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「薄皮を一枚ずつ積み重ねていく」ギラヴァンツ北九州の確かな歩み/コンディショニングの実践者 (2)

サッカークラブとしての"パフォーマンス効率"では、Jリーグで1、2を争う存在かもしれない。J2ギラヴァンツ北九州のことだ。「ウチのチーム強化費はJ2の中でも下の方なんですが...」とは、柱谷幸一監督が試合後の会見などでたびたび口にする言葉だが、このクラブの成績は近年、強化費と比例していない。2014年は22チーム中5位。2015年も7位でシーズンを締めくくった。『コンディショニング』をテーマに最前線の取り組みをお届けする連載の第2回は、そんなギラヴァンツを支えるフィジカルコーチの吉満樹氏に、チームの"パフォーマンス効率"の秘訣について話を聞いた。(取材・文/吉崎エイジーニョ 写真提供/ギラヴァンツ北九州)

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COACH UNITED(以下CU):まずは吉満さんがフィジカルコーチという仕事に就かれたきっかけを教えてください。

吉満:僕は滋賀県の出身で、選手としては守山高校でプレーしていました。いまになって思えばですが、フィジカルコーチという職業選択のきっかけになったのは高校3年のときのケガでしたね。試合で脛骨と腓骨の両方を骨折してしまって、もう最後の大会までは、ずっとリハビリでした。かなり悔しい思いをしましたが、その後のリハビリテーションで昔ながらの「重りを持ち上げる」といった動作に打ち込む中で、「身体作りって面白いかもな」と思ったんですよ。まあ、いまのようにはっきりとした知識もありませんから、半分は「しょうもない...」「面倒くさい...」という気持ちもあったのですが(笑)。

CU:面倒の中にも楽しみがあったという。

吉満:やっていたら身体がどんどん大きくなっていったんですよ。高3の秋の体育祭の写真なんか、自分だけ見違えてムキムキになっていて(笑)。やればやるほど身体に変化が表れるというのが面白かったんですよね。高校卒業後に地元の社会人リーグでサッカーを続けながらフィットネスクラブにも通い続け、そこでより興味を深めてこの道に入りました。

CU:その後、フィジカルコーチとして学生チームからJクラブまで歴任されますが、プロとアマチュアで指導は変わるものでしょうか?

吉満:1995年に守山北高校で指導歴をスタートし、関西の高校・大学のサッカー部で経験を積んだ後、2007年に京都サンガでプロの指導を始めました。結論から言うと、プロとアマチュアで自分がやることに違いはありません。プロには言うけどアマには言わないということもなく、一切違いはないです。あるとしたら、受け手の感じ方ですね。プロ選手の方が、身体の変化にとても敏感であると言えます。

CU:もう少し具体的に説明いただくと?

吉満:人間の筋肉というのは、いいパフォーマンスを出すときには、ほどよい張りが必要なんですよ。ちょうどギターのチューニングをするようなイメージですね。弦を張りすぎてもいい音は出ないですし、緩みすぎてもいけない。音を鳴らしながら、ちょうどいい張りを作っていくじゃないですか。あの作業に近いイメージですよね。フィジカルコーチは試合に向けて、ほどよいテンションをかけていくことを考えますが、違いがあるとしたらその過程で本人が感じる身体の変化なんですよ。プロは繊細に、細かい変化を感じ取る。ちょっとした変化に気づくから、負荷のかけ方や角度まで考える。それがアマチュアだと、一般的にそこまで深く入り込めない。そういった違いですね。

CU:なるほど、よくわかりました。では続いて、2013年からいまに至るギラヴァンツ北九州(以下、ギラヴァンツ)での仕事について伺います。フィジカルコーチとして1年間どのように活動されているのでしょうか?

吉満:いまの時期に合わせた話をすると、まずここからは選手に身体を休めてもらい、フィジカルを一度リセットすることになります。ただ、年が明けて1月に新シーズンが始動したら、それ以降は基本的に同じことの繰り返しなんですよ。それも、地味ぃ~な作業の繰り返し(笑)。柱谷監督とはギラヴァンツで3年になりますが、コンディショニングについては「薄皮を一枚ずつ積み重ねていく作業だよね」と言われています。その心は、「負荷をかけ過ぎないようにして、ちょっとずつ能力を上げていく」ということです。

一般的には、1月のキャンプで思い切り負荷をかけて、夏の暑い時期には少し緩めて...といったメリハリをイメージするかもしれませんが、僕はむしろ「通年で同じことを続ける」というやり方です。本当に同じことを繰り返しやる。思うにコンディショニングというのは、"階段を上がる"のではなく"らせん状にぐるぐる回りながら少しずつ上がっていく"というイメージなんですよ。少しずつ負荷を上げていって、筋力・走力・アジリティといった要素を少しずつ、少しずつ上げていくという作業。だから選手たちにもよくこんなことを言いますよ。「毎日ちょっとだけ上げよう。ほんのちょっとでいいから」とね。それをずーっと積み重ねる、積み重ねる、積み重ねる...。

CU:そうなんですね...。プロクラブではいろいろな数値を測定しながらバリバリ上げていくイメージでした。

吉満:僕の仕事は、究極的に言えば"選手にピッチに立ってもらうこと"なんです。ピッチというのは公式戦の会場でもあるし練習場でもありますが、ピッチに立ってこそ選手は上手くなれるものですから。そう考えると、負荷をかけ過ぎてケガをさせるということは絶対に避けたいんですよね。その一方で、コンディションを"維持する"という考え方をすると、通常は落ちていくものでもある。だから目に見えるすごい効果がなくとも、長いことやっているうちに「いい感じでできているな」と選手が感じてくれたら、僕の仕事は大成功ですね。

ありがたいことに来季、柱谷監督がギラヴァンツで4年目を迎えます。コンディショニングというのは長い期間やるからこそ効果が期待できるもの。僕は過去にJ1のクラブでも指導しましたが、ヨーロッパの代表チームに入るような外国籍選手に対してもずっと同じことをやってきました。ギラヴァンツには他のクラブで出場機会が得られなった選手も少なくありませんが、そういう選手たちだからこそこのクラブで大切にしたい、とにかくピッチに立ってもらいたい、そんな思いで仕事をしています。

CU:長丁場のJ2リーグでは夏の暑い時期にコンディションが落ちることもあると思いますが、ギラヴァンツではどのように乗り切るのでしょうか?

吉満:基本的には同じことの繰り返しですが、その成果が試される夏場のコンディショニングを支える要素として、個人的にはアミノ酸の重要性を感じます。選手は普段のトレーニングから摂取してリカバリー面の効果を実感しているようですが、僕の立場で言うと、選手の疲労回復が早くなれば筋トラブルや関節トラブルが起こりにくいというメリットがあります。トラブルがなければ「薄皮を積み重ねていく作業」を淡々と展開していける、つまり少しずつたくさんの負荷をかけることができる。逆に疲労が残ったまま負荷をかけると故障につながりますから、回復が早いというのはそれだけでとても助かることなんですね。

特に今シーズンを振り返ると、7月の連戦をトラブルなく乗り切れたところに一番の効果を感じます。7月4日・8日・12日・18日・22日・26日と続いた6連戦をケガ人なく戦い抜き、結果として勝ちもついてきた。さらに重要なことは、9月に入ってからのリバウンドがなかったということです。9月20日の32節でもジェフユナイテッド千葉に勝ったように、後半15分から30分の一番疲れる時間帯で有利に展開している試合が多かったですからね。選手にしてみれば、相手が疲れてきているときでも「ああ、まだ足が動くなあ」という感覚をリアルに感じていたんじゃないかと思います。夏場に限らず試合前の摂取にはすごく積極的ですし、試合後もリカバリーのための摂取が習慣化しつつあります。

CU:吉満さんがピッチサイドから見ていても効果を感じると。

吉満:回復と再生というサイクルが上手くいっているんですよ。試合が終わった後の「回復」と、次の試合時間までの「再生」が、非常にいいサイクルで回っている。もちろん試合の勝敗にはいろいろな要素があって、ピッチに立つ選手たちの判断によるところが大きいと思いますが、ことコンディショニングに関して言えばアミノ酸の効果が大きいと感じますね。シーズン終盤になっても選手は試合でいいスプリントができているし、練習でも高いモチベーションをもって臨めている。これは僕の視点から言うと、回復と再生が非常に上手くいっている証なんです。

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吉満樹(よしみつ・としき)
1965年7月3日生まれ。滋賀県出身。守山高を卒業後、日本精工サッカー部を経てフィジカルコーチの道へ。守山北高、洛北高、同志社大、阪南大、びわこ成蹊スポーツ大などのアマチュアチームで経験を積み、2007年からは京都サンガ、アルビレックス新潟、大宮アルディージャなどのJクラブでフィジカルコーチを歴任。2013年よりギラヴァンツ北九州に活躍の場を移し、柱谷幸一監督とともに長期的なチーム作りに臨んでいる。

■新世代、筋トレメソッドで最先端の身体作りを

ギラヴァンツの吉満フィジカルコーチは高3のとき、ケガのリハビリをきっかけに身体作りに目覚めたと言います。当時はまだ、昔ながらの「重りを持ち上げる」トレーニングが主流だったようですが、最近の筋トレはすっかり洗練されてきました。ここでご紹介する「新世代、筋トレメソッド」もそのひとつ。競技別に特徴のある動きを日本を代表するトレーナー陣の監修で作成した最先端の身体作りを、あなたのチームでもぜひお試しください。

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