TOP > コラム > チビリンピック準優勝の高部JFCが実践。止める・蹴るをベースにゴール前の崩しの選択肢を増やす練習法

チビリンピック準優勝の高部JFCが実践。止める・蹴るをベースにゴール前の崩しの選択肢を増やす練習法

今年度の「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権」(チビリンピック)で多彩な攻撃を披露し、準優勝を果たした高部JFC。大島僚太(川崎フロンターレ)や千葉寛汰(清水エスパルス→FC今治)などのJリーガーを指導した設樂幸志監督は「止める・蹴るをベースに、相手の逆を突く。その中で常にゴールを意識させること」を重視しているという。

そこで今回は設樂監督に「相手の逆を突いて、ゴール前の崩しの選択肢を増やす練習法」をテーマに、前編では「DFがいない状態で基本技術を身につけるトレーニング」を実践してもらった。

相手ゴール前は人数が多いため、DFを攻略してゴールを狙うには、チームとして崩しの選択肢を増やす必要がある。はたして、どのようなトレーニングで崩しの意識を身につけさせていくのだろうか?(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

shitara01_01.png

次回の記事を読む >>

ボールを蹴る瞬間に、パスを出したい選手の方へ体の向きを変える

最初のトレーニングは「パス&コントロール」。2人1組で向かい合って立ち、インサイド、アウトサイド、ダイレクトでパスを行う。設樂監督は「トラップのボールは浮かさないように」「一回ずつ慌てない」と声をかけながら、選手のプレーを見守っていく。

shitara01_02.png

さらに「止めた足と反対の足でボールを蹴る」というルールを追加し、「どこにボールを止めるか」に意識を向けさせていく。

トレーニングの発展として「パスを受けたら、後ろにあるコーンをドリブルで周り、アウトサイドでパスを出す」「片方の選手が、左右交互にダイレクトで蹴る」を実施。

shitara01_03.png

ここでは、「パスの際に膝下の振りを速くすること」に言及し、「試合中はドリブルもパスもシュートもある。FWにくさびのボールを入れるイメージを持って、膝下の振りで素早く蹴ろう」と、試合を想定してトレーニングすることの重要性を説いていた。

2つ目のトレーニングは「ドリブル→パス」。パスの出し手はコーンをドリブルでかわし、前方にいる選手へパスを出す。

このとき、パスを受ける選手はコーンの左右どちらかに動くので、パスの出し手は顔を上げて味方を見ながら、動いた方向へパスを出す。

shitara01_04.png

「パスを受ける選手は、はっきり動いてマーカーを外そう。パスを出す選手は試合を想定して、相手にインターセプトされないようにタイミングを外したり、アウトサイドを使ってパスを出してみよう」

3つ目のトレーニングは「サイドステップ」。パスの出し手は3人で、そのうち2人がボールを持つ。パスの受け手はコーンの間をサイドステップで移動し、パスの出し手は、受け手が正面に来たらパスを出す。パスを受けた選手は、最初の出し手ではない、ボールを持っていない出し手へパスを返す。

shitara01_05.png

ここではコミュニケーションと体の向きを重点的にコーチング。「パスを受けるときは声を出そう。試合中も同じだよ」と話し、コーンの位置でボールを受けてパスを出す選手に対しては「ボールを蹴る瞬間に、パスを出したい選手の方へ体の向きを変えることで、相手にパスを読まれにくくなる」と伝えていった。

常に顔を上げて相手を見ることを習慣化させる

4つ目のトレーニングは「3対1」。グリッド内でボールポゼッションを実施し、ドリブルはなしで、1セット25秒程度行う。

設樂監督は「25秒ぐらいで変わるので、守備の人はとにかく追いかけよう」と強度を出すように働きかける。攻撃側は、相手の素早いプレッシャーを受ける中で、これまでのトレーニングで取り組んだ、相手に読まれないパスの出し方や体の向きを意識することがポイントだ。

shitara01_06.png

また、次のような声かけを通じて、選手の意識に働きかけていた。

「守備がプレッシャーをかけてきたら、ダイレクトパスを使う」「相手が来ているか、顔を上げて感じよう」「相手を見ることで、ダイレクトで出したほうがいいのか、余裕があるのかがわかる。それを判断するのは自分だよ」

shitara01_07.png

トレーニングの締めくくりはシュート練習。味方へパスを出し、リターンを受けてシュートを打つ。シュートは逆サイドの対角線上に打つことを心がけ、「軸足を逆サイドに向けて打つこと」を意識させていった。

以上で前編のトレーニングは終了。設樂監督は「前編では、顔を上げる、相手を見る、それによりタイミングを外すことを意識してトレーニングしました。後編では、相手のプレッシャーがある中で、いかにしてゴールに結びつけるかをテーマに行います」と話し、トレーニングを締めくくった。

今回紹介した内容は、ボールを止めて・蹴るの基礎技術に加え、相手や周囲の状況を見て、判断することなど、ジュニア年代で身につけておきたい技術、判断にアプローチしやすいトレーニングなので、ぜひチャレンジしていただければと思う。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

▼▼COACH UNITED ACADEMY 会員の方のログインはこちら▼▼

【講師】設樂幸志/
清水東高校、関東学院大学を卒業後、地元の清水に戻り、「JFA全日本U-12サッカー選手権大会」で8度の優勝を誇る清水FCのコーチになり、指導者としての活動を始める。
清水FCでは、大島僚太(川崎フロンターレ)や風間宏希(ザスパクサツ群馬)、風間宏矢(ジェフユナイテッド市原・千葉)を指導した。
2001年に高部JFCを立ち上げ、静岡県大会で5回、東海大会では2度の優勝という実績を作り、2022年度は、「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権(チビリンピック)」で準優勝、「フジパンカップ県大会U-12」で優勝を果たしている。