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「『とりあえず基礎をやっとけ』は、一番良くない指導」/グラスルーツの視座

6月のCOACH UNITED ACADEMYは「グラスルーツの視座」と題し、指導現場からのボトムアップで企画したセミナーを公開中です。前半は指導者の学びの場である『Football Leaders』との共同企画―FC琉球ゼネラルマネージャー・國學院久我山高校サッカー部総監督の李済華(リ・ジェファ)氏による「選手の未来を見据えた育成哲学」。今回は、後編の内容からセミナー本編には収められなかった李氏のトレーニング論をご紹介します。(取材・文/鈴木智之)

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<<自分が見て、上手いと思った選手がいい選手

■「基礎練習」を正しく定義できているか

育成年代の指導者が集う『Football Leaders』との共同開催セミナー。1時間半超におよんだ後編の中で、李氏はトレーニングにおける基礎練習についてこう語りました。

「実は『基礎』が一番神経を使います。だけど、サッカーを知らないと基礎練習が一番簡単だと思ってしまう。部活の先生で、選手たちに『とりあえず基礎をやっとけ』という人がいるでしょう。それは、僕の考えでは一番良くない指導です」

なぜ、基礎練習に一番神経を使うのでしょうか? 李氏は前回でも触れた身体の使い方を踏まえて、持論を展開します。

「基礎練習をするときに大切なのが、正しいフォームでやること。正しいフォームで、反復練習をすることによって身体に覚えさせる。それが基礎練習なんです。身に付いたときに、初めて試合で使うことができます」

間違った身体の使い方を覚えると、悪い癖が身体に染みこんでしまい逆効果です。そして、一度身に付いた癖を取り去るのはひと苦労。年齢が上がれば上がるほど、長い時間をかけて培った身体の動かし方が習慣になっているからです。正しいキックフォームでボールの中心を捉えることができているか。軸足を置く位置、手の使い方は正しいか。それを指導者が注視しながら、正しい身体の動きを染みこませていく。この作業は実に繊細で「とりあえず基礎をやっておけ」と言ってできるものではありません。

「よく、対面パス100回などと言ってやらせる指導者がいますが、適切な回数を集中してやらないと身に付きません。私の感覚では、長くて10分が限界でしょう。選手たちはフォームを正すことに集中すべきで、繰り返し行なうことで正しい動きを身に付けていきます。"意識的に正しいフォームで反復練習をすることで、動きを無意識化すること"が基礎練習なのです」

また李氏は、世界のトップレベルの選手のプレーを見て、戦術面での解決策や「なぜこの選手はこのプレーができるのか?」といったことを研究しているそうです。その積み重ねによって、たくさんの引き出しを持つようになりました。

「昔、バレージ(注:元イタリア代表DF)のプレーを見て驚きました。なぜあんなにステップが速いのか。プレーを見ながら考えるわけです。そこで、ターンをする瞬間に軸足を抜いていることに気がつきました。宙に浮く形になるので、ブレーキが掛からないんですね。上体や肩が上下運動せず、胸を張り、背筋が伸びた状態でスーっと動いています。マラドーナやイニエスタもそうですね。だから、いまは選手たちに『軸足を外せ』と言っています。外さないと、ブレーキが掛かってスムーズな動きができないんです。これは小学生でも、言えばすぐにできますよ」

■子どもたちに本当に伝わる言葉とは

李氏のトレーニング論は続きます。サッカーのトレーニングには多くの方法論やメソッドが存在しますが、李氏は「私はメソッドというものに対して否定的なんです」と言います。

「なぜなら、サッカーは状況判断のスポーツだからです。状況にあった選択ができる選手が良い選手で、トレーニングでそのような状況を創りだすのに最適なのはゲーム形式です。だからゲームをする中で、選手たちに適切なアドバイスをします。その積み重ねが必要で、動かないマーカーやコーンを相手にドリブルの練習をしても、試合で使えるテクニックにはならない。私はそう思います」

トレーニングを重ねる中で、選手の長所を伸ばすだけでなく、欠点を正すことも大切です。李氏は「適切な褒め方があります。なんでも褒めていたら、選手は伸びなくなります。大人でも、簡単なことができたときに褒められたら、バカにされているのかなって思うでしょう?」と参加者に語りかけます。

「選手にとって、欠点を直すことはストレスです。そこで、指導者がどのタイミングで、なんと声をかけるか。私の経験上、あれもこれもとたくさん伝えようとしてもダメだと思いますね。自分が本当に思ったことしか、相手に伝わらないんです。言葉が多いのはダメ。言い過ぎないこと。適切な単語を与えると、子どもはそれをふくらませます。あれこれ言い過ぎると、子どもたちの"思考のふくらみ"を縮めることになってしまう」

李氏によると「複合的な言葉をひとつ言えば、3つぐらいが一気に解決することがある」そうです。どのタイミングでどのような言葉を使えば、選手の心に届くか。たとえば、居残りで練習をしているときに、うまく声をかければ選手たちのモチベーションも高まり、1日10分、20分の居残り練習を3ヶ月続ければ、かなりの時間になります。

「得意なことは、何も言わなくても上手くなるんですね。ドリブルが上手い子はゲームをやらせれば、勝手にうまくなる。メッシはドリブルを教わって上手くなったわけではないですよね。その選手に何が必要なのか、何が成長を妨げているのか。それを見極めて適切な手を施すのが指導者の役割です。キックの上手くない子が、トレーニングで克服できればパーフェクト。欠点が直れば長所もさらに花開く。これは間違いありません」

今回ご紹介した李氏のトレーニング論に共感するところがあれば、現在公開中の動画もぜひご覧になってみてください。きっと、指導に活かせる新たな発見や気づきがあるはずです。

サッカーが上手くなるのは、喜怒哀楽がはっきりした子>>

李済華(リ・ジェファ)
FC琉球ゼネラルマネージャー。國學院久我山高校サッカー部総監督。ジェファFC代表。 FIFAオリンピック委員会認定ナショナルコーチング課程修了。FA協会インターナショナルコーチング課程修了。ブラジル・サンパウロサッカー協会認定コーチング課程修了。國學院久我山高校の監督として、インターハイ準優勝、高校選手権でベスト8に進出するなど、時代の先端を行くスタイルで高校サッカー界にインパクトを残した。今季よりFC琉球ゼネラルマネージャーとして、プロ選手の指導にあたっている。

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