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高校サッカー名門校・市船の分析力 前編

伝統を守ることは決して容易ではなく、伝統に新たなる風を吹き込むのも、これもまた困難である。市立船橋高校は、朝岡隆蔵監督の指導の下でこの2つに挑戦し、成長を遂げている高校サッカーの名門校。今回の選手権出場こそならなかったが、『相手を知るために、自分を知る』という朝岡監督の教えを旨に、さらなる高みを目指す。(取材・文・写真/安藤隆人)

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■大事なのは『バランス』

市立船橋高校。昭和62年度にインターハイ優勝を果たして以来、インターハイ優勝8回、選手権優勝5回と、常に全国のトップに顔を出している高校サッカー界の名門中の名門である。今から4年前に同校OBである朝岡隆蔵監督が就任すると、就任初年度で選手権を制し、昨年はインターハイ優勝、今年は高円宮杯プレミアリーグイーストに初参戦し、残留を決めるなど、高い手腕を発揮し、しっかりと伝統を引き継いでいる。

市船の伝統は、堅守速攻。難攻不落な砦を築いて相手の攻撃を防ぎ、タレントを擁する前線の攻撃力を生かして訪れる決定機に確実に点を取るスタイルだった。朝岡監督は就任すると従来のカラーを踏襲しつつも、これまで持ち合わせていなかったものを取り入れ、市船を更なる高みへと導いている。朝岡監督のこだわりは、"常勝"。そこは他の強豪校の監督と一緒で、「市船はいつ何時も勝たなければいけない使命を担っている」(朝岡監督)と口にする。ただ、常に掲げる『必勝』の言葉以外にも、朝岡監督には確固とした勝利への流儀があった。対戦相手をしっかりと考察し、さまざまな角度から分析。相手の長所を解析することでその狙いを外したり、自分たちの得意とする展開にうまく持ち込んでいく。分析することで相手を丸裸にし、自分たちのプレー精度を高めることこそ、勝率を上げる一番合理的な方法であるという認識だ。市船のサッカーを確立しそれにこだわって戦うのではなく、あくまでも相手を考察するという『分析』をベースに、相手のストロングポイントを消しつつ自分たちの長所を出していく。

「僕が一番重視しているのはバランスです。例えば、次に対戦するチームを分析するとき、全体の配置や役割、コンセプトを見ます。個人の特徴は勝手に情報で入ってきますし、試合を見ていれば分かってくるもの。どのようなバランスのチームか、どのようなコンセプトで戦おうとしているのかをまず見ます。あとは自分たちとの力関係を図りながら、ウチとやるとこのチームはどのくらいのレベルで彼らのコンセプトを出してくるかなどを考えながら分析します」。

グランド脇にあるプレハブの椅子に座ると、相手を分析するときの視点について朝岡監督はこう答え、そしてまた続け出した。

「自分が分析したことを単純に選手に伝えて、『次の試合はこうしよう』とトレーニングをするのは違うと思います。もちろんそういう要素は入れますが、大事なのは選手自身がどう考えているか。ウチの幹の作り方として、まず選手ミーティングから始めて、選手がどのように感じて、どのようにまとめてくるのかというところから見ます。それを受けて、選手たちの観点を確認してから、自分の分析と比較し、上手く行かないところの微調整をするようにします。選手たちがそのように考えるのは分かる。でも、どうやってもうちのコンセプトからすると、この良さがなくなってしまうから、この部分についてはこのやり方でやろうというような話をするようにしています」。

■自己分析を徹底させる

大事なのは、まずは選手たちの考えを尊重すること。決してこうしろ、ああしろと一方的にやるのではなく、選手自身に分析をさせる。ちょうどこの日、グランドでは2日後に控えた、プレミアリーグイースト最終戦のコンサドーレ札幌U-18戦に向けての紅白戦を中心にしたトレーニングを行っていた。取材日(12月5日・金)の3日前の火曜日に選手たちがミーティングを行い、水曜日にそれに基づいて、チームミーティングを行った。その上でのトレーニングということもあって、目的がはっきりとした、締まった雰囲気の中で行われていた。

札幌U-18は前線にパワーのある選手がいて、攻守の切り替えが速いチーム。それに対し、ビルドアップを素早くして、相手にカウンターをさせない守備と、相手を上回る攻守の切り替えで、一気に攻め込んでいく戦い方を意識させながらも、どこを狙えば崩れるか、守備がはまるかなどを、朝岡監督が要所でアドバイスをしながら白熱した紅白戦が続いた。
「自分たちの力との比較の中で、自分たちがこのチームと組んだときに、どのような展開になるかを想像出来ないといけません。その想像力がないと、練習の意味合いが変わってくるんです」(朝岡監督)。

『比較』をするということは、自分たちの力やサッカーを認識していないと出来ない。朝岡監督はこの認識こそ重要だと強調する。己を知らずして、『比較』は出来ない。言い換えれば、自己分析が出来ない人間が、相手を分析することは出来ないし、それを実行することも出来ない。

「ウチでは自己理解と自己分析に関しては、徹底してやらせています。なぜこういう結果になったのか、なぜこういうミスをしたのか、なぜ今の状況になったのか。練習の中やサッカーノートを通じて、常にやり取りをしています。選手の中にはうまくプレーが出来ていた頃の上手い自分をいつまでも引きずっている選手もいます。まずは自分の現状を知ることから始めて、そこから相手を知る、ゲームを読むという作業をしていきます」。

では、今年のチームはどのようなアプローチでつくり上げていったのか。後編ではここにフォーカスを当てていきたい。

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