TOP > コラム > サッカーサービスが提唱する「賢い選手を育てるための"エコノメソッド"」(後編)

サッカーサービスが提唱する「賢い選手を育てるための"エコノメソッド"」(後編)

今回も7日の前編に続いて、欧米、アジア各国で選手の指導、コンサルティングを行うサッカーサービスの独自トレーニングメソッド、「エコノメソッド」をご紹介します。この練習法は日本でも学ぶことができ、U-12のスクールも展開しています。(取材・文/鈴木智之)

<<前編
DSCF9422.JPG

賢い選手を育てるための「エコノメソッド」は、技術やフィジカルだけでなく、状況判断やプレーの決断といった"インテリジェンス"を高めることのできる練習法である。では、エコノメソッドにおいて、どのようにトレーニングメニューを組み立てるのか。フェランコーチによると、次のような流れで構築するという。

「まずはテーマを設定し、それぞれのレベルに合わせてどのようにプラクティスを行うかを決めます。そして何人で練習を行うのか、そのために必要なグラウンドの大きさはどの程度かを考えます。基本的に私たちはボール、味方、敵の3つがそろったトレーニングを行います。この3つがないと、実際の試合の状況や競争からはかけ離れたものになってしまうからです」

試合の状況に即した実践的なトレーニング。それこそが、サッカーサービスが実行するメニューである。技術、フィジカル、戦術を同時に高めるとともに、プレーに必要なことを繰り返し行うので、理解力も深まっていく。

「エコノメソッドでは、3つのトレーニングを重視しています。ボールポゼッション、オレアーダ(一方方向への攻撃)、試合形式です。ボールポゼッションの目的はボールを保持し、相手に取られないこと。オレアーダは実際の試合と同じように、攻撃方向を設定したトレーニングのことです。試合もただやるのではなく、コンセプトに沿ったルールを設けて行います。試合形式ではコンセプトをどれだけ実行できているかを確認し、できていないときは修正をします」

トレーニングの際に重要なのが、人数設定とスペースの広さだ。コンセプトとして設定した現象が起きやすい人数とグラウンドサイズを確保する必要がある。

「私たちが練習を行う場合、1グループ3人以上の人数設定で行います。3人いれば、ピッチの"幅と深さ"を考えることができるからです。幅と深さはサッカーをする上で重要なコンセプトなのです。2人だと幅しか設けることができないので、両方をとるには、最低でも3人が必要になります。グラウンドのつくり方も重要です。コンセプトによって、その大きさも変わります」

フェランコーチは「広さを設定する際には、実際の試合の状況に近いスペースを目安にする」と言う。

「コンセプトに応じて、縦を長くしたり短くしたり、横を広げたり縮めるなどして、身に付けるべきコンセプトが出やすい大きさを設定します。例えば、ドリブル突破のトレーニングをする場合。相手を抜き、進むためのスペースが必要です。狭いグラウンド設定で行うと、選手同士の距離が近くなり、スペースもなくなります。ドリブル練習には適さないので、その場合は相手からボールを守る(キープする)練習をした方がよいでしょう」

さらに、フェランコーチは具体的な例を挙げる。「例えば12歳の選手に対して、攻撃の方向を変える、逆サイドにボールを送るというコンセプトを身に付けるためのトレーニングをするとしましょう。このコンセプトを身に付けるためには、オレアーダ(一方方向への攻撃)が適しています。そこで、攻撃方向が決まっていないボールポゼッションのトレーニングをすると、攻めるべき方向がないので、逆サイドにボールを運ぶことについて、それほど意識的にはなりません。なぜなら方向を変える必要がないからです」

重要なのは、何人で、どれぐらいの広さで、どのようなルールを設定すれば、そのコンセプトを実行する状況が生まれるかを考えることにある。それこそが、指導者の手腕の見せ所と言えるだろう。

「選手のプレーを見ながら、コンセプトが出やすいようにルールを随時変更していきます。『逆サイドへボールを運ぶ』というコンセプトを身に付けるトレーニングをする際、守備側の選手が攻撃側の選手に対して強く寄せに行くと、攻撃側は簡単にボールを蹴り出してしまうでしょう。それではコンセプトに即した現象が起きないので、「守備側はボールを奪いに行くプレスはかけない。パスコースを塞ぐ動きのみを行う」などのルールを設ければ、攻撃側はボールをつなぐ意識を強く持つようになります」

身に付けるべきコンセプトが出やすい状況をつくり、習得段階に応じてルールを変え、実際の試合に近づけていく。段階を経てトレーニングできるので、選手がトライしやすい。

「練習をする際にはゴール数や、このプレーができたら1ポイントなどを決め、競争する雰囲気をつくり出します。例えばゴールをする前に何かしらルールを設けて、それがクリアできていなければゴールが入っても認めないといったケースなどです。そこではトレーニングの狙いであるコンセプトが出現しやすいようなルールを設定します。ルール設定により、プレー中にどんな問題があり、どう解決しなければいけないかを考える状況を作るのです。ルールを加えることで現象が出やすくなり、選手に考えるヒントを与えることになります」

フェランコーチは、常に選手が考える状況をつくり、実践に近い状態で練習をすることの大切さを説いていた。賢い選手になるためには、よく考え、理解する力が必要だ。考えてプレーするためのポイントが、認知や状況判断など、プレーの実行以外の部分である。そのために、メニューやオーガナイズを工夫し、適切なコーチングをしてプレーを修正し、向上させていく。それをジュニア年代から繰り返していくことによって、年齢とともに理解が深まり、状況判断の優れた選手へと成長していく。

賢い選手を育てるためのエコノメソッドは、「技術はあるが戦術面では向上の余地がある」と言われることの多い日本の選手たちにとって、極めて効果的なトレーニングメソッドと言えるだろう。

サッカーサービススクールHP


【PR】サッカーサービスのエコノメソッドを解説した指導者向け教材
FCバルセロナのカンテラや、世界各国において多くの指導者を育ててきた世界的プロ育成集団「サッカーサービス社」。彼らが提唱する6歳~12歳までの頭の成長に応じた指導計画や、選手のインテリジェンスを高める32の練習メニューを紹介。「知のサッカー[第1巻]」 好評発売中!

dvd.jpg