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AFC U-19選手権・人物フィーチャー② MF井手口陽介

無尽蔵にピッチを走り回り、正確な舵取りでチームを支える。グループステージで3得点と大車輪の働きを見せたエース南野拓実も、その選手の存在なしでは活躍も困難だったかもしれない。ボランチ・井手口陽介。U-19代表に不可欠な選手へと成長しつつある。(取材・文・写真/安藤隆人)

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グループステージ2勝1敗で決勝トーナメント進出を決めたU-19日本代表。難しい試合が続く中でボランチの井手口陽介は存在感を十分に示し、グループステージ突破に大きく貢献した。

持ち味は機をとらえた攻撃参加。G大阪ジュニアユース時代から『怪物』と呼ばれ、高い技術と抜群の攻撃センスを備え、中盤の王様として君臨していた。G大阪ユースに入ってからは"我"を前面に出したプレースタイルに、献身さが身についたことでボランチとして大きくスケールアップした。

初戦の中国戦は先発出場の川辺駿と松本昌也のボランチコンビの動きが重く、スペースをケアできないことで中盤が間延びしてしまい、攻撃の流れが停滞してしまった。FW南野拓実にボールを集めるが、サポートもなく、孤立してしまう悪循環に陥っていた。

鈴木政一監督は、後半からに川辺に代えて井手口を投入。すると、「前半は(南野)拓実君頼みになっていた。前に当ててからの2列目の押し上げ、2列目からの飛び出しを増やせばもっと拓実君を生かせると思っていたので、ピッチに立ったときそれを心掛けた」と井手口が振り返ったように、ボランチの位置から積極的にバイタルエリアに顔を出し、前線を活性化。結果的に試合は負けたが、プレー内容は日本にとって大きな収穫となった。

中国戦での活躍が買われ、第2戦ベトナム戦では先発出場。「FWやサイドハーフに当てたときに、ボランチが押し上げないとチャンスは生まれない」(井手口)。中盤でハードワークをしながら、周囲とうまく絡んだ。日本が指向するパスサッカーでは、選手同士の距離感が重要となってくる。特に、起点となる選手の周囲に誰もいないと、連動性を持った攻撃ができずに個人技に走ってしまうことにもなる。このチームで起点となる選手は南野であり、彼が絶対的な存在であるがために、その傾向は顕著となる。井手口が南野をサポートすることで、同選手への相手に注意を軽減。南野は起点となって攻撃にリズムを生み、自身も幾度となく決定機をつくった。

59分の先制点も井手口が起点となった。中盤で早いプレスを見せボールを奪取すると、ドリブルではなく、前線の南野へのくさびのパスを選択した。南野には届かなかったが、こぼれ球を拾ったMF奥川雅也がドリブル突破からそのままゴールを決めたことで、井手口の選択が得点に結実する形となった。

相手陣形を切り崩すためのスペースづくりを誰が、どのタイミングでおこなうのか。パサーがするのか、レシーバーがするのか。その判断を間違えると、攻撃は形をなさない。その点からすると、井手口の判断は正解だった。同選手のプレーは、ボランチの重要性をあらためて教えてくれることとなった。

先制点に絡み、試合終了間際には自身のゴールでベトナムに引導を渡した井手口。第3戦韓国戦では先発出場を果たし、難敵からの勝利に貢献。その真価をしっかりと証明した。