話をするのか、どのような円陣の掛け声なのか、そういったことにチームの色は出ることでしょう。

ですので、まずは試合前のミーティングの流れをスキーム化することで、チームおよび選手が試合に入るまでの一定のリズムを掴むことの利点を上げましょう。

皆さんのなかにはおそらく、「クリスティアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか」という著書のタイトルや、野球のイチロー選手のバッターボックスに入るときの一定の「儀式」について、気になっている方もいると思います。

簡単に言うと、毎回決まった動作をすることで「自分のリズム」を作っているのです。ルーティーンを行うことで、一度これまでの周りの流れから、仕切り直して、自分の得意な形を作る、その作業がメンタルを安定させ、パフォーマンスを向上させる、という話だったと思います。

試合当日のミーティングは、それと同じことをチームという組織で行うのです。しっかりと試合に入るまでの流れにスキームと構造を与えることで、選手が落ち着いて試合に挑み、安定したパフォーマンスが出せるように準備をすることができるのです。


■トレーニングと試合での、コーチングの内容の違い


普段は「考える」ことを強調しているのに、急にルーティーンという話になって、困惑されている方もいると思います。ここでは、トレーニングと試合での頭の使い方の違いを説明しましょう。まず、トレーニングの頭の使い方は、「インプット」です。

●トレーニング(インプット。新しいことを認識し、知識を蓄え、できるようにする):
-学ぶ
-自動化する
-コンディションを整える
-内面化する

●頭を使って「考える」、試行錯誤しながら学ぶ作業
試合では、身体を使っての「アウトプット」です。

●試合(アウトプット。情動を働かせ、身体の感覚を働かせる作業)
-「考える」作業をストップさせ、感じる。(ブルース・リーの「Don't think, feel!」)
-「今日は調子が良いぞ!」と選手が思うこと
-「直感」にしたがってプレーできる
-「自分の中にある獣」を呼び覚ます
身体の感覚を研ぎ澄ませ、働かせる作業

というようにまとめられます。そう入っても、「賢い」選手は試合の流れを読んで分析的にプレーしているのではないか、と思う方もいるかもしれません。ここで、以前に書いたホルスト・ヴァイン氏についての記事と、ライフ・キネティックスの記事を振り返っていただきたいのですが、試合(ゲーム)のための分析的な脳の使い方もトレーニングによって自動化される、身体の動きの一部であり、これらの動作は、脳の情動を司る部分によって長期記憶にストックされたり引き出されたりするのです。試合前の準備をルーティーン化し、一度頭の中をリセットすることで、自然な状態で試合に挑めるようになるのです。


■具体的な4つのポイント

ここからは、具体的なヒントを1つずつ見て行きましょう。

1.ゲームプラン:ジュニア年代では対戦相手に合わせた細かい戦術的な話ではなく、これまでのトレーニングで学ばせたいと思っていたポイントを2つ、3つに絞って書き出して、選手に見えるようにする。言い換えれば、試合のなかで、どのようなプレーを実践させたいのかを、トレーニングのなかに組み込む必要がある。

2.戦術ボードを使う:子供にとっては、抽象的な言葉で説明されることほど、頭に負荷がかかることはない。こういったことをコーチはなんとなくやってしまいがちであるが、それは選手の感覚を鈍らせてしまう。できるかぎり、ヴィジュアル化し、シンプルで明確で、短い指示を出すように心がける。

3.ハーフタイム:ハーフタイムの指示は最高で3つまで。目立った部分だけに絞って修正を「提案」する。例え負けていても、シンプルに、選手がもう一度気持ちよくグラウンドに戻れる声がけを心がける。

4.試合後:試合後は、もう一度選手がみんな集まって、別れの儀式(円陣など)を行う。「サンドイッチ・フィードバック」を心がける。まず、選手たちの試合の中での良い部分褒める(サンドウィッチの下の部分)、改善点を短く、明確に伝える(サンドウィッチマンの中身)、もう一度、ポジティブなフィードバックで話を締める(サンドウィッチの上の部分)。

特に、最後の挨拶の儀式は、先のルーティーンの話に繋がると思います。勝っても負けても、一度、円陣などのルーティーンを行うことで一週間のサイクルの終わりを認識し、週明けから再び「仕切り直し」ができるようになるからです。

ポイントは、試合までの流れを一定のものにし、ルーティーン化することで、選手が考え込むことなくグラウンドに向かえるようにすることです。各ミーティングでコーチからの言葉がポジティブなもので終われば、選手たちは試合のグラウンドに気持よく向かい、試合の翌週は自然と選手もトレーニングに来たいと思えるようになるでしょう。そうなれば、選手が自発的に動いていると感じられる、シーズンを通しての良い循環のサイクルができ始めると思います。

参考にしていただき、今シーズンの皆さんの活動の手応えに繋がれば、これ以上嬉しい事はありません。皆さんの新シーズンの活躍を祈っています。

鈴木達朗(すずき・たつろう)
宮城県出身、ベルリン在住のサッカーコーチ(男女U6~U18)。主にベルリン周辺の女子サッカー界で活動中。ベルリン自由大学院ドイツ文学修士課程卒。中学生からクラブチームで本格的にサッカーを始めるも、レベルの違いに早々に気づき、指導者の目線でプレーを続ける。学者になるつもりで渡ったドイツで、一緒にプレーしていたチームメイトに頼まれ、再び指導者としてサッカーの道に。特に実績は無いものの「子どもが楽しそうにプレーしている」ということで他クラブの保護者からも声をかけられ、足掛けで数チームを同時に教える。Web: http://www.tatsurosuzuki.com/


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