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U-21欧州選手権から考察するこれからのコンセプト 前編

「トレーニングではコンセプトを持って取り組むことが大切」ということは皆さんご存知のことと思います。ではコンセプトとはどのように作り上げればいいでしょうか。どうすれば実際にピッチレベルで、変化を観察できるレベルまで持っていくことができるのでしょうか。今回は、6月にチェコで開催されたU-21欧州選手権取材で感じた、欧州における各国の取り組みから、日本サッカーに還元できるヒントを探ってみたいと思います。(取材・文・写真/中野吉之伴)

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■サッカー分析を育成に還元する「3つの視点」

今大会を振り返ってみて特徴的だったのは、各国が世界サッカーの潮流と自分たちのサッカーを独自の配合率で作り上げようとしている点です。この傾向自体はブラジルW杯でも見られたものでしたが、それがさらに進んできている印象を受けました。

2012~13年頃までは「これが目指すべきサッカーだ!」という形が先にあり、各国・各チームは同じような方向を向いてチーム作りに取り組んでいました。4バックを中心とするコンパクトな守備から、状況に応じたプレスを仕掛け、ボールを奪うと素早くゴールを目指す。相手が守備陣形を整えたときはしっかりと守備ラインからボールを繋いでいく。特にセンターバックからFWへのタイミングのいいグラウンダーの縦パスがひとつの特徴になっていました。

それがブラジルW杯ではこれを基本線としながら、自分たちの得意とするプレーを発揮するためのやり方を組み合わせてきたチームが増えていました。5バックによる堅守速攻でベスト8進出を果たしたコスタリカ、攻撃陣のクオリティを生かすための布陣をとったオランダやアルゼンチン、チームとしての連動力を最大限に引き出そうとしたチリやメキシコなど。従来通りのやり方だけだと、すでに対応策を見つけられているし、自分たちのプレーだけを追い求めてもどこかで脆さを露呈してしまう。基本となる戦い方を身に付けた上で、どのように自分たちの長所を出すのか、違いを生み出す選手を生かすのかが、世界各国が注力するポイントとなってきています。

そして、こうした分析を長期的な視点で育成に還元するためには、「選手としてのベース」「戦い方のスタンダード」「国際舞台におけるトレンド」を取り違えずに理解できているかが大事になってきます。「選手としてのベース」とは、サッカー選手として必要不可欠な「蹴る」「止める」「運ぶ」といった基本的なボールを扱う技術に加え、ボールを奪い合う上での相手選手との駆け引き、どのスペースや相手選手がより危険かという認知・判断力などが挙げられます。「戦い方のスタンダード」は、「ビルドアップ」「素早い攻守の切り替え」「ポゼッション」「カウンター」などといった、サッカーにおける基本的な戦術プランと解釈できます。そして「国際的なトレンド」は、短期的に見られるサッカーの傾向を表すとお考えください。

ピッチ上の事象がこのどれに当てはまるのか。たとえば「球際の激しさ」は「選手としてのベース」に当てはまるもので、流行り廃りがあってはいけない分野です。あるいは「縦に速いプレー」。これは本来スタンダートの範疇にあるもの。つまり「ポゼッション」や「ロングボール」といった戦い方のひとつであり、それがすべてを解決する最強の矛というわけではないということです。

■育成年代ではトレンドに振り回されすぎないこと

新監督がやってくると新しいキーワードが見出しを飾ります。具体的なイメージに結び付けるためにも、わかりやすいキーワードは非常に意味がある。最近では「縦に早いプレー」が注目を集めていると聞きます。ボールを奪ったあとのファーストコントロールで前に運ぶチャンスがあるならば、それを逃してはならないし、相手守備の狙いを揺さぶるために積極的に縦へと仕掛けることも非常に重要です。ただ、大切なのはいつ、どこで、どんな状況で、どのプレーを選択するかを知ること。自分たちが目指す傾向として「縦に早いプレー」に取り組むべきであり、「縦に早いプレー」が有効でないときまでそれをしなければならない、というわけではないのです。相手守備が深く守っているときにはまず揺さぶることが大事なはず。それならばいきなり縦パスを仕掛けるよりも、パスをつなぎながら相手守備がほころぶ状況を作リ出さなければなりません。

この辺りの傾向はU-21欧州選手権でも見られていました。足元の技術にも長けたセンターバックが起用されるのはすでに当たり前になっていますが、だからといって縦パスを狙ってくるのは相手チームもわかっています。不用意に狙うと一気に相手カウンターを食らうきっかけになってしまう。だからこそ、相手守備のバランスを崩すために、その狙いを外さなければならない。ときにはロングボールで起点を作り、ときには空いたスペースにボランチやセンターバックがボールを運んで相手守備をずらす。特に準優勝のポルトガルはこの辺りのバランスが非常に秀逸で、「選手としてのベース」「戦い方のスタンダード」「国際舞台におけるトレンド」をしっかりと把握した上で、自分たちの武器である技術を生かしたパスサッカーを披露していました。

こうした観点から見ても、特に育成年代ではトレンドに振り回されすぎないことが重要ではないでしょうか。「選手としてのベース」「戦い方のスタンダード」を身に付けることが第一なのです。どんな状況なら早い攻撃が可能で、どんな状況だと落ち着いてボールを持つべきか。どんな状況ならすぐにボールを奪い返しに行き、どんな状況だったらすぐに自陣に戻るべきなのか。そうした判断の基準を学ぶことが将来の礎となるのです。

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