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「アギーレは、日本サッカーに足りないものを補える監督」~サッカーサービス社が分析するブラジルW杯

スペイン・バルセロナを拠点にヨーロッパやアジア、アメリカなど、世界中でチームの指導、選手のコンサルティングを行うサッカーサービス。カルレス・プジョルや日本代表選手など、多くのトップレベルの選手の指導・コンサルティングを手がけた経験のある、テクニカルディレクターのダヴィッド・エルナンデス氏に、ブラジルワールドカップについて分析してもらった。後編では「ドイツのコンビネーションサッカー」「アギーレジャパンの可能性」などについての見解をお届けする。(取材・文 鈴木智之)

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■ドイツの優勝は、サッカーの未来を考えると良いこと

私自身、W杯でドイツ代表が優勝したことは良いことだと思っています。今大会のドイツは、選手同士が連動した『コンビネーションサッカー』で勝ち上がったチームでした。過去の優勝チームと比較しても、ここまでコンビネーションがうまくできていたチームはなかったと思います。今大会はドイツ以外にも、多くのチームがコンビネーションサッカーに挑戦していましたが、うまくいかないチームがほとんどでした。その中で、ドイツ代表は『目指すべきスタイルで優勝する』という、サッカーの内容と結果を両立したチームと言えるでしょう。ドイツの優勝は、サッカーの未来にとっても良かったと思います。ブラジルW杯を見た世界中の人たちが、ドイツ代表のようにプレーしたいと思うはずです。私自身、連動したサッカー、コンビネーションサッカーが、サッカーをする上で一番良い方法だと思います。

前回の南アフリカW杯ではスペイン代表が優勝し、今回のブラジルW杯ではドイツ代表が優勝しました。最近の2大会において、コンビネーションサッカー、連動したプレーを志向したチームが優勝したのです。前回のスペイン代表、そして今回のドイツ代表。両チームに共通する人物がいます。元FCバルセロナ監督で、現在はバイエルン・ミュンヘンの監督を務めるグアルディオラです。南アフリカW杯における、スペイン代表のコンビネーションサッカーのベースとなったのが、当時FCバルセロナの監督だったグアルディオラだったという話は、前回しました。同様に、ブラジルW杯のドイツ代表は、ミュラー、クロース、ラーム、シュバインシュタイガー、ゲッツェ、ノイアーなど、バイエルン・ミュンヘンの選手がチームの中核を担っています。ドイツが完成させたコンビネーションサッカーにおいて、グアルディオラの影響は間違いなくあると言えるでしょう。

■ブラジルW杯で気になった選手

私が見た中で、ブラジルW杯で目についた選手が3人います。ドイツ代表のラームとクロース。そしてアルゼンチン代表のイグアインです。まずラームですが、彼は非常に状況判断に優れた選手です。相手チームの選手がどこにいて、どこにスペースができているか、またはできそうかなどの情報をすばやく収集し、味方のサポートを通じて、選手同士がプレーしやすいポジションをとり、ボールをつなげることに長けています。相手の守備ライン間のスペースを見つけることもうまく、ラインの中でギャップを探してボールを受けるので、相手チームからすると対応しずらい選手です。ポジショニングやサポートのプレーに秀でていて、非常に高いインテリジェンスを持つ選手と言えるでしょう。

クロースは『周りと連動してプレーする』という、サッカーにおいて非常に重要なコンセプトを高いレベルで実行することのできる選手です。彼はピッチのどこにいても、最適なプレーを選択することができます。たとえば、左から来たボールを逆サイドへ運ぶ。後ろから来たボールを前につなげる。短いパスを受けて、ロングパスを逆サイドに展開するなど、ピッチのどこにいても、周りの選手がどう動いていても、パスの中継役としてつなぐことができる選手です。クロースとラームは、バイエルンでグアルディオラ監督のもとでプレーしているので、サッカーに対する理解力が深まってきている印象を受けました。

イグアインは、彼が持っている能力、ピッチ上で見せるプレーのクオリティは非常に高いものがあります。特徴的なのが、チームのためにプレーする犠牲心です。主役になる力を持っているにも関わらず、エゴを封じ込めてチームのためにプレーをします。相手のマークを外す動きがバツグンに上手く、すべての動きに狙いがあります。漠然と感覚でプレーする部分は少なく、意図的に動いているのです。彼はスペースがどこにあって、次の瞬間にどこにスペースができるかを予測して動くことができます。そのため、自分が味方からパスを受けるだけでなく、味方へパスを通すために、おとりになって動いて、パスの通る道を作ります。アルゼンチンにはメッシがいるので、人々は彼にあまり注目しませんが、世界のトップ3に入るFWだと思います。

■アギーレ日本代表監督がもたらすもの

日本代表の新監督にアギーレが就任しました。彼は日本代表にとって、すごく良い監督になり得ると思います。なぜかというと、日本のサッカーに足りないものを持っているからです。日本のサッカー、文化の特徴として、相手を尊敬すること、順番を守ること、相手との間合いを守ることなどがあります。それらは、ことサッカーにおいては、プラスに働かないことがあります。サッカーは相手と競争しなければいけません。ときには、激しくいくことも必要です。アギーレ監督は、日本サッカーに足りない、強さ、激しさ、戦う気持ちを植え付けることのできる、非常に優れた監督です。過去に彼が率いたチームを見ても、常に勝負をし続け、勝利に向けて強い気持ちで向かうアグレッシブなチームを作っています。その部分では、世界でも有数の監督でしょう。

戦術的には、攻守にオーガナイズされた、組織的なサッカーを標榜します。代表監督に求められるのは、選手が持っている能力を『試合で勝つ』という目的に向けてまとめあげ、チームを構築していくこと。そして、結果を出すことです。それは育成年代の監督像とは違います。育成年代の監督はサッカーをする上で必要な、様々なコンセプトを教え、身につけさせることのできる人物である必要があります。しかし、代表に選ばれる選手というのは、それらをすでに身につけている選手であるべきです。アギーレは選手に戦う気持ちを植え付け、個性をまとめあげることに優れた指導者です。日本代表に足りないものを植え付ける意味でも、非常に良い監督であると言えるでしょう。


ダヴィッド・エルナンデス
サッカーサービス社 テクニカルディレクター/Vic大学 フットボール方法論 教授/カタルーニャサッカー協会 副テクニカルディレクター。サッカーサービス社において、テクニカルディレクターとして、クラブやプロ選手のコンサルティングを担当。Vic大学「フットボール方法論」教授やトゥルブラ指導者スクールのコーディネーターなどを兼任する。また、2013年より日本サッカー協会プロジェクトコンサルティングディレクターに就任。

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