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本田圭佑を覚醒させたACミラン、インザーギ監督の手腕

14日のホンジュラス戦で、日本代表MF本田圭佑はチーム2点目を決めて攻撃に勢いをもたらした。所属するACミランでも今季は好調を維持し、シーズン開幕前に取り沙汰されていた不要論を一蹴。名門クラブの『10番』はどのように復活を遂げたのか。新任のインザーギ監督の起用法を分析する。(文/神尾光臣 photo by Kate_Lokteva Amil Delic

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■『僕自身は変わっていない。努力しただけ』

見事な変貌ぶりである。今年1月、昨季途中でのミラン加入当初はなかなかフィットできなかった本田圭佑が、今季は突然の大ブレイク。夏の移籍市場では戦力外となるのではという噂さえ流された男が、第11節を終了して得点ランキング4位タイとなる6ゴールを記録している。

これだけの大きな変化を遂げれば、当然イタリア人記者もその理由について尋ねるわけにはいかない。それについて彼は、こう答えていた。「僕自身は何も変わったつもりはない。ただ前のシーズンよりいい成績をあげようと努力しただけ」。実際それは、今季に合わせて体をきっちりとつくり直してきたことからも明らかだ。ブラジルW杯後にしっかり休養を取って疲労を抜き、プレシーズンのトレーニングに早期から合流。実際ピッチでは、見違えるほどに走れるようになっていた。

ただ注意すべきは、そのランニング自体も整理され、格段に洗練されたということだ。昨季は自身のポジションをうまく見つけられず、ピッチを彷徨う場面が多く見られた。ところが今季はスペースへのメリハリのある飛び出しができるようになり、エリア内でパスを付けてもらえるようになっている。これはやはり、指導者の手腕によるものが大きい。今季から監督に就任したピッポ(フィリッポ・インザーギ監督の愛称)は、左利きの本田を右ウイングとして活用したのである。
 

■「走る」より「得点」を意識させる


ミランの基本システムは4-3-3。これは、下部組織の監督を務めていた時代からピッポが好んで用いていたものだ。センターフォワードには動いてスペースメイキングを要求。そうして捻出した前線のスペースに、ウイングやインサイドMFを走りこませてチャンスを創出する。

彼はトップチーム監督の就任にあたっても、同様の構想を抱いていた。バロテッリを放出したのち、新エースとして期待を掛けるエル・シャラウィの突破力と得点力を最大限に生かすには、3トップの左がふさわしいと考えたからだ。しかし、問題は右FWの人材。チームには縦へのドリブル突破を武器とするニアングがいたが、ゴール前へと絞っていくポジショニングに関しては今ひとつだった。

そこでピッポが白羽の矢を立てたのが、本来トップ下であるレフティーの本田だったというわけだ。身体的なスピードを生かすタイプではない彼にウイングを任せることには懐疑的な見方もあったが、この指揮官の着眼点は違った。「右に配置し、このサイドとは逆足となる左でゴールを意識させれば、多大な貢献を果たしてくれるはずだ」と考えた。

ホームポジションは右のアウトサイド。しかし積極的に中へ絞り、さながらトップ下の時のようにボールを触ってパスを散らすことを許容する。ポイントはここからだ。右や左へボールを展開し、ボールを放した後で、外から中へとダイアゴナルに走る形でスペースへと走りこませる。利き足である左足はゴールへと正対し、シュートが狙いやすくなるという算段である。
 
果たしてこれは、指揮官の構想どおりに機能した。"ニセ9番"として中盤に下がってボールを触るメネズも、本職のCFであるフェルナンド・トーレスも、ともにスペースメークはうまい。そうしてできたスペースにポジションを取らせることで、本田は序盤戦で得点の量産に成功した。得意のプレースキックによる得点はわずかに1つ、あとはすべて流れからの得点である。もっともシュートのパターンは左足のみならず右足、またヘッドとバラエティに富んではいるが、すべて同じ戦術上の動きに沿って奪ったものである。

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■フリーエリアでプレッシャーを軽減

また右FWとしての起用は、本田のプレーディスタンス確保にも貢献するという相乗効果ももたらした。昨季、セードルフ監督のもと4-2-3-1の右MFで起用されていたときには、中盤でボールキープをしようとすると敵からのプレスの餌食となっていた。しかし今は、FWとしてスペースへ流れるよう動きが整理されているため、より空いたスペースへと顔を出しやすくなる。その結果、エリア内ではフリーに近い形でボールが受けられるようになったのである。 このポジションをこなすには、フィジカルも相当なものが要求される。対面のSBにプレスをかけたり、また味方のカバーリングに回ったりなど、守備面でのタスクも大きいからだ。本田はこれを精力的にこなしながらチャンスには全力疾走し、それでいてフィニッシュワークでは足元の精度をしっかりと保って結果を出してきた。彼がトレーニングを積み、監督の要求に応えられる体力づくりを図ってきたことは自明であり、その姿勢を評価したからこそピッポは定位置を与えたのかもしれない。

指揮官の柔軟な発想と失地挽回に掛けた選手本人の努力が相まって、本田は覚醒に成功した。守備的なセリエAでは相手も緻密な戦術対策を取ってくるので、ゴールラッシュの継続も簡単にはいかなくなるだろう。それを凌駕し、点に絡み続けるために、本田とミランが技術面や戦術面でどうクオリティアップを図ってくるのか。今後も注目である。

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