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細貝萌のボランチ論・前編『最初はトップ下だった』

2014年のFIFAワールドカップ・ブラジル大会、日本代表はグループステージ1分け2敗という成績で大会を去ることとなった。浮き彫りとなった課題はいくつかあるが、その中の一つに『ボール奪取力』の欠如が挙げられる。ここでは日本屈指のボール奪取力を誇り、ドイツ・ブンデスリーガで奮闘する細貝萌選手をフィーチャーする。(取材・文/一色伸裕 写真/Ryota Harada)

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■ 線の細い選手がボランチへ

ドイツ、ヘルタ・ベルリンの細貝萌は、世界最高峰と呼ばれるブンデスリーガで活躍する日本人選手の一人である。相手の攻撃の芽を摘むその能力は天性のもので、ピンチを未然に防いでは、自らのタクトで素早く攻撃へと切り替える。日本が世界へ誇る技巧派のボランチだ。

ボール奪取力が高く評価されている細貝だが、ボランチとしてプレーし始めたのは高校生になってからだと言う。

「U-15日本代表に選ばれていたときなどは、どちらかと言えば前目、トップ下でさばくタイプでした。以前は攻撃的なプレー、得点につながるようなプレーが好きでした」。

28歳となったいまでも177センチ、68キロと決して大柄な選手ではない。当時の細貝も線は細く、プレーするときは相手との接触を極力避けていた。そのようなプレーを見ていた前橋育英高校の山田耕介監督は、彼の隠れた才能に着目。「ボールを奪う能力はピカイチだった」(山田監督)。派手な攻撃のプレーのなかで時折見せていたその守備能力を高く評価し、ボランチへとコンバートした。

このことは細貝の記憶にも鮮明に残っているようで、当時を振り返りこう語る。「相手と接触するのを嫌がっていたら、ある日、山田監督に呼ばれ、『お前は何を考えているんだ。お前のプレーの特徴はそういうところではない。危機察知能力のところや、守備の部分、セカンドボールを拾えるところにストロングポイントがある』と言われたんです。そのときは悲しかったですよ。中3まではそういうプレーをしてU-15日本代表にも呼ばれていたわけだし、そういうプレーに自信も持っていた。そこを『お前のプレーはそうではない』と言われたんですから、さすがに悲しかったですね」。

■ 広い視野が、その才能を見出す

注目を集める攻撃的な選手から一転して、汗かき役、縁の下の力持ち的な役割の選手へ。いまでこそ日本を代表するボランチとなったが、コンバート当初は同ポジションに戸惑っていた。

「(ボランチの)やりがいという点では、すぐにはそれを見出せず、その面白さが分かりませんでした。ですが、求められるプレーも変わってきたことで、そこからは段々と自分のプレースタイルも変わってきたと思います。ボールを奪ったり、味方が攻撃をしているのを後ろから見ながら支えるのは楽しいと感じられるようになりました。それは今でも感じているし、時間が経つにつれますます楽しくなってきています」

例えば細貝のように、高校入学当時からすでに輝きを見せていた選手でも、違った角度から見て、さらにそれを磨くことでより一層輝くことがある。何の特徴もないように見えても、違った視点から見てあげることでその選手の持ち味を見出し、眠っていた才能を引き出せることもある。偏見ではなく広い視野を持つことが、指導者にも求められている。その点では前橋育英の山田監督は先見の明があり、広い視野を持っている監督と言えるのかもしれない。

「選手たちの良いプレーを見逃さないように、日々の練習では気を配っている。それはうまいプレーとかそういうものではなく、『こういうタイプだ』と考えていた選手が、ふとしたときに意外性のあるプレーをし、『こんなプレーもできるのか』と、彼らが見せるちょっとしたプレー。選手の変化を見逃さないことが大事。それを見出してあげたら、あとはそれを意識して出せるようにアプローチしてあげることが重要なんです」(山田監督)

細貝の大先輩にあたる元日本代表の山口素弘(横浜FC前監督)も同様のコンバートでボランチとして大成した選手だった。細貝、山口をはじめ、同じく元日本代表の松田直樹(故人・松本山雅)、青木剛(鹿島)、青山直晃(ムアントン・ユナイテッド=タイ)、青木拓矢、小島秀仁(ともに浦和)と守備に定評のある選手たちを多く輩出し、先に行われた高校選手権ではU-18日本代表の鈴木徳真を擁し、大会準優勝。これだけ優秀な選手を数多く送り出し、結果を残している学校は稀だ。「ボランチで活躍する選手が多い学校なのは確かですね。これといって特別な環境があるわけでもなく、特別な練習をしていたわけではないです。ただ、高校にいるときに『先輩を見ろ』と言われてきました。『(山口)素弘はこうだった』。松田さん、青木(剛)さんの名前を挙げ、『あいつらはこういうプレーをする』とか。それで学んだところは大きいですね」(細貝)。

山田監督の選手の特性を見極める力に加え、トップレベルの選手のプレーを見せて常日頃からいいプレーを意識づけさせる。これが、現在の細貝の活躍につながったと言っても過言ではないのかもしれない。後編では、細貝自身が『ボールを奪うコツ』を明かす。

後編『距離感が大事』>>

細貝萌(ほそがい・はじめ)
1986年6月10日群馬県生まれ。前橋育英高卒業後の05年に浦和へ加入。11年1月にドイツ・ブンデスリーガのレバークーゼンへ完全移籍。その後、アウクスブルクへの期限付き移籍を経て、13年に現在のヘルタ・ベルリンへと移籍する。U-15、16、17、18、21、22と各年代の代表としてプレー。日本代表では、国際Aマッチ18試合出場1得点。

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