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【CUAビルドアップ】「怒り」のコントロールは一日にしてならず

6月のCOACH UNITED ACADEMY(以下、CUA)後半は、CUA会員との共同プロジェクト『CUAビルドアップ』から生まれたオリジナルセミナー「『怒り』をコントロールする」。作新学院大学准教授でプロスポーツメンタルコンサルタントの笠原彰氏と編集部によるアレンジで、指導現場につきまとう「怒り」の感情をコントロールする方法について提言している。今回はセミナー後編の内容から、実際のトレーニング方法を中心に紹介する。(取材・文/前田陽子)

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<<あなたは自分の「怒り」の正体をわかっていますか?

■「怒り」はトレーニングによって減らすもの

前回は、怒りのコントロールに必要な自己分析について学んだ。今回はその自己分析を踏まえた具体的な怒りのコントロール方法について、実技を交えて提言する。

最初に知っておきたいのが、怒りの感情に限らずメンタルトレーニングで重要になる4つのキーワード――「思考」「感情」「身体反応」「行動」だ。感情のコントロール法を身に付けるためには、このうち2つの側面をトレーニングするのが有効だという。

「みなさんはどの2つをトレーニングすると思いますか?と問いかけると、多くの人が『感情』や『身体反応』と答えます。ですが、正解は『思考』と『行動』の2つ。実はこの質問の正解率はわずか20~30%なんですが、というのも多くの方がメンタルトレーニングを受ける際、感情と身体反応を悩みと認識しているからです」

しかし、感情と身体反応をコントロールすることは非常に難しいこと。そこで、比較的コントロールしやすい思考と行動をトレーニングすることにより、おもてに表われる感情と身体反応を"急に"無くすのではなく、"徐々に"減らしていくことを目指すのだ。

この点を理解した上で思考と行動のトレーニングを続けると、感情と身体反応に変化が出てくる。実際に怒りの感情が抑えられるようになるからだ。自分自身の変化を実感するには、怒りの大きさに点数を付けるとわかりやすい。最初のうちは、たとえばトレーニング前の怒りが「85点」なら、トレーニング後に「80点」と5点減点できれば十分。20点も減点できたら上出来、という具合だ。このように怒りを点数化することで、怒りのコントロールがどのような影響を与えたのかを自分でも感覚的にわかるようになってくる。それが怒りを点数化することの効果だ。

■自分に合った行動のコントロール法を探す

実際のトレーニングで特に重要なのが行動のコントロールだ。試合や練習中に怒りの感情が出たら、まずは自分が「いま怒っている」という事実に気付くこと。自己分析を3ヵ月かけて習慣化すれば、いまその瞬間に自分が怒っていることを自覚できるようになる。そして怒りの感情が表われたら、そこで何かしらの行動を入れることで怒りを抑えるのが基本となる。その行動のひとつとして、一番シンプルなのが「深呼吸」だろう。

「深呼吸は簡単なようで、奥が深いテクニックです。なぜなら呼吸は、心理状態や感情の状態と非常に密接な関係にあるからです。たとえば怒っているとき、不安なとき、弱気のとき、人は同じような呼吸のパターンを取ります。呼吸は早く、浅く、テンポが不規則になる。逆にリラックスしたり集中していてポジティブな感情なときには、呼吸は深く、回数は少なめで、一定のテンポを刻みます」

それを踏まえて笠原氏は、「深呼吸とはリラックスした呼吸を少しオーバーにしたもの」と表現する。つまり怒りの感情が湧いているときは心拍数が上がっているので、心拍数を抑えてリラックスするために深呼吸をするのだ。ちなみに、深呼吸に限らずすべての呼吸には息を吸う作業と吐く作業があるが、息を吸っているときと吐いているときでは「吐いているとき」のほうが心拍数は下がる。子どもがふざけてやる深呼吸のように息を吸うほうを強調してしまうと、逆に心拍数を上げることになるので注意が必要だ。

あるいは「こぶしをグッと握る」という方法もある。こぶしをグッと握り、一瞬で力を抜く――このような行動のコントロール方法を『筋弛緩法』という。筋弛緩法の対象は手、肩、顔、お腹、背筋、足などさまざまあるが、今回のセミナーでは手、肩、顔の筋弛緩法を取り上げている。怒りや緊張といったネガティブな感情が出たときに、緊張が最も表れやすいのが顔、肩、手であり、行動のコントロールとしてその部分の緊張を取ることが最も望ましいからだ。

こぶしを握るとき、親指は中に入れて握ること。そしてグッと力を入れる。このとき100%の力を入れる必要はなく、60~70%の力で十分だ。力を入れ5秒程度キープしたら、一気に力を抜く。ゆっくり力を抜くとリラックス感が感じられないので、一気に抜くのがポイントだ。試合の最中で時間がなければ、5秒キープしなくても構わない。あなたが肩に力が入ってしまうタイプなら、肩を持ち上げてストンと落とす。このときも100%の力を入れると肩の筋肉を傷める可能性があるので60~70%の力で行なうこと。最後に顔の筋弛緩法は目がポイント。顔の中で特に緊張が出やすいのが目だからだ。目の筋肉が緊張すると視野が狭くなる可能性があり、指導者にとっても支障があるので、目の筋弛緩法は非常に有効だ。目を60~70%の力で閉じ、5秒キープし力を抜く。目を開けるという動きにも筋肉が働いてリラックスできなくなるので、力を抜くだけでパチッと開かないように気を付けたい。

この他にも行動のコントロール方法として、「歯を食いしばる」「くちびるを噛む」「怒っている自分を俯瞰して、頭の中で実況中継する」「自分で自分の身体をギュッとつねる」などが紹介されている。笠原氏は状況に応じて複数の方法を使い分けることを薦めているので、セミナー本編でそれぞれご確認のうえ取り入れていただきたい。

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笠原彰(かさはら・あきら)
1968年7月10日生まれ。東京都出身。作新学院大学准教授。日本体育大学大学院卒。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士。プロゴルフ、プロテニスなどのトップアスリートや、中学高校生チームの指導、講演会活動などを行なっている。現場指導は2500時間を超えており、実績豊富なスポーツメンタルコンサルタントとして知られる。Facebook「スポーツメンタルトレーニング」は1週間に3万PVを超える人気ページ。近著に『誰でもできる 最新スポーツメンタルトレーニング』がある。講演依頼などはこちらから。

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