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攻撃練習を多くすることが、守備をも向上させる? ドイツで実践される手法を紹介

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文:中野吉之伴

チーム作りの過程で守備を整備するのは、大事なことです。ドイツには「攻撃が勝利を決め、守備が優勝へ導く」という伝統的な言葉があります。長いシーズンを戦い抜くには、安定した守備が必要なのは確かです。

では、どのようにその守備を安定させていくべきなのでしょうか? 守備を安定させるためには、まず守備練習を徹底させたほうがいいのでしょうか。様々な考え方があると思いますが、1つのヒントになる言葉があるので紹介させていただきます。

ドイツで毎年7月に開催される、国際コーチカンファレンスに参加したときの話です。プロサッカーコーチ(日本で言うS級)、A級ライセンス保持者対象に行われるこのカンファレンスでは、ビッグトーナメント(ワールドカップや欧州選手権)の総括や分析、最新のトレーニング理論、スポーツ心理学者による講義などと平行し、ドイツサッカー協会やブンデスリーガクラブ指導者が実際にデモンストレーショントレーニングを行います。その中で2年前にトレーニング実践を行った1.FCケルンU23監督フランク・シェーファーがこんなことを語っていました。

「攻撃的なチーム、守備的なチーム、ショートパスを好むチーム、カウンター傾向のあるチーム。監督の嗜好によりチームは様々な姿を見せ、そのスタイルは無数にあるだろう。しかし、実際にピッチ上で決定的に重要になるのは『能動的にプレーできるかどうか』だ。受動的なチームからアクションは生まれない。自分たち主導で、積極的なトライができるかどうか。それを突き詰めるのがトレーニングだ」

主体的で、積極的なトライ。では、選手はどのようなアクションに、より積極的に取り組むでしょうか? ボールを追いかける選手はみんな「攻撃的なサッカーをしたい」と思っているのではないかと思います。誰だってできる限り多く、長くボールに触っていたい。それならば、攻撃からアプローチした練習をより多く取り入れるほうが選手のモチベーションは自然と高くなるし、何よりやっていて楽しい。

ではどのように攻撃練習を取り入れるのがいいのでしょうか? 注意しなければならないのは、はっきりと攻撃練習・守備練習と分けてしまうと、選手がそのこと「だけ」を考えてしまう弊害が起こるということです。

サッカーは、絶え間なく攻守が入れ替わるスポーツです。どこからどこまでが攻撃で、どこからが守備という明確な線を引くのは非常に困難です。試合では相手がボールを保持している時にも攻撃のことは考えないといけないし、逆に自分たちがキープしている時でも次の守備を想定しておかなければなりません。つまり、練習から攻守の切り替えが頻繁に起こるように設定するのが望ましいということになります。

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私が2009年夏に研修していたSCフライブルクU15監督パトリック・ツィンマラーは、常日頃からこういうことを口にしていました。

「攻撃をトレーニングする上で一番大切なのは、全員の守備意識だ。一瞬の気の緩みも許さない激しく積極的な守備に対してボールをキープし、正確なパスを繰り出し、そこを突破していくことでしか、自分たちの攻撃レベルを上げていくことはできない。

その上で最も大事なのが、戦いに挑むという気持ちを植えつけることにあると思う。1対1における姿勢、競り合いにおける積極性、試合に向けての勝ちたいという意欲。そうした、今後サッカー人生を歩んでいく上で基盤となるものを築き上げていくのが大切なんだ」

余談になりますが、私は日本から短期留学に来たJリーグクラブのユース、ジュニアユース選手のプレーを何度か見たことがあります。相手を置かないパス・シュート練習、ある程度スペースがある中でのミニゲーム(1対1や4対4)だと、こちらの選手以上のプレーを見せることもよくあります。

しかし相手選手のプレッシャーが絶えずかかる状況でのトレーニングになると、うまくプレーに関与できなくなります。プレー判断の遅さ、パスを出した後の動きだし、攻守の切り替えのまずさ、守備意識の少なさ、動きながらのプレーの精度、パススピード選択のまずさ......そういう部分が目立ってしまうのです。

最近は、下部リーグでも多くの日本人がプレーをしています。6部リーグ所属クラブ監督の話ですが、「ボールを持った時の足元の技術は素晴らしい。でもボールを持たない時の彼らはゼロだ」とオフ・ザ・ボールでの動きの悪さを指摘していました。

あるいは私が参加したA級ライセンス講習会指導教官のベルント・シュトゥーバーは、何度も日本で講習会やスクールを行っているのですが、「日本の12~3歳までの子どもたちの中にはすぐにドイツにつれてかえりたいと思う選手が何人もいるが、不思議なことに16~17歳になるとそうした選手が殆どいなくなっているんだ」と話していました。

世界的に見ても日本人選手は「技術レベルが高い」と評価されて久しいですが、その技術は本当に試合で生きる技術なのかどうか。身につけたはずの技術をどうやってアウトプットすべきか、という術を知らずに育っているのかもしれません。

では実際、どのような練習を行うのがいいのでしょうか。ただ単にゲームをやらせて、「激しく守備をしろー!積極的に動けー!」と怒鳴るだけでは選手にメッセージは届きません。まずは「パスを繋げなくはないが、中々ゴールまでボールを運べないくらい」のスペースと人数を設定することが重要になります。

ボールを奪いに行けばカットできる状況は、選手のボール奪取意欲をかきたてます。そうした上で、スペースでボールをもらう動きを指摘したり、ダイレクトでパスを出せるポジショニングを意識させたりすることで糸口を見つけさせます。

攻撃チームが優勢になったら、今度は守備チームに例えば「闇雲にアタックするだけではなく、相手の動きを絞り込めるようにサポートしよう」とか、「後ろからマークの受け渡しに関して声を出そう」という感じでテコ入れをします。そうすることで、お互いが気を抜けないままトレーニングを進めることができます。

もちろんゲーム形式でやってみて感じた弱点を取り出し、集中的にトレーニングさせるのは効果的です。ただパスを回す練習をするのではなく、相手マークを外す動き、タイミングよくスペースに入る動きなどベースとなる実践的な動きを繰り返し練習することでゲームに反映できるようにするのが重要でしょう。

『ドイツサッカーの革命児』として、現在あらゆるクラブで試みられている攻撃サッカーの礎を築いたラルフ・ラングニックは、このように語っていました。

「攻撃において大事なのは、スピードとプレーアイディア。アイディアでも、どこでどのようにスピードを上げるのか、あるいは相手のスピードを殺すのかがポイントになる。そして重要なことは、ボールを奪われることをミスだとは捉えないことだ。パスミスをせずにゴールまで迫ると考えてはだめなのだ。パスミスはゴールに向かうための大事なプロセスの一つでしかない。奪え返すことも含めてのチャレンジなのだ。

パスを出せるかもしれないスペースがある時に0.5秒迷うだけでそのスペースは消えてしまう。勇気がなければならない。若い選手にとってリスクを冒して積極的にプレスを仕掛け、ボールを奪い取り、素早く仕掛けていくサッカーは冒険のように魅力的なものなのだ」と語っていました。

指導者が選手と一緒にリスクに取り組み、サポートしていく。そうした共同作業を通して選手自身から「こうした動きがいいんじゃないか。こんなプレーも出来るんじゃないか」というアイディアが出てくるのが理想的だし、双方にとって刺激的で楽しい状況なのだと思います。
 
中野吉之伴(なかの・きちのすけ)
秋田県出身。1977年7月27日生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督、翌年にはU16/U18総監督を務める。2013/14シーズンはドイツU19・3部リーグ所属FCアウゲンでヘッドコーチ、練習全般の指揮を執る。底辺層に至るまで充実したドイツサッカー環境を、どう日本の現場に還元すべきかをテーマにしている。


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