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元フットサル日本代表・小宮山友祐氏「サッカーにつながるフットサルテクニック」(守備編/応用編)

今回も前回に引き続き、元フットサル日本代表で、2012年にタイで開催されたフットサルW杯にキャプテンとして出場した小宮山友祐氏を講師に招き、サッカーにつながるフットサルのディフェンストレーニングメニューを紹介してもらいます。前回の基礎編では、1対1+パサーの状況で、ボールを前に進ませないトレーニング、そして2対2+パサーの状況でボールウォッチャーにならずにマンマークを徹底するためのトレーニングを行いました。応用編となる今回は、2つのゴールを使ったより実践的なトレーニングメニューで、数的不利の状況での守り方を学びます。(取材・文/河合拓)

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■まずは「相手の攻撃を遅らせること」

実際の試合で数的不利になった場合、どう守るべきでしょうか。小宮山コーチは、最初のポイントに「相手の攻撃を遅らせること」を挙げました。ボールをゴールへと近づけようとする相手の攻撃を遅らせて、味方が戻る時間をつくることができれば、数的不利の状況は解消されることになります。

では、相手の攻撃を遅らせるというのはどういうことでしょうか。フットサルもサッカーも、目的はゴールを奪うことです。速い攻撃というのは、ゴールに一直線に向かっていく攻撃のことです。つまり、相手のボールを前に運ばせないことが、攻撃を遅らせることにつながります。

今回の練習は、攻めが2人、守りが1人の状況からスタートします。攻め側が自陣の深い位置で味方のGKからボールを受けて、プレーを開始します。相手をゴールに近づかせないためには、ボールを持っている選手の前に立ちはだかり、前に進ませないことが必要です。しかし、相手にはもう1人、ボールを受けられる選手がいます。そのため、もしボールを持っている選手に近寄り過ぎてしまえば、そこにパスを1本通されて、決定機をつくられてしまいます。そのため、数的不利の状況ではボールを持っている選手をトップスピードに乗せないことを意識しつつ、フリーになっている選手のパスコースを消さなければいけません。

しかし、このままゴール前までズルズルと下がり続けてしまえば、簡単にシュートを打たれてしまいます。では、守備の選手はどこでボールにチャレンジすればいいのでしょうか。小宮山コーチは、「下がって行ったら、味方がいるじゃないですか」と言います。そう、GKのことです。「GKと連携することで、2対1ではなく2対2の状況をつくりましょう」と、小宮山コーチは提案します。後方に味方がいる、要するにカバーに入ってくれる選手がいる状況をつくるのです。そして、自分がボールに寄せたときにパスを出されても、カバーに入っている味方選手が相手より早くボールに届くタイミングが、後退を止めるタイミングになります。

この感覚は、一人ひとり異なって来ますし、カバーに入るGKの出足の速さなどによっても変わってくるでしょう。しかし、フットサルでもサッカーでも、まったく同じシチュエーションは2度とつくれません。いろいろな状況を体験しておき、どうすれば守備が成功しやすいかという自分の感触を、選手一人ひとりがつかむことこそが大事なのです。

■守備は"切り替え"から始まっている

1対2の状況から、守備側がボールをクリアしたり、攻撃側がシュートを打ったりしてプレーが切れたら、今度は攻守が入れ替わります。これまで守備側だった選手のゴール横から2人が出て来て、守備をしていた選手とともに3人で攻めます。それまで攻めていた2人が、今度は2人で守る3対2のトレーニングになります。小宮山コーチは、切り替えの意識を植え付ける重要性を説きます。

「攻撃が終わったあと、すぐに守備をするという意識を持たないといけません。コートの狭いフットサルはもちろんですが、近代サッカーでも切り替えの早さは非常に重要ですよね。バルセロナの選手やバイエルンのリベリー、ロッベンも、ボールを失ったらものすごい勢いでボールを取り返しに行きますよね? フットサルでは、最前線で守備をサボったら、すぐに大ピンチになります。そういう意味では、よりリアルに切り替えの重要性を感じ取れると思うんです」

ベースとなる考え方は、先ほどの2対1の状況とは変わりません。しかし、今度はボールを持っている選手に2つのパスコースがあります。その際には、どういう対応をすれば守りやすくなるのでしょうか。小宮山コーチは、「これが絶対という正解はありえないんです」と言いますが、ベターな選択ができるためのヒントを動画の中で投げかけています。そして、選手が上達するために大切なのは、ただプレーするのではなくて、意図を持ってプレーすること、目的を持ってプレーすることだと繰り返します。

「選手たちには、どうすれば点を取れるか、どうすればゴールを守れるか、常に考えながら、いろいろな発想を持ってプレーさせてあげてください。選手たちが、考えて、考えて、失敗と成功を繰り返しながら、『オレはこれが正解だ』と思うプレーを見つけることが上達につながると思います」と、自身の哲学も話してくれました。

小宮山友祐(こみやま・ゆうすけ)
1979年12月22日生まれ。神奈川県出身。小学校1年からサッカーを始める。高校3年時にフットサルと出会い、2000年にFC FUNへ入団。その後、FIRE FOXへ移籍し、全日本選手権優勝に貢献する。大学卒業後の4年間、高校で教員を務めるが、フットサルに専念するため退職。2007年、Fリーグ開幕の年に現所属チーム・バルドラール浦安へ移籍。日本代表歴9年、AFCフットサル選手権2度優勝(2006、2012)、フットサルW杯3大会連続出場(2004、2008、2012)。2012フットサルW杯タイランドでは日本代表のキャプテンを務め、日本フットサル史上初のベスト16に貢献した。近年は慶応義塾大学SFCや明海大学で非常勤講師として教壇にも立つ。