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GKコーチ山野陽嗣氏・講義 その4「目的は成長させること」

ホンジュラスの年代別代表GKコーチを始め、育成年代からトップレベルまで指導経験を持つ山野陽嗣氏。コーチユナイテッドアカデミーでは、山野氏のトレーニングメソッドを公開中です。これはGKを始めたばかりの子どもから、トップレベルの選手まで実践可能なトレーニングで、ウォーミングアップから応用までGKのプレーに必要な要素が詰まっています。最終回は応用編の中でも、負荷の高いトレーニングメニューを紹介します。(取材・文 鈴木智之)

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■ GK練習の目的は、成長させること

トレーニングのポイントは「いかに試合に近い状況で行うか」です。応用編では、特にこの部分を意識します。山野コーチが説明します。「応用編では、連続したセービングとハイボールの処理を中心に行います。練習の設定も、プレーが連続して行われる状況をつくります」

最初は『連続セーブ』です。GKがゴールの中央に立ち、ゴールエリアのやや外、ゴールポストの延長線上にコーチが2名、向い合って立ちます。コーチがお互いに手でボールを投げてパス交換をしながら、タイミングを見てゴールに向かって投げます。GKはコーチ間でボールが移動している間、ゴールに向かって投げられても、すぐに反応できるようにポジションの移動と構えをし続けます。

「コーチがボールを投げるときは、GKが止められるか、止められないか、ギリギリのコースを狙ってください。ボールを蹴るときも同じです。GK練習の目的はゴールを決めることではなく、GKを成長させることです。そのため、コーチはGKの能力を見極めて『もう少し手を伸ばせば止められる』『もう少し反応スピードを上げれば止められる』といったコースにタイミングを見ながら蹴る、あるいは投げてください」

『連続セーブ』のトレーニングでは、GKはコーチが投げたボールをセービングし、すぐに起き上がってポジションに入ります。これは、左右から飛んでくるクロスに反応するためです。ペナルティエリアのやや外から、キッカーがゴール前にクロスボールを蹴り、GKはキャッチ、あるいは弾きます。ここでも弾くときは『遠くへ、大きく』を意識します。キャッチし損ねてボールをこぼすと、コーチがFW役になり詰められてしまうからです。

「クロスボールに対応する時、GKは必ず『キーパー!』とキーパーコールをしましょう。そして、キーパーコールをして出たら、必ずボールに触ること。これが鉄則です。ゴールキーパーがゴールから離れてミスをすると、失点を生む確率が高くなってしまいます。そうならないためにも、とにかくボールに触ること。ハイボールを弾くときは、ゴールに対して45度の角度よりも外側へ弾きましょう。できれば、ペナルティエリアの外にボールを飛ばすことを心がけてください。そうすると、セカンドボールを詰められにくくなり、次のプレーに対応する時間も生まれます。ペナルティエリア内に弾くと、セカンドボールを拾われ、シュートを打たれる場合があります。もしパンチングが出来なかったら、指で触ってボールの軌道を変えましょう」

■ 基礎が何よりも大事

続いては、『ゴールに入るボールを追いかける』トレーニングです。GKはペナルティスポットに足を肩幅に広げて立ちます。GKコーチはその前に立ち、GKの足の間(股抜きの要領)をグラウンダーのキックで通します。GKは股の間をボールが通ったら、素早く反転してゴールに入らないように防ぎます。

山野コーチがこの練習の意図を説明します。

「試合中、まれにGKが頭上や足元を抜かれ、ゴールに戻りながらセービングすることがあります。それを想定しています。ここでは右手と左手を均等に使うことを心がけてください。そして、ボールがゴールに入りそうでも、あきらめずに手を伸ばして滑ること。これを繰り返すことで、反応できる範囲が広がります」

最初はGKの足の間を、ボールを蹴って通すだけでしたが、ステップ2はそれに頭上からボールを投げるプレーが加わります。GKは足元と頭上、どちらからボールが来るかわからない状態で反応しないといけないので、一瞬足りとも気を抜くことができません。

これで、応用編のメニューは終了。応用というだけあって、ルール設定や方法については、様々な工夫が考えられます。山野コーチは言います。「それぞれのコーチが自分でアレンジして、試合を想定しながら練習に取り組んで頂ければと思います。繰り返しになりますが、大切なのは応用編に入る前に、基礎がきちんとできていることです。基礎を身につけるのは根気のいる作業ですが、大人になってから身につけると時間がかかります。それに、長年ついた悪い習慣を改善している最中は、試合のパフォーマンスも落ちます。そうならないためにも、ジュニア年代から正しい基礎の習得をさせてあげてほしいと思います」

これで山野コーチのGKトレーニング紹介は終了。詳しく動画でトレーニングを見たい、ポイントを知りたいと思う方は、ぜひアカデミーのページを御覧ください。記事にしていない練習もありますので、新たな発見、気付きがあるはずです。


山野陽嗣(やまの・ようじ)
1979年12月14日生まれ。広島県出身。立正大卒業後、Palm Beach Pumas(米国)、 CD Lenca(ホンジュラス)でプレー。コーチとしては、立正大学、 アルビレックス新潟シンガポール(シンガポール) ※GKコーチ兼選手 、 アルビレックス新潟ユース、Real Sociedad(ホンジュラス)、Parrillas One(ホンジュラス)、Real Sociedad 、U-20ホンジュラス代表GKコーチ ※U-15ホンジュラス代表GKコーチ兼任。