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「サッカーが上手くなるのは、喜怒哀楽がはっきりした子」/グラスルーツの視座

6月のCOACH UNITED ACADEMYは「グラスルーツの視座」と題し、指導現場からのボトムアップで企画したセミナーを公開中です。前半は指導者の学びの場である『Football Leaders』との共同企画―FC琉球ゼネラルマネージャー・國學院久我山高校サッカー部総監督の李済華(リ・ジェファ)氏による「選手の未来を見据えた育成哲学」。今回も引き続き、後編の内容からセミナー本編には収められなかった李氏の指導論をご紹介します。(取材・文/鈴木智之)

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■高校サッカーで李氏がやろうとしたこと

李氏は「指導者はどんなサッカーをしたいか。そのために必要なトレーニングは何か。そこに指導者のオリジナリティが出る」と語ります。李氏は國學院久我山高校の監督をしていたとき(現在は総監督)、「当時の最先端のサッカーを、東京の高校サッカーでいち早くやる」という指導者でした。ジダンやロナウド、フィーゴ、ベッカムを擁して『銀河系軍団』と呼ばれたレアル・マドリーが隆盛を誇っていた頃は、中盤をボックス型にした4-2-2-2システム。近年はFCバルセロナが採用する4-1-2-3のシステムで、マイボールを大切にする攻撃的なサッカーを展開し、高校サッカー界に新たな風を巻き起こしました。

「私は前線の選手に守備を求める指導者ではないんです。高校サッカーの中では異質かもしれません。攻撃の選手は7割から9割攻撃をして、残りの力で守備をしてくれればいい。いまはバルセロナの4-1-2-3をやっていますが、たとえば守備の場面でカウンターを受けてしまうことがあると、バルセロナの試合を見て『ブスケッツはこう動いているんだ』『両サイドバックはここにポジションをとるのか』と研究します。そして、次の試合で『こうやってみよう』と選手とコミュニケーションをとって共有化を図ります。選手と指導者がイメージを共有していないと、言葉が伝わらないですよね。時間をかけながら、共有化する作業をしていくんです」

李氏が久我山を率いていた頃、そのスタイルを『ポゼッションサッカー』という言葉で表現されていましたが、自身は「一度も選手たちにポゼッションサッカーをしようと言ったことはない」そうです。

「私が選手たちに言ったのは、状況に応じてサッカーをしなさいということ。いかに良いサッカーをして勝つか。ボールを保持していれば、相手に攻められずに勝つ確率が高くなるので、ボールを大事にしているだけなんですね」

ボールを大事にするサッカーをしようとすると、ボールを保持する意識が強すぎて、消極的なプレーが先行することもあります。それはときとして、手段と目的がすり替わることにもつながってしまいます。そのときに立ち返るのが、サッカーの原理原則です。

「ボールを取ったらゴールに向かう。それが戦術の基本です。いまのサッカーでは、自分で仕掛けて相手の裏をとれない選手は使えません。センターバックだけは例外ですが、サイドバックであっても、相手と駆け引きをして裏を狙うプレーは重要です。もちろん、ドリブルなどで突破を仕掛けると、相手に奪われることもあります。そこで指導者は我慢すること。そして、取られた選手は取り返す。それが仕掛ける選手の責任なんです」

■選手の「芸術性」を育てるトレーニングとは

ボールを奪われたら取り返す。当たり前のことですが、ときとしてその意識が希薄になることがあります。ジュニア年代でサッカーを習い事感覚でプレーしている選手には、その傾向が強いのではないでしょうか。李氏は小学生からプロまで、すべてのカテゴリーを指導した経験から、「サッカーが上手くなるのは、喜怒哀楽がはっきりした感情が豊かな子」と断言します。

「サッカーは感情のスポーツです。感情がエンジンとなり、行動に出ます。チャンスだと思ったら、チャンスの『チャ』ぐらいで動く選手。内面的な感情を自分でコントロールできて、そこに理性が適切に働く子。それでも、理性と感情のどちらかと言えば、感情のほうが大切だと思います。小学生のときは、感情のおもむくままにやらせる。指導者が『ここが危ないから、その位置にいろ』と指導をしていてはダメ。いち早く察知して反応できる子がバレージ(注:元イタリア代表DF)になれるんです」

もちろん、李氏は"放任"が良いと言っているのではありません。過去の記事でもお伝えしましたが、適切なタイミングで、適切な量の言葉をかけることで、選手の想像力を刺激します。

「私は放任主義ではないですし、教育は必要だと思っています。試合を見て、終わったあとに選手と会話をします。試合の中のイチ場面を抽出して、子どもが考えるきっかけになる言葉を発することができるか。そこも指導者が問われる部分ですよね。自然な流れの中で適切なアドバイス、小さな言葉でコミュニケーションをとり、子どもたちの想像力をふくらませるんです」

李氏の独自な視点から発する言葉は明快です。その背景には多くの経験、サッカーに対する情熱があるのは想像に難くありません。最後に、サッカーに対する李氏の価値観を紹介します。

「サッカーはあらゆるスポーツの中で、もっとも芸術的なスポーツだと思います。ゴールが入るまでの多様性は類を見ず、何通りものパターンがあります。つまり、ゴールへの過程が創造的にならざるを得ないんです。サッカーに必要なのは、アスリートとしての要素と、もうひとつが『芸術性』です。あらかじめ動きが決まったトレーニングでは、芸術家は育たないんですね。芸術家を育てるのはゲーム(試合)です。ゲームの中にこそ多様性、芸術性が含まれている。ですから、すべてのトレーニングはゲームに返ることが大切だと思っています」

全4回に渡ってお送りしてきた李氏のサッカー哲学。熱のこもった語りとともにその真髄に触れたいと思われた方は、ぜひセミナー本編をご覧になってみてください。見る指導者の視点によって、人それぞれのヒントが見つかることでしょう。

李済華(リ・ジェファ)
FC琉球ゼネラルマネージャー。國學院久我山高校サッカー部総監督。ジェファFC代表。 FIFAオリンピック委員会認定ナショナルコーチング課程修了。FA協会インターナショナルコーチング課程修了。ブラジル・サンパウロサッカー協会認定コーチング課程修了。國學院久我山高校の監督として、インターハイ準優勝、高校選手権でベスト8に進出するなど、時代の先端を行くスタイルで高校サッカー界にインパクトを残した。今季よりFC琉球ゼネラルマネージャーとして、プロ選手の指導にあたっている。

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