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「データを分析して、指導の現場に落としこむことが重要」CLIMB Factory代表 馬渕浩幸氏インタビュー(前編)

サッカーのプレーが高度になり細分化されるにつれて、データの重要性も高まってきている。トップレベルのクラブや代表チームにおいては、データアナリストを抱えているところも増えてきており、選手交代や戦術面において、今後はさらにデータが重要視されるだろう。日本でも、サッカーの現場にデータを取り入れるチームが増えつつある。そこで今回は、育成年代を中心にデータの収集・分析を行っているCLIMB Factory代表の馬渕浩幸氏に話を聞いた。

date_image_580.jpg(取材・文/鈴木智之 写真/田川秀之)


■育成年代にも効果的なデータ分析とは

――馬渕氏が代表を務めるCLIMB Factory社はサッカーのデータを分析する業務を行われていますが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

馬渕:メインのサービスに、選手情報のデータ管理があります。これは、フィジカルデータやコンディションデータ、トレーニングデータを測定してデジタルで保管し、分析をするサービスです。日本のスポーツ界では身体測定や体力測定、ケガの履歴などのデータを採ってはいるのですが、効果的な活用という意味では向上の余地があります。弊社は選手の個人データをデータベースで管理し、データを元に分析して、プレーにおける戦略の提案までトータルサポートをしています。試合中のパフォーマンスを手軽に計測するものに、adidasのmiCoach スピードセルといったものもあり、日本でも安価で購入が可能です。

――どのようにして、選手データを戦略に結びつけるのでしょうか?

馬渕:まず選手の体力測定のデータをベースに、その選手が相対的にどのレベルにあるのかを導き出します。たとえば、レギュラーの選手とサブの選手では、身体能力においてどの程度差があるのか。もしかしたら、身体能力ではサブの選手の方が優っているかもしれません。そこで技術面の指導や戦略の理解度を深めれば、より良い選手になることができます。選手自身も、データをもとに、『この部分を伸ばせば、レギュラーになれるかもしれない』と感じれば、トレーニングに対するモチベーションも上がります。

――日本の育成年代において、データはどの程度活用されているのでしょうか?

馬渕:日本サッカー協会は早くからデータの重要性を理解していて、JFAアカデミーでは選手の体力測定、身体測定を実施して成長や発育を把握しています。我々は優れた選手の過去のデータを分析して、いわゆる『足の速い選手』は、どの種目の数値が良いのかといった因果関係を分析しています。例を挙げると、サッカーで足が速いと言われる選手は、10m走のスコアと関係があります。サッカーの試合中、50mを走る場面は稀です。多くが5~10mのスプリントなので、そこにフォーカスしてトレーニングをすることによって、スピード面での向上が期待できるわけです。

育成年代であれば、ポジションごとに必要な能力を備えた選手を見出すために、体力測定を行うことも有効だと思います。そこで根拠となるデータがあると、選手と指導者のコミュニケーションツールとしても使うことができます。データというと構えがちですが、選手と戦術のマッチング、プレースタイルとの適性など使い方は様々です。ほかにも、Jrユース年代とユース年代が連携して、選手データをベースにケガの記録なども申し送りできれば良いと考えています。

■データはあくまで数字。それをどう現場に落とし込むか

――データを採って終わりではなく、数字を元に分析して提案するというのは興味深い試みですね。

馬渕:データはあくまで数字であり、それを分析して、指導の現場に落としこむことが重要だと考えています。たとえばキック力がある、強いシュートが打てるというのは、サッカー選手にとって重要な要素です。これはジャンプ系の種目、垂直跳びをすることでわかります。『下肢が強い』イコール、キック力がある、倒れないという特徴があるんですね。下肢の強さはジャンプ力と関係があり、真上に飛ぶためには、背筋や手の使い方もポイントになります。サッカーは足でボールを扱うスポーツなので、片足立ちでバランスをとりますよね。それらのプレーの土台となるのが下肢です。

――監督・コーチに対してデータを分析する際、具体的にどのようなアプローチをするのでしょうか?

馬渕:サッカーの場合、監督個々にやりたいサッカーは違います。そのため、同じFWというポジションでも、選手に求められる役割、能力は違います。たとえばJリーグで、一言でFWといっても、佐藤寿人選手のようなシャドーストライカータイプから、前線で体を張る豊田陽平選手のようなタイプまで様々です。当社は独自のデータ分析をもとに、フィールドプレイヤーのタイプを12に分類しました。

FWであれば、ポストプレイヤー/オールラウンドアタッカー/ヘディングシューター/シューター。MFはオフェンシブ/ディフェンシブ/サイド/セントラル/ウイング。DFはセンターバック/サイドバック/ビルドアップ。このように、タイプ別に分類することで、選手補強の際に「このタイプの選手が必要」という提言もできますし、選手を適材適所で起用できているかという目安にもなります。ポジションの役割が見出だせると、監督から要求された役割が遂行されているかがわかります。

――欧州では、データをどのように活用しているのでしょうか?

馬渕:海外にはITに精通したエンジニアやアナリスト(分析者)がいます。彼らは競技結果を分析するだけでなく、トレーニングの成果を判断したり、試合でなぜそのような現象が起きたのかなど、根拠を探るためにデータを活用しています。(後編に続く)

サッカークリニック2014年5月号より転載/一部加筆・修正)


後編>>


<プロフィール>
馬渕浩幸(まぶち・ひろゆき)。CLIMB Factory代表取締役。ドイツのマーケティング会社勤務、企業のマーケティング・マネジメントマネージャーなど歴任した後、2009年7月、スポーツに特化したビッグデータの収集、分析行う専門会社としてCLIMB Factory㈱を設立。日本サッカー協会などの競技団体やチームに、一般企業のデータ活用事例を利用したITソリューション事業を展開している。

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