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野洲高校・山本監督の哲学 前編『特別なことはしない』 

滋賀県立野洲高校は、観る者を魅了するパスワーク&個人技で、高校サッカー界に一時代を築いた強豪校である。チームを率いる山本佳司監督は、選手それぞれの『個』を磨き上げ、『世界を目指せるサッカー』を志向する知将だ。全国屈指のテクニックを持つチームがどのように技術を身に付けていくのか。その練習の全貌に迫る。(取材・文・写真 内藤秀明)

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■野洲の根幹は3つのテーマで成り立つ

滋賀県立・野洲高校と言えば、テクニック重視のサッカーを志向している全国屈指の強豪校だ。2005年の高校サッカー選手権大会では、日本代表MF乾貴士を中心にトリッキーなドリブルや多彩なパスワークを駆使し、全国の頂点にまで上り詰めた。その美しさから『セクシーフットボール』という異名まで付くほどだった。

そもそも野洲は、そのようなサッカーをなぜ目指しているのだろうか。チームコンセプトについて山本佳司監督はこう語る。

「野洲高校が目指しているテーマは3つあります。一つ目は『世界を目指せるサッカーをする』こと。ただ単に世界で活躍するだけではなく、日本のサッカーで頑張っていきたい。フィジカルベースでサッカーをすると、足の速さだとアフリカの選手には勝てないし、高さだとヨーロッパの選手に勝てない。なら、日本人は技術や判断の速さを生かして、次々に数的有利な状況をつくって崩すようなサッカーをするしかない。だから、我々は二つ目のテーマで、『クリエイティブなサッカーをしよう』というのを掲げています。三つ目は、そのクリエイティブなサッカーをするためにも『魅力のある選手』になることを目指しています。魅力というのは個々の長所のこと。なので、一人ひとりの魅力を磨いて、『この部分では絶対に負けへん』という長所をつくる指導を心掛けています。これらが三つの柱です」。

では、世界を目指してクリエイティブなサッカーをする。そして、魅力的な選手を育成する上で、野洲高校はどのような練習をしているのだろうか。

テクニックに定評のあるチームだけに、ドリル練習の比率が高い練習メニューを実施していると想像する人も少なくはないだろう。例えば、マーカーをおいてドリブルなど、同じ動作を繰り返す練習。ゲーム性はないため状況判断などの向上は見込めないが、タッチ数を増やすことで技術をあげる目的で行われる。このような練習に、野洲ならではのメソットが加わる。筆者も取材前はそのように考えていたが、そのイメージが間違いであると、練習を取材して知ることとなった。

筆者が取材した2日間の練習を具体的に紹介しよう。

・12月9日
13時:練習開始
13時~13時半:ドリブル、対面パス
13時半~14時15分:ミニゲーム(テーマはクロス)
14時15分~15時:ハーフコートでのゲーム

・12月10日
13時:練習開始
13時~13時半:ドリブル、対面パス
13時半~14時15分:ミニゲーム(テーマは狭いスペースでのプレー)
14時15分~15時:ハーフコートでのゲーム

最初の30分こそドリル練習に近いものがあったが、それ以外はすべてゲーム形式の練習。練習時間の大半をゲームに費やす。それが野洲流だった。

最初の30分の練習も、ただのドリブル練習ではない。タッチラインからタッチラインまで、思い思いのやり方でボールに触り、感覚を確かめるアップ程度のもの。それを考えると野洲が行ったドリル練習は、10分程度の対面パスだけだったと言える。

「特別なことはしなくていいんです。ゲームに少し工夫を加えるだけでいい。例えば、オフザボールの動きを早くするのが目的なら、ポゼッションやゲームにタッチ数の制限を加える。基本ワンタッチにして、どうしても無理なときだけツータッチでもいいという条件にする。そうすると、ボールを受けたらすぐにパスを出さなければいけず、周りのサポートも必要となってくる。そういう動きが足りないときに、『こいつはワンタッチしかできへんねんから、周りはどうすればいい?』って声を掛ければいい。いわゆる、方向付けですね」

テーマに合わせて方向付けしつつも、ゲーム形式のトレーニングで総合的にスキルを磨く。これが野洲のやり方。とは言え、このやり方には難しい部分もある。例えば、ワンタッチ限定でゲームを行うとオフザボールの動きや、ダイレクトパスのスキルは向上する。しかし、この練習ではドリブルができないため、偏りが生じる可能性も出てくる。

「確かにやり過ぎるとアンバランスが生まれる。だから最後に必ず普通のゲームを入れるようにはしています。あとは『指導者のさじ加減』というかセンスが問われる部分ですけど、一つのテーマで練習していてよくなったところで、テーマを変えてバランスを取るようにしています。例えば、サイド攻撃を一週間やります。サイド攻撃が完成してきたらこれにフィニッシュの練習も絡めます。ただ、サイドばっかりやっていると、中央のスルーパスが減ってくる。なら次は中央のスルーパスを練習。最終的にはサイドと中央を組み合わせて点を取るイメージの練習みたいな感じでうまく発展させながらバランスを取ろうとしていますね」

では、そんな野洲が新チームをスタートさせるとき、監督やコーチはどこにポイントを置いて指導していくのか。後編はここにフォーカスを当てていきたい。

後編>>

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山本佳司
1963年生まれ、滋賀県出身。85年からのドイツ留学で本場のサッカーと出会い、帰国後の88年から、滋賀県立水口東高校サッカー部監督として指導者の道を歩み始める。97年に県立野洲高校サッカー部監督に就任すると、クリエイティブなサッカーをチームに浸透させ、2002年度の第81回全国高校サッカー選手権大会で8強入り。05年度の第84回大会では、同校を滋賀県勢初の優勝へと導いた。

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