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GKコーチ山野陽嗣氏・講義 その2「遠くに大きく」

ホンジュラスの年代別代表GKコーチを始め、育成年代からトップレベルまで指導経験を持つ山野陽嗣氏。コーチユナイテッドアカデミーでは、山野氏のトレーニングメソッドを公開中です。これはGKを始めたばかりの子どもから、トップレベルの選手まで実践可能なトレーニングで、ウォーミングアップから応用までGKのプレーに必要な要素が詰まっています。ここでは山野氏のトレーニングを通じて『GKとしてうまくなるためのポイント』を紹介します。(取材・文/鈴木智之)

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<<前回記事:GKコーチ山野陽嗣氏・講義 その1「悪い癖をつけない」

山野氏のトレーニングはウォーミングアップ(前回記事を参照)の後、セービングの練習に移行した。「まずは立った状態でセービングの練習をします。横にコーンを置くことで、前方に倒れることを意識させます」(山野氏)。GKの左右1m程の位置にコーンを置き、GKはコーンの中間地点に立つ。なぜコーンを置くのか? 山野氏が狙いを説明する。「GKが前方に倒れることを意識させるため、左右にコーンを置きます。GKが後方に倒れると、弾いたボールがゴールに入ってしまう可能性が高くなります。シュートのコースに対して最短距離で反応するよう、前に倒れる習慣をつけるために行います」

山野氏はコーンをめがけて、左右にキックを蹴り分けていく。球種はグラウンダーが中心だ。最初の練習のため、GKに対する負荷が少ないものから始めていく。GKには、キャッチをするときにボールをこぼさないよう、胸の中でしっかり抱えることを意識させる。GKがボールをこぼすと、失点する可能性が非常に高くなるからだ。

「キャッチのときは手の位置がポイントで、上からボールに対してかぶせるのはNGです。なぜなら、速いボールが来ると追いつかないからです。基本の形としては、片方の手でボールのコースに入り、もう片方の手で上から抑えることを心がけます」

グラウンダーのボールの次は、浮き球キャッチ。山野コーチが手でGKの顔付近にボールを投げ、GKがキャッチする。次にGKがボールを投げ返し、山野コーチが左右に低めのボールを投げる。それをGKはローリングダウンでキャッチする。何度か繰り返したところでコーンを倒し、GKはコーンをジャンプして越えて、ボールをセービングする。コーンを倒すことで、ジャンプしてサイドのボールに反応する動きをトレーニングすることが狙いだ。

「ポイントはボールに反応してジャンプしたとき、空中で身体を伸ばすこと。そうすることで、遠くのボールに手が届くようになります。コーチはジャンプの飛距離を見極めて、届くか届かないか、ギリギリのところに投げるのも良いでしょう。そうすることで、ジャンプの飛距離を伸ばすトレーニングにもなります」(山野氏)

GKトレーニングはボールの高さ、速さなどによって、鍛える部分が変わってくる。近距離でショートバウンドのボールを左右の離れたところに投げると、GKがキャッチすることは難しい。

「試合中、届かなそうなボールを無理にキャッチしようとすると、こぼしてしまい、相手選手に詰められる可能性があります。そのために弾く(ディフレクト)プレーがあるのですが、このときは『遠くに、大きく』を意識します。浮き球のセービングと同じように、身体と腕を伸ばして、指の先まで伸ばすようにすると遠くまで届きます」(山野氏)

続いて「シュートキャッチ&セービング」練習は、より実戦に近い形式で行っていく。まずゴールの中心線上にコーンを置き、ゴールポストとヒモで結び、三角形を作る。GKの立つ位置はゴールの中心だ。

「ただし、GKがゴールラインに近いところに立つと、シュートコースが空いてしまい、ゴールポストギリギリのコースにボールが飛んできた場合、届かない可能性があります。かといって、ゴールラインから離れた場所に立つと、頭上を浮き球で越されてしまう危険性があるので、前後左右、どのコースにも届きやすい位置に立つことを意識させます」

GKの立つ位置が、ボールとゴールを結んだ中心線上から外れると、キッカーに対してシュートコースを与えることになる。ポジショニングひとつで、GKとキッカーの優位性が変わるので、常に意識しておきたいポイントだ。

「もし、シュートをキャッチできないと判断したら、大きく弾くことを心がけましょう。キャッチに行って捕れず、ボールをこぼしてしまうのが一番危険です。もし、ボールをこぼした場合は、素早くセカンドボールに反応するところまでを行い、習慣付けをすること。そのためにも、GKコーチはどれかひとつの球種だけでなく、浮き球、ゴロ、バウンド、前後左右、まんべんなく蹴るようにしましょう」

「シュートキャッチ&セービング」の応用編が、実際にFWを立たせて行うトレーニングだ。FWを左右45度の位置に立たせ、こぼれ球に反応させる。GKがボールをこぼすとFWが詰めに来るので、こぼさないようにキャッチする技術と、弾く場合は「遠くに大きく」弾くプレーを意識させる。

山野氏の基礎を身につけるための練習はここまで。応用編ではプレーが連続する状況を作り、反応スピードを高めるメニューを紹介します。お楽しみに!

GKコーチ山野陽嗣氏・講義 その3「基礎がないと悪影響もある」>>

山野陽嗣(やまの・ようじ)
1979年12月14日生まれ。広島県出身。立正大卒業後、Palm Beach Pumas(米国)、 CD Lenca(ホンジュラス)でプレー。コーチとしては、立正大学、 アルビレックス新潟シンガポール(シンガポール) ※GKコーチ兼選手 、 アルビレックス新潟ユース、Real Sociedad(ホンジュラス)、Parrillas One(ホンジュラス)、Real Sociedad 、U-20ホンジュラス代表GKコーチ ※U-15ホンジュラス代表GKコーチ兼任。