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「自分のサッカー観を信じて、やりたいようにやればいい」/学ぶ指導者対談 前編

夏休みに開催された、大森FC主催の『LOCAL HERO CUP(U-11)』。品川区の大井ふ頭中央公園で開催されたこの大会に、Jクラブ、街クラブ、海外スクールクラブが集まり、熱戦が繰り広げられました。この大会に参加したクラブの中に、ひときわ珍しい名前のクラブがあります。それが栃木県の「ともぞうSC」です。ともぞうSCは代表の長谷川具三(はせがわともぞう)さんが創設したクラブで、栃木県ではトップレベルの強豪クラブです。長谷川さんはJFL時代の栃木SCでプレー経験があり、引退後にともぞうSCを立ち上げました。一方の大森FC、小島直人コーチは昨年までFC岐阜のトップチームコーチを務め、ジュニアからプロまですべてのカテゴリーで指導経験のある指導者です。熱い志を秘めたふたりの指導者は、日頃どのようにサッカーを学んでいるのでしょうか? 対談形式でお届けします。(取材・文・写真/鈴木智之)

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■育成指導に一石を投じるふたりのサッカー観

小島:ともぞうSCさんの試合を見させてもらいましたが、ジュニア年代でよくある「蹴って、走って」というサッカーではないですよね。

長谷川:うちはパスをつなぐサッカーを目指しています。なので、むやみにボールを蹴ることはほとんどせず、パスとドリブルを主体としています。

小島:試合を見て感じたのは、パスを出した後に動き直す選手が多いこと。パス&ゴーなどの練習をやっているんだろうなと思いました。どんなコンセプトでトレーニングをしていますか?

長谷川:攻撃はドリブルとパスを使って、自分の得意なプレーをするのが第一です。サッカーは状況判断が大事なスポーツなので、視野の確保のトレーニングもしています。それと、技術面の練習ですね。ボールを前に運べないと、パスもうまくつながりません。せっかく前に運べる状況なのに、ロングキックを蹴ってしまうと、数的同数になってしまいますよね。

小島:ジュニア年代のチームを見ていて思うのが、守備面がおろそかになっているというか、基本的な立ち位置やポジショニングについて教わっておらず、それによって失点してしまうチームが多い印象を受けます。守備面では、どのような働きかけをしていますか?

長谷川:守備のときのポジショニングはうるさいほど言っています。攻撃は選手の個性に任せるところが多いですが、守備には答えがありますよね。相手の位置、味方の位置、ボールの位置を見れば、どこに立てば防ぐことができるのかという答えがあります。相手がドリブルで仕掛けてきたときに、自分が奪いに行くのか、チームメイトに任せてカバーリングをするのか、それともスペースを埋めるのか。その判断が重要で、いい守備ができるといい攻撃ができるんですよ。

小島:大森FCのジュニアの監督は現役時代にDFだったので、ともぞうさんと同じように「守備には答えがある」と言って、その規律をどう守らせるかにこだわっています。ただジュニアの8人制だと、相手に遠目からロングシュートを蹴れる選手がいて、点を取られてしまうことがありますよね。練習での守備の仕方はこだわりますか?

長谷川:こだわりますね。守備は下手でも、相手に寄せることはできます。そのクセをつけさせて、攻撃は自分の色を出そうと言っています。攻撃はパス回しやドリブルで運ぶ練習、相手をかわす練習をして、4対4や5対5のゲームをして、最後は8対8の試合をします。

小島:パスをつなぐサッカーをすると、つなぐことにエネルギーをとられるじゃないですか。最後のところは弱くなるんじゃないかと思って試合を見ていたんですけど、すごいシュートを何本も決めていたので驚きました。

長谷川:練習のときにチャレンジゾーンを決めて、相手陣地の真ん中からゴール寄りのところは自由に、自分の好きなようにプレーしろと言っています。ただ、ボールを奪われたらしっかり守備をする。身体の向きが悪ければ、角度を作ったり、プルアウェイをしたり。状況をしっかり見えていると、正しい答えを選択することができます。いまの子はサッカーを知っていますから。それができない子は、状況が見えていないだけなんですよ。

小島:状況を見えるようにするために、どうやって指導をしていますか?

長谷川:練習中も試合中もそうですけど、「相手を見ながらプレーしよう」と言っています。相手、仲間、ボール、すべてが見えるといいのですが、身体の向きを作らないといろいろなものが見えなくなりますよね。小島コーチはどうですか?

小島:攻撃に関して「好きなようにプレーしよう」と言うと、選択肢をたくさん持っている選手は、伸び伸びとプレーします。でも、そうではない選手にも選択肢を与えるために、ドリル的なトレーニングすることもあります。状況が見えていても、それを解決する方法がわからなければ意味がないですよね。視野を広げてプレーの選択肢を作るためにドリルをして、『この状況ではこの形でプレーすると効果的』ということを知っていると、判断も速くなりますよね。

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■「サッカーを理解するために、指導者が学ぶことが大切」

小島:今回の対談のテーマに「サッカーを学ぶ」というのがあるのですが、どうやって勉強していますか?

長谷川:僕はオープンマインドで、いろいろな人の話を聞いて、いいことは取り入れようと思っています。固い頭では、子どもたちに教えられないですよね。

小島:僕は仕事のスタンスとして、やるからには質を高めたいと思っています。これはサッカーの指導者に限らず、社会人なら誰でも考えることだと思います。学ばなければ、成長できないですよね。

長谷川:本当に、そう思います。

小島:僕は数年前、ヒディンクが日本に来てイベントをしたときに通訳兼コーチとして帯同させてもらったのですが、そのときにも多くのことを学びました。ヒディンクはモチベーターとしても有名ですが、トレーニングの集中力がすごいんですよ。パスをしてダッシュするタイミングで選手が行かなかったら、すごい勢いで「行け!」と叫んでいました。そのテンションが選手に伝わっていましたし、このトレーニングを絶対に成功させたいという想いが伝わってくる。そういう姿勢が大事なんだとあらためて学びましたね。サッカーに対する情熱、選手に対する情熱を見せないと、選手たちもついてこないですよね。

長谷川:僕は子どもを預かっている立場として、「間違ったことは教えてはいけない」と肝に銘じています。間違ったことを教えるぐらいなら、教えない方がいい。好きにやらせたほうがいいですよね。教えるために常に勉強して、ニーズに合ったサッカーの知識を伝えたいと思っています。現代サッカーはすごいスピードで進化していて、ジュニアは8人制になったことで、(1)-3-2-2のシステムで、ボールを前に蹴るサッカーが主流になってきているんですよ。

小島:そうですね。

長谷川:Jクラブのアカデミーは(1)-2-4-1でピッチの幅を使ってボールを回すのですが、8人制になったことでピッチ上にスペースがたくさんあります。そのため、Jクラブと対戦するチームは最終ラインからロングキックを前に蹴って、前線からプレスをかける。そのやり方をされて、Jのアカデミーが勝てなくなっている現状があります。でも、それを見て疑問に思うこともあるんです。ボールをやみくもに蹴って、ハイプレスをして、子どもたちはサッカーを理解できるのだろうか。うまくなるのだろうか?と。

小島:サッカーを理解するためにも、指導者が学ぶことは大切ですよね。先ほども言いましたが、ジュニア年代で守備を整備しないチームが多いので、最終ラインの裏のスペースが空いていることがあります。対戦相手ながら、もう少し守備の概念を教えてあげればいいのにと思うのが正直なところです。最終ラインの背後のスペースが空いていたら、そこをダイレクトに狙うのは戦術として当然です。ボールに反応して適当に前に来てしまっている子に、マークの概念を教えてあげればいいのですが...。相手の真横に立つのがマークをすることだと思っている子たちがたくさんいて、そこを教えてあげたら、背後を狙うだけではなくなりますからね。

長谷川:それはありますよね。小島さんはどうやってサッカーを学んでいますか?

小島:コーチになりたての頃は、本を読んで勉強したこともありました。当時の失敗談があって、ヴェルディのスクールでコーチをしていたときに、一緒に指導をしていた小川章(現・VALIE都留コーチ)さんという、僕の師匠がいます。ヴェルディジュニアとジュニアユースで長く指導をされた方なのですが、あるとき「小島、練習をやってみろ」と言われて、失敗したくないので教科書的な指導をしたら、「やりたいことはわかるけど、サッカーって教科書通りにいくスポーツじゃないよな」と言うわけです。そのときに「自分のサッカー観を信じて、やりたいようにやっていいんだ」と感じて、自分のトレーニングが生モノになったというか。目の前の選手を見て、この部分をもっとうまくしてあげたいと思ったんですよね。

「0-1で負けている状況も楽しめるのがサッカー」/学ぶ指導者対談(後編)>>


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小島直人(こじま・なおと)【写真左】
一般社団法人・大森フットボールクラブ代表。イギリスでの選手経験の後、東京ヴェルディ普及コーチとして、育成年代選手の指導にあたる。2007年よりNIKEエリートトレーニング専属コーチとして、関東・関西地区で毎年1万人以上の中高生を指導。2013年より2年間、FC岐阜のトップチームコーチに就任。日本サッカー協会公認B級コーチライセンス、イングランド協会公認コーチレベル1保有。大森FC公式HP

長谷川具三(はせがわ・ともぞう)【写真右】
栃木県宇都宮市北部地区を中心に活動する、ともぞうSC代表。作新学院を経て、本田技研ルミノッソ狭山、栃木SC(JFL)でプレー。栃木SCのJFLファーストゴールを記録保持者。2002年の引退後、ともぞうSCを立ち上げ、26歳で指導の道へ。ともぞうSC公式HP

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