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次の「アカデミープロジェクト」を、あなたの街で/KAWASAKIモデルのすすめ

Jクラブ、街クラブ、学校の部活動が三位一体となり、地域ぐるみで選手を育成する『川崎アカデミープロジェクト』について、前回はプロジェクトの成り立ちと概要を説明した。今回はさらに掘り下げて、同プロジェクトのリーダーを務める川崎フロンターレ育成部・育成プロジェクトグループ長の川口良輔氏が地域の指導者とともに推進した、プロジェクトの具体的な活動を紹介したい。(取材・文/鈴木智之)

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<<地域の子どもをその地域でサッカー選手に育てる方法

■地域の指導者が推進するプロジェクト3本柱

川崎アカデミープロジェクトを本格的に事業化するにあたり、リーダーの川口氏はその実行組織として川崎市サッカー協会に「技術委員会」を発足させている。

「これはあくまで川崎市サッカー協会が主体のプロジェクトですので、我々フロンターレがファシリテーターを務めてはいますが、中心となって活動するのは川崎市の2・3・4種の指導者たちです。彼らの中から川崎市7区ごとにリーダーを選出し、活動の3本柱に据えた『交流』『強化・育成』『GK』ごとに担当者を立て、『川崎アカデミープロジェクト組織』を編成しました」

「交流」に関して3種と4種のトレセン合同トレーニングや交流戦を行ない、これまで縦のつながりが薄かった小学生年代と中学生年代の交流の場を設けたことはすでにふれたが、「交流」を次の「強化・育成」につなげるために必要なのが指導の指針となる考え方だ。

「プロジェクトの活動実績を積み重ねて3年目の2014年、7区の指導者を集めたケースカンファレンスを行ないました。グラウンドで指導者講習を行なった後、教室で川崎市の小中学生の映像を見ながら地域の強みと弱みを分析し、この年代の指導指針を地域の指導者中心に決めました。それが『技術力の高い、強い個の育成』です」

中でも特に重視されたのが「U-13年代の環境整備」というテーマだ。その解決策として、U-13年代の試合数を創出するために前後の年代であるU-12・U-14との交流試合を設定したり、幸区では4種と3種の垣根を越えたU-13リーグを作るなど、フレキシブルなサッカー環境が生まれている。また、グラウンドの数が少なく学校の校庭も狭いために正規のサイズで試合ができない川崎市の課題をふまえ、市内の高校のグラウンドを借りて中学年代のリーグ戦を計画するなどの施策も検討してきた。

3つめの柱である「GK」についても、Jクラブの介在価値を発揮して積極的に取り組んでいる。これまではどの地区もGKコーチが少なく専門指導を受ける機会がなかったが、各年代のGKを集めてプロのGKコーチによるトレーニングを行なったり、GKスクールを開催することで専門的な指導の機会を提供。プロジェクトで掲げる「守備範囲の広いGKの育成」を目指した指導の成果として、GKをやりたいという子どもが目に見えて増えたという。

■次の地域プロジェクトのリーダーを求む!

2012年に川崎アカデミープロジェクトが発足し、今年で4年目を迎える。中心的な存在として同プロジェクトを進めてきた川口氏は次のように語る。

「このプロジェクトに関して、フロンターレはファシリテーターでありサポート役です。プラットフォームはあくまでも川崎市サッカー協会ですから、協会を中心とした環境を作り、持続可能なものにしていかなければいけません。誰かがいなくなったら滞るというのではなく、それでも回る『スキーム』を作ることが大切です。実際、いまは私がいなくても地区のリーダーを中心に、指導者間で話し合って活動を進めることができています」

育成には時間がかかる。週末の試合や大会など目先にあるイベントには誰もが注力できるが、数年後のより良い未来に向けて起こすアクションには明確なビジョンと目標が必要だ。その点において、川崎アカデミープロジェクトが掲げるビジョンは「川崎の子どもたちを川崎で育てよう」である。川口氏は「最終的なゴールを鮮明に描くことができれば、目標達成の確率は高まります」と前置きをしたうえで、こう続ける。

「大切なのは行動を起こすことです。子どもたちは将来の日本を背負って立つ存在。子どもたちが夢や目標を描ける環境作りが重要です。この記事やオンラインセミナーを見てくれている指導者のみなさんも想いは一緒だと思うので、ぜひ力を合わせて活動できればと思います」

地域のリーダーであるべきJクラブが足掛かりを作り、地域ぐるみで選手を育てる。トップダウンではないボトムアップの組織が中心となって、地域のサッカー環境を変えていく。こうしたプロジェクトの先に、きっと新たなタレントが育っていくことになるのだろう。今後の川崎の取り組み、そして川崎に続く地域プロジェクトの動向に注目していきたい。

川口良輔(かわぐち・りょうすけ)
1971年5月8日生まれ。静岡県出身。川崎フロンターレ育成部・育成プロジェクトグループ長。川崎のスクールコーチやU-15監督として育成年代の指導にふれ、スカウト部門で長らく選手の発掘・獲得に携わったのち現職へ。「川崎アカデミープロジェクト」のプロジェクトリーダーとして、各種年代の指導者同士がつながることで実現する地域一体型の育成スキームを構築した。

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