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第93回全国高校サッカー選手権大会 展望・後編

12月30日、第93回全国高校サッカー選手権大会がいよいよ開幕する。2020年の東京五輪開催に向けて改修工事に入った国立競技場に代わり、今年から開会式と開幕戦を駒沢陸上競技場で、準決勝と決勝を埼玉スタジアムで行うこととなった。全国各地の予選を勝ち抜いてきた48代表校の中から頂点に立つのは、果たしてどのチームか。トーナメントを、前回大会覇者・富山第一を倒して富山県代表となった水橋から、前回4強入りを果たした京都橘がいるまでのブロックをAブロック。前回準優勝の星稜から三重県代表・宇治山田商までがいるブロックをBブロックとして、それぞれ前編と後編に分けて展望していく。(文・写真/安藤隆人)

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<<前編

Bブロック

■ 本命の東福岡を、静岡学園らが追う

このブロックの優勝候補は東福岡、星稜(石川)、鹿児島城西、青森山田、履正社(大阪)、静岡学園か。Aゾーンに強豪が多く集まった印象だが、このブロックにはインターハイチャンピオンの東福岡がいる。

今年の東福岡は攻守にタレントをそろえている。守備はインターハイで大ブレイクしたU-18日本代表GK脇野敦至、高さと強さを誇るCB加奈川凌矢、広範囲を巧みにカバーし、長短のパスで攻撃をコントロールするアンカー近藤大貴、トップ下で大黒柱の中島賢星、今大会ナンバーワンのフィジカルを誇るFW木藤舜介が並ぶセンターラインは強固そのもの。さらに『赤い彗星』と呼ばれるチームの生命線となるのが、両ウィングだ。右には『ヒガシのクリスティアーノ・ロナウド』の異名を持つ、高速ドリブラー増山朝陽、左には正確なキックと抜群の決定力を誇る赤木翼がいる。その後方にもスピードが武器の右サイドバックの堀吏規伸、高性能かつパワフルな左足のキックを持つ左サイドバックの末永巧が構えており、絶え間ない両サイドアタックを繰り出す。

東福岡は、中島(横浜FM)と増山(神戸)がそれぞれJクラブに入団が内定したことでこの2選手に注目が集まるところだが、既述のとおりそれぞれのポジションにハイレベルなタレントを配置しており、どこを見ても穴がない。今年の山梨インターハイでは、この攻撃陣がその実力を十二分に発揮し、赤木と増山がゴールとアシストを量産。3回戦では地元の山梨学院大附属を相手に、中島が鮮やかなワントラップボレーを決めると、GK脇野が相手のPKをストップするなど1‐0の完封勝利。大津との決勝では末永がハーフウェイライン付近から超ロングシュートを決めるなど、延長戦の末に大津を4‐1で下し、優勝を遂げた。

「インターハイは過去のこと。今は選手権でタイトルが獲れるように取り組んでいる」と中島が語ったように、もうインターハイの余韻に浸ることなく次のタイトルを視野に入れている。昨年は8強で敗れているだけに、選手たちは悔しさをバネにその力を磨いている。

夏の王者が順当に勝ち進めば、3回戦で当たることが予想されるのが静岡学園だ。4年ぶりの選手権出場を果たした同校は、1、2年生が台頭し、新たな風を吹かせようとしている。左サイドからキレのあるドリブルを仕掛けるMF旗手怜央、展開力のある西山大輝と荒井大の両ボランチ、そして抜群の安定感を誇る1年生GK山ノ井拓己。彼らの成長がチーム力を大きく底上げした。プレミアリーグ昇格を懸けた参入戦で、履正社に3‐4の打ち合いの末に敗れた悔しさを選手権にぶつけるべく、大会に臨んでくる。

■注目はプリンスリーグ関西王者の履正社

同じBブロックで、東福岡と静岡学園がいないもう一つのブロックは、初戦から好カードが目白押しだ。星稜―鹿児島城西、米子北(鳥取)―昌平(埼玉)、長崎総合科学大附属―中京大中京(愛知)、履正社―北海道大谷室蘭。どれも実力伯仲で、熱戦が予想される。

昨年度準優勝の星稜は、CB鈴木大誠、右サイドバックの原田亘、平田健人と前川優太のダブルボランチ、FW森山泰希と、準優勝メンバーが屋台骨を形成。ここにU-16日本代表のドリブラー阿部雅志、安定感抜群の守護神・坂口璃久の2年生や、パワーのあるFW大田賢生らが加わり、ポゼッションもカウンターも高いレベルでこなせるチームに仕上がった。対する鹿児島城西は大会屈指のGK下野和哉、Jクラブのオファーを蹴り明治大に進学するCB上夷克典、ボランチの大塚健太郎を中心とした堅守を誇り、攻めては磐田に入団が内定している岩元颯オリビエと、スピードが持ち味の江﨑晃大のツートップが高い精度で攻撃のフィニッシャーを務める。星稜と鹿児島城西のカードは、今大会屈指の好カードと言えるだろう。

初出場の昌平は1トップの野村祐一朗、トップ下の和田幹大のホットラインが軸。プリンスリーグ関東参入戦では、攻撃と守備がかみ合い、選手権に出場する第一学院(茨城)、栃木SCユースを無失点で下し、来季からの昇格を決めて、波に乗っている。米子北はプレミアリーグ参入戦で新潟ユースを下すなど(決定戦で大分ユースに1‐3の敗戦)、伝統の堅守速攻は健在。前線からのプレスを得意とする昌平と、堅守速攻の米子北。白熱の攻防が期待される。1年時からエースとして君臨するFW安藤翼、プロ注目の2年生GK松村優太郎を擁する長崎総合科学大附属と、MF富田光ら中盤にタレントをそろえる中京大中京の一戦も興味深い。

プリンスリーグ関西王者の履正社と、プリンスリーグ北海道王者・北海道大谷室蘭の試合も注目の一戦だ。特に履正社の仕上がりの良さは特筆すべきものだ。昨年の初出場8強入りしたときのメンバーの大半が現在もプレーしており、一段とレベルアップしている。前線をかく乱するストライカー瀧本高志、プレーメーカーのMF牧野寛太、川畑隼人と田中駿汰の180センチオーバーのツーシャドー、右のアタッカー林大地は、いずれもプロ注目の2年生。プレミアリーグ参入戦では、静岡学園を4‐3で下すと、決定戦では前橋育英を相手に鮮やかな崩しで2点先行し、後半は守備陣が奮闘して2‐0の勝利。来季のプレミアリーグ昇格を決めた。「選手たちが高い連動性を持ってプレーしている」と平野直樹監督も及第点を出すほどの仕上がり具合。初戦で難敵・北海道大谷室蘭に勝利することができれば、一気に駆け上がっていく力は十分に持っている。

この履正社が順当に駒を進めると、3回戦で対戦が予想されるのが青森山田だ。こちらも優勝する力を持っている。1年生GK廣末陸、188センチの長身CB菊池流帆、アンカーの岸本悠生、トップ下の山下優人、前線の松木駿之介と強固なセンターラインを誇り、決定力ある丹代藍人、テクニックのある野口雄輝が両サイドから破壊力ある攻撃を展開する。今年こそ3回戦の壁を破り、頂点を極めるべく邁進している。