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川崎フロンターレも実感!選手に伝えたい基本の大切さ

7月7日、七夕の日に行われた親善試合、川崎フロンターレVSボルシア・ドルトムント。風間八宏監督の下、ポゼッションサッカーを推奨する川崎が、日本代表MF香川真司、C大阪U-18からやってきた丸岡満(20歳)の2人の日本人選手を擁するドルトムントと対戦しました。ドルトムントは、チャンピオンズリーグのファイナリストにもなったドイツの名門クラブ。この試合では、サッカーに大切なものを観ている者に刻みつけた。そのメッセージとは、「基本を大切にする」こと。この試合、ドルトムントは終始、川崎を圧倒し続け、6-0という大差での勝利を掴んだ。試合後のミックスゾーンでは、元日本代表で2010年の南アフリカW杯にも出場したMF中村憲剛が、開口一番こう発した。(取材・文 安藤隆人 写真 田丸由美子)

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■中村憲剛も実感した基本の大切さ

「世界のトップクラスというのは、こういうことなんだなというのが、正直な感想ですね」。

この一戦は、両チーム間に隔たる"大きな差"を浮き彫りにした。記者会見に臨んだ風間監督の表情は、大敗による悔しさよりも非常に晴れやかだった。

「素晴らしいものを見せてもらった。例えば50mを走ったとしても、相手とは5歩の差がある。その差をどう縮めていくか。フォーメーションや戦い方以前に、一人一人が受け持っているゾーンの広さが全然違う。ハードワークする量、抜かれてもすぐに追いかけて奪いに行く執念とスピード。そして僕が何度も言っているように、"スペースと足下の違いは無い"ということ。今まで選手たちに何度も言い続けていたことをドルトムントが実践して見せてくれたことで、、うちの選手たちは本当に理解してくれたと思う。我々が目指すべきものが、より明確になりました。我々が目指していたことを、彼ら(ドルトムント)はやっていた」。

百聞は一見に如かず。風間監督は筑波大学サッカー部監督時代も、川崎の監督に就任してからも、一貫している。

①ハードワークをしてプレーゾーンを広げる
一人一人が運動量だけでなく、攻守の切り替えの速さ、オフ・ザ・ボールの動きの質を上げて、自分がカバーできるプレーエリアを広げる。プレーエリアが広がれば、必然的により組織的で連動性の高いプレーができるということだ。

②"足元"もスペースのひとつ
これはスペースの解釈の違いだ。サッカーのピッチ内では、「スペースではなく足元に出せ」「足元ではなくスペースに出せ」というやりとりをよく耳にするが、風間監督は、足元もスペースのひとつと捉えている。足元でボールを受けたとき、ステップや一瞬のチェックの動きをすることで、相手との間に一瞬隙間ができる。この隙間にボールを通して、ファーストタッチで相手を交わしたり、前に出るようにしないといけない。これを分けてしまうと、"スペースが無ければ、パスをしない"とか、"足下のパスは、ただ相手を目がけて出すパス"となってしまう。そうではなく、"足下のパスは、味方が作った一瞬のスペースにボールを通すこと"という捉え方に変えないといけない。その捉え方ができれば、「ピッチ上のどこでもスペースがあり、そこを上手く利用し、密集地帯でも突破できる」という考え方になる。だからこそ、選手ここのプレーエリアを広げることが、どれだけ重要になるかが分かる。

「スペースの価値観を変えないと、いつまで経っても破壊力のある攻撃ができない。もっと技術にフォーカスを当てて、よりクリエイティブにやっていかないといけない」(風間監督)。

これらは決して最先端の意見でも、斬新な意見でもない。いたって基本的なことである。「サッカーの原理原則に則った基本が大事」と言っているのだ。

この2つを風間監督はずっと言い続け、選手達の理解を求めてきた。そして、2012年に川崎の監督に就任。1年目は思うように浸透せず、8位と言う結果に終わったが、徐々に浸透してくると2年目は3位となり、エースの大久保嘉人が得点王を獲得。3年目の昨季は6位に終わったが、大久保が2年連続得点王を獲得し、攻撃の質が格段に向上した。今季は4年目のシーズン。積み重ねてきたものは確かにあった。しかし、それでもまだまだ足りなかった。

「今日、ドルトムントがやっていたことは、基本中の基本のこと。それをしっかりとやるか、やれないのかで、どんなに差がついてしまうのか。それが改めて分かった」(中村憲剛)。

日本代表を経験し、技術レベルは日本でもトップクラスの中村憲剛がこう言うのだから、その意味の重さは分かるだろう。

『基本を大切に』―。

これは指導現場で良く言われていることである。では、何をどう大切にすれば良いのか。そこが曖昧になってはいないだろうか。この言葉が、選手たちに実感を持って実行してもらうためにはどのような指導をすればよいか。それは、次回にお伝えする。

後編:ドルトムントに学ぶ!基本をより速く正確にプレーすることの大切さ>>


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