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「ポゼッション」から「プログレシオン」へ/坪井健太郎氏 戦術指導講習会レポート

昨年末、スペインのバルセロナにあるUEコルネジャで育成コーチを務める坪井健太郎氏が神奈川県内屈指の強豪街クラブ、東急SレイエスFCのジュニアユースを対象に戦術指導を行ないました。ワンセッション90分の中で坪井氏がテーマとしたのが「プログレシオン」です。スペイン語で「前進」を意味するテーマに今回取り組んだ理由は、ボゼッション志向が標準化された日本の育成年代において、「ボールは持っているものの、ボールを持つこと、ボールを失わないことが目的となってしまい、ボールが前進しない」サッカーや試合展開がまだ散見されるからです。本稿ではこの"次なる課題"を解決するためのアプローチのひとつをご紹介します。(取材・文/小澤一郎)

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■なぜポゼッションが難しくなっているのか

指導開始前に選手を集めてまず坪井氏が話したことは、「大きなテーマは『ボールをゴールに近づけること』、そのために重要なのは少ないタッチ数でプレーすること、3人目が出てくるようなコンビネーションを確立すること」でした。その補足として今春にスペイン遠征を予定しているU-14の選手たちには「スペインなど欧州では育成年代から守備や戦術をしっかりトレーニングしているので、ボールは持たせてくれてもなかなかゴールに近づけない現象が起こるでしょう。そうなったときにどのように上手く相手をはがしていくのかを今日ここで練習しましょう」という話を付け加えながら、具体的なイメージとモチベーションを与えていました。

最初の練習メニューに入る前にも選手を集めた坪井氏は「相手の守備組織の3ラインを突破していくことが攻撃における『前進』という概念です」という定義付けを行いました。また、戦術指導の見学者(主に指導者)に対しては「スペインサッカーにおける攻撃の考え方では3つのプロセスがあります。1つ目はボールを持って攻撃を始めること。2つ目が本日のテーマである前進。3つ目がフィニッシュです」と今回のテーマの位置付けを確認した上で、「近年のサッカーではポゼッションのサッカーが難しくなっていると言われ、縦に速いサッカーが台頭しています。ではなぜそれが起こっていると思いますか? 大事なのは『縦に速い』というトレンドを知ることではありません。現象として起きていることには必ず原因がありますから、我々指導者が考えるべきは縦に速いサッカーが必要とされている原因を考えることです」と話しました。

「いろいろな要因はありますが、一番大きなものは守備戦術の進化で、それによりサッカーがよりコンパクトに、より時間が少なくなっています。また、サッカーもチームもより戦略的になっています。そうした現代サッカーの中で攻撃に求められていることが縦の速さであり、相手の守備組織、3ラインを突破するためのコンビネーションとそのバリエーションです。本日は前進のテーマで重要になる2人組の関係、壁パスから派生するコンビネーションプレー、それから3人目のプレーに注目して見て下さい。相手のプレッシングを受けたときに効果的である3人目の動きやプレーが出れば、本日の戦術指導は一定の成功を収めたと言えるでしょう」という説明の後、坪井氏が事前に用意した3つの練習メニューが実践されました。

■プログレシオン(前進)に最も効果的な動きとは

本稿では最初の練習メニューでの指導の様子のみをお伝えすることになりますが、フットサルコート1面を使って行なわれた最初のメニューはGKを付けた2対2でした。このメニューは、攻撃側がハーフラインを突破すれば守備側は付いていくことができないという条件の下で行なわれました。坪井氏の指導で印象的だったのが、メニュー開始直後にフリーズをかけ、2対2における突破のバリエーションを選手に伝えた点です。その中では対峙する守備者の背後を取る縦への動きの重要性を強調した上で、「縦に行く・行かないの動きもあるけれど、相手の位置をよく見て広がる、(ボールホルダーに)寄るという横の動きも使っていこう」と最初からライン突破のためのバリエーションを提示していました。

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2対2で攻撃側の2人が突破のためのバリエーションを理解した上でコンビネーションを作った後、坪井氏はすぐさまハーフラインにフリーマンを1人置いて、3対2の練習に移行しました。練習におけるコーチングや条件設定の移行のテンポが素早いため、自然と選手の頭にかかる負荷は高くなり、頭のインテンシティー(回転数)が求められるトレーニングとなっていました。3対2となったこのメニューでフリーマンが動けるのはハーフライン上だけでしたが、数的優位となったことで相手のプレスをはがしたライン突破がすぐさま現象として出始めました。

すると今度は、再度フリーズをかけた坪井氏からサポートの3つの種類(①継続のサポート、②ラインを超えるパスを受けるサポート、③3人目のサポート)についての説明がありました。その上で坪井氏から「今から特に意識して欲しいのが3人目のサポートの動きです。できればフリーマンがワンタッチで落とせる3人目の動きをして下さい」という具体的な指示が出ていました。

合計20分ほどのワンメニューで、早くも坪井氏はプログレシオン(前進)をする上で最も効果的な3人の壁パスによるライン突破のコンビネーションプレーを意識させることに成功し、中にはそのコンビネーションを素早くものにしてしまった選手もいました。日常からしっかりと戦術指導を受けている東急SレイエスFCの選手のベースが高かった点を差し引いても、練習開始からわずか30分、ワンメニューでその日狙った現象を引き出した坪井氏の指導力の高さも垣間見ることのできた戦術指導見学会でした。

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