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状況を正しく把握して「最適な判断」を第一に求める / ソルティーロ式コーチングメソッド

COACH UNITED ACADEMYでは、本田圭佑プロデュースの「ソルティーロ・ファミリア・サッカースクール」(以下、ソルティーロ)を特集。ソルティーロでは「本田自身が世界で戦う上で、子どもの頃にトレーニングしておけば良かったと感じていること」(鈴木良介GM)を中心に指導し、日本各地に70校を構えている。さらにはアメリカやアジアでもスクールを展開中だ。前編に続き、後編ではトレーニングの内容を中心に、どの部分にフォーカスして一日のトレーニングを実施しているかをお届けしたい。(文・鈴木智之)

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■何のトレーニングが始まるのかまずは子供たちに考えさせる

トレーニングはおよそ2時間。COACH UNITED ACADEMY動画前編では、ウォーミングアップの要素を含むラダートレーニングと「パス移動」をテーマにした、パスのトレーニングを紹介した。

後編は「3対3プラス3サーバー」からスタート。ソルティーロでは「子どもたちはコーチから与えられたトレーニングをただこなすのではなく、トレーニングの意図を解釈する」(鈴木GM)ことを重要視している。そのため、練習が始まる前にコーチがマーカーなど練習の準備を終えた状態で、子ども達に「いまからやる練習を当ててみて?」と投げかけていた。そこで子ども達はトレーニングのオーガナイズを見て「ポゼッション」「鳥かご」といったように答えていく。このように、コーチは子ども達に頻繁に問いかけをし、考えさせる状況を作っているのが印象的だった。

「3対3プラス3サーバー」のテーマは「パスを受ける前(オフザボール)の判断」。良い判断をするためには、ピッチの中で起きている状況を正しく把握する必要があり、そのためには視野を確保できる身体の向き、状況の変化に応じて立つ位置を微調整するためのステップワークが重要になる。それらは最初のラダートレーニングで意識させた部分であり、さらにゲーム形式で高めていく。

コーチは「大切なのは、ボールを持っていないときに、どんなプレーをしようかを考えること」とアドバイスし、「自分の考えをチームメイトに伝えてみよう」と、自己主張の重要性を繰り返し説いていた。これは本田選手らしさであり、ソルティーロが大切にする哲学が反映されている部分だろう。

コーチは選手たちのプレーとシンクロしながら「試合の中でボールを触っている時間は短い。だからこそ、ボールを持っていないときに、どんなプレーをするかを考えよう」「チームメイトに声をかけて、パスを呼び込もう」などと声をかけ、良いプレーをしたときには選手の名前を呼んで、大きな声で褒めていく。

とはいえ、一度のトレーニングで全員が完璧にプレーできるはずがない。複数いるコーチはそれも織り込み済みで、トレーニング後には、ボールばかりを見てプレーしていることを指摘。「一生懸命にプレーしているから、ボールを集中して見ていたけど、次はボールだけでなく周りも見よう。敵、味方、スペース、パスラインを見る。そのためにボールに寄るだけでなく、バックステップを踏んでパスコースやパスを受けるスペースを作ること」と具体的にアドバイスをしていた。

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■トレーニングテーマをしっかりと試合に落とし込めるように再確認させる

続いては、6対6のゲーム形式で、トレーニングのテーマを実戦に近い状況で実行できるかを確認していく。ゲーム開始前、コーチが子どもたちを前に「今日のテーマはなんだっけ?」と尋ねると、子どもは口々に「判断」と答える。「それはボールがあるとき、ないとき?」「ないときだよね。先程、ボールが来る前の判断が重要だという話をしたけど、いつもよりゴールが近いから縦を意識して、アングルをつけることを忘れずにプレーしよう」というアドバイスを送り、練習テーマにフォーカスさせていく。

最後の11対11では「先程の練習よりグラウンドが広くなるので、より周りを見ることが重要。ボールを貰う前に準備をして、頭のなかでイメージを持つこと」と声をかけ、ゲームで練習を締めくくった。

ソルティーロの練習は、習得を目指すトレーニングのテーマがあり、段階を経て、試合形式に近づく形で進んでいく。トレーニングのテーマ設定、それに対するコーチの声掛けには、スクールとしての哲学が反映されていた。また、取材場所となった幕張校の人工芝ピッチはすばらしく、この環境でプレーができる子どもたちは、間違いなくサッカーを楽しむことができるだろう。その様子を、COACH UNITED ACADEMY動画でご覧頂ければと思う。

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<プロフィール>

SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL ゼネラルマネージャー
鈴木良介(すずきりょうすけ)
1981年、東京都出身。一般企業の役員を務めるなど様々なビジネスの世界を経験した後、SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL ゼネラルマネージャーとして子ども達にサッカーを通して夢を持つことの大切さを伝えている。
イングランドFAライセンス取得。

関東SOLTILO代表
市川雅彦(いちかわまさひこ)
1985年、東京都出身。法政大学卒業後、大宮アルディージャに加入。東京ヴェルディへ期限付き移籍をし、大宮で現役を引退。ソルティーロで指導者の道を歩む。

スペシャルクラス責任者
吉武剛(よしたけつよし)
1981年、三重県出身。津工業卒業後、横浜FCに加入。東京ヴェルディを経て、アメリカの下部リーグで4年間プレー。その後、横浜FC香港等でプレーし、2015年に現役を引退。ソルティーロで指導者の道を歩む。

スペシャルクラスアシスタントコーチ
高橋延仁(たかはしのぶひと)
1983年、東京都出身。三菱養和スポーツクラブ~FC東京U18を経てJFL佐川急便に加入。引退後の現在はソルティーロにてスペシャルクラスのアシスタントコーチを務める
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