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「リアクションの守備(ディフェンス)では勝てない」スペインのクラブが世界で結果を出している理由とは?

2015-16シーズンの欧州チャンピオンズリーグは、スペイン勢同士の決勝となった。試合前は「攻撃のレアル対守備のアトレティコ」という図式だったが、両チームともソリッドな守備でゴールに鍵をかけ、PK戦にもつれこむ熱戦を繰り広げた。スペイン勢同士の決勝となったファイナルについて、スペイン・バルセロナを拠点に世界中で選手の指導、コンサルティングを行うサッカーサービスのフリアンコーチは、どのように見たのか?また、ELではセビージャが史上初の3連覇を達成するなど、近年スペインのクラブが強さを発揮している理由について聞いてみた。

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サッカーサービスのフリアンコーチ

■リアクションの守備(ディフェンス)では勝てない

チャンピオンズリーグ決勝戦では、両チームの守備戦術、そして選手個々の個人戦術について、ピックアップしたいものがいくつかありました。まずはチーム戦術について。アトレティコの守備が強固なことは、決勝までにFCバルセロナやバイエルン・ミュンヘンといった、攻撃に特徴のあるチームを破ってきたことからも、理解して頂けると思います。

彼らは守備(ディフェンス)で重要な「後方のスペースを守る」というプレーを、最終ラインの4名(ファンフラン、サビッチ、ゴディン、フェリペ・ルイス)を中心に、チームとして非常に上手く実行していました。さらには「どこまで相手選手をマークするか」「どこでマークを外して、最終ラインを再構築するか」という、守備の認知と状況判断が必要なプレーに対しても、高いクオリティを保っていました。

我々が考えるトップレベルの選手とは、テクニックやフィジカル、戦術理解に加えて、「考えるスピード」が非常に速い選手です。試合中、状況は1秒ごとに変わっていきます。その中で認知、判断をしながら「1秒後に何が起きるか」を予測し、動き続けることのできる選手がトップレベルに到達することができると考えています。

C・ロナウドやベイルのようなスピードもパワーもあるアタッカーを相手にする場合、リアクションでプレーをしていては間に合いません。この試合でシメオネ監督は、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウド)にボールが入った瞬間に、厳しくプレスに行くように指示をしていたようです。それは、アトレティコの選手たちが見せた、序盤の厳しい当たりを見れば明らかです。

監督の仕事のひとつに、対戦相手の特徴を分析して、どのようなコンセプトを用いて守るのかを提示することがあります。さらに、守備についての戦略を実行するためには、ある程度、選手個々の戦術レベル(個人戦術)が求められます。

私が考えるに、近年スペインのクラブがチャンピオンズリーグで上位に進出し、代表チームが欧州選手権やW杯で優勝した要因は、育成年代からの戦術の指導に依るところが大きいと見ています。スペインの育成年代の多くの指導者が、テクニックやフィジカルを伸ばすだけでなく、ピッチの状況を瞬時に予測・判断して決断するという「プレーの理解」や「戦術理解」についてもアプローチをしており、その部分の指導は世界一だと思います。

我々は日本においてスクールやキャンプ、DVD「知のサッカー」シリーズなどを通じて「状況判断」「認知」といった、賢くプレーするためのメソッドをお伝えしています。テクニックやフィジカルが高いレベルにある日本の子ども達において、より良くプレーするために必要なのが「状況判断」や「認知」といった頭の中の部分だと考えているからです。

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■戦術理解や判断力は育成年代で獲得するもの

話をチャンピオンズリーグ決勝に戻すと、先日、我々はあるサイドバックの選手に対して、コンサルティングを行いました。その選手にも話をしたのが「いつ攻撃参加をするのか」というコンセプトについてです。これはコンセプトを知ることで、より良いプレーができるという一例です。

チャンピオンズリーグ決勝戦を例に説明しましょう。アトレティコの得点は右サイドのファンフランのオーバーラップから生まれました。それでは、ピッチ内がどのような状況のときに、どのタイミングでオーバーラップをすれば良いのでしょうか?

ひとつは「前方にスペースがあるとき」です。それが、攻撃参加のチャンスです。自チームがボールを持って相手陣内でプレーしているとき、同サイドのウィングがピッチ中央部へ入ったのを見計らい、攻め上がって攻撃に参加します。そうすることで、攻撃に幅をもたらすことができます。

アトレティコはFWのグリーズマンが中盤に降りたり、右サイドハーフのサウールが中に入ったりとコンビネーションを使い、ファンフランがオーバーラップする状況を作り出していました。そこからゴールが生まれたことからも分かる通り、チーム戦術として重要なコンセプトでしたし、ファンフランの機を見た攻め上がりもすばらしいものでした。

これを読んでいる指導者の方は、選手に「いつ、どのタイミングでオーバーラップをすればいいのですか?」と質問をされたとき、明確に答えることができますか? 

サッカーは様々な解釈ができるスポーツであり、答えは人それぞれ違います。我々サッカーサービスには、サッカーサービスが考える答えがあります。それは、スペインでの指導だけでなくオランダやドイツ、イタリアなど各地の指導法を研究し、分析した結果、辿り着いた結論です。

チャンピオンズリーグの決勝に出場するような選手は、テクニック、フィジカルだけでなく、戦術理解や状況判断、考えるスピードが速く、それらは育成年代の指導を通じて獲得してきたものです。選手が持っている才能を最大限発揮するために導くのが、我々指導者の役割です。いつか日本人選手の中から、チャンピオンズリーグ決勝の舞台に立つ選手が出るのを願っていますし、そのために我々はスクールやキャンプ、DVDなどでの情報提供を通じて、育成年代の選手の指導に励みたいと思っています。

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