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パスを回すために観ることを習慣化させる。セレクション無しの少年団が実践する技術と判断力を高める練習法


全日本U-12サッカー選手権大会に8度出場し、2013年には全国3位に輝いた、大山田サッカースポーツ少年団(三重県)。

セレクションを実施しない少年団ながら、OBには太田岳志(京都サンガ)、田口裕也(FC岐阜)らを輩出。今年度のチビリンピック全国大会に東海代表として出場するなど、育成力に定評のあるクラブだ。

大山田SSSは、相手と味方をよく見ながらハードワークをし、テンポ良くボールを繋いで、積極的にゴールを狙うサッカーを展開している。

チームを率いるのが、三重県のトレセンや指導者養成にも携わる小山直樹監督。経験豊富な小山監督に「テンポの良いパス回しから、相手ゴールに迫るトレーニング」をテーマにトレーニングを実施してもらった。

はたして、どのようなトレーニングを通じて、認知・判断・実行を向上に導いていくのだろうか?(文・鈴木智之)

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コーチが手を上げて指で数字を示すなど、観ることを意識させる

前編のテーマは「基本となるボールの質、パスを受けるタイミング、観ることの習得」。小山監督は「テンポの良いパス回しから、相手ゴールに迫るトレーニングを行います。ここでは『観ること』にフォーカスして指導していきます」と話し、トレーニングに入っていった。

最初のトレーニングは「パス&コントロール」。15m×15mのグリッドの角に選手を配置し、パス&コントロールを実施する。最初は右回りで行い、次は左回り(逆足)、パス&サポート、1つ飛ばし、ダイレクトと、動きが変わっていく。

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小山監督は「パススピード、精度が大事」と話し、味方が次のプレーに移りやすいところへ、ボールを届けることに言及していく。

また、「動き出しのタイミング」を強調し、実際の試合では、パスを受ける選手の動き出しが早すぎると、相手にマークされたり、プレッシャーを受けやすくなってしまう。そのため「ボール保持者がコントロールした瞬間に動き出すこと」を、繰り返し説いていった。

続いては、パス&コントロールを左回り(逆足)で実施。「ボールを受けるときは、進行方向に向かってコントロールすること。左足のときはゆっくりでもいいので丁寧にやろう」と、逆足の技術向上にフォーカスしていく。

次はパス&サポートの動きに変更。ここでは、1つ目のパスを出した後、ボールから目をそらさずに動いて、リターンパスをもらうことを実演。

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「ワンタッチでパスを出すと、相手をはがせるよ」と声をかけ、受け手はなんとなくボールを受けるのではなく、味方がコントロールしたら、動きのスピードや動きの変化をつけて、相手をはがすことの重要性を伝えていく。

続いては、パスを1つ飛ばしで行い、全員が状況を観て、ボールを受ける準備をしておくことの大切さを説明していった。

「パスは方向、タイミング、強弱が大事。リターンパスをもらう側も、落としのボールが詰まらないように、次の選手へパスを出せる角度を作って受けることが大事」とアドバイス。

また、コーチが手を上げて指で数字を示し、選手はそれを観るというルールを追加。「観ることを増やすとミスが出るけど、試合中はそれぐらい多くのことを観ることが大事だよ」と声をかけていく。

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最後はダイレクトでパスを回し、動き出しとパスのタイミングを、相手の状況を観ながら判断することをトレーニングしていった。

人とボールが動くようなテンポでプレーすると、縦パスが入りやすい

2つ目のトレーニングは「1対2→2対1」。15m×20mのグリッドの両サイドにサーバーを配置し、1対2を実施。1人の選手のボールでスタートし、2人の側がボールを奪ったら、選手が1人増えて2対2を行う。サーバーへパスを通したら終了というルールだ。

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小山監督は実際の試合をイメージしながら「数的不利の状況で、FWに対して縦パスを出すとゴールになりやすい。サーバーは真ん中から動かないので、そこへ質の高いパスを通そう」と説明し、トレーニングがスタートした。

ここでは、ボールを足元に止めた選手に対して「相手のプレッシャーが速いと取られてしまう。そのコントロールで、前にボールをつけられるかを考えてやろう」と声をかけ「人とボールが動くようなテンポでプレーすると、縦パスが入りやすい」とアドバイスしていく。

また「顔を上げてプレーすることで、相手をいなすことができる」と話し、サイドの位置でターンをして、2人の守備の間を通した選手を称賛。

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他にも、体の前にコントロールして、顔が上がってパスコースが見えていた選手のプレーを褒めるなど、良いプレーに対してアプローチすることで、他の選手にもわかりやすく説明していった。

以上で前編のトレーニングは終了。

小山監督は「パス&コントロールのトレーニングでは、テンポよくボールを回すために、出し手と受け手のパスの質、タイミング、角度が大切になります」と話し、「1対2のトレーニングでは、個の部分を大切に、状況に応じてドリブル、縦パスを選択することが重要です」とポイントを説明し、トレーニングを締めくくった。

ジュニア年代で身につけたい技術と判断をどのように向上させていくのか。そのためのヒントが詰まったトレーニングだ。ぜひ動画を見て、指導の参考にしていただければと思う。後編では、数的優位の中でのトレーニングに移っていく。


~動画を視聴した会員の方の感想~

・「小山さんの声掛けのタイミングやポイントを絞った指導が素晴らしく、ダラダラとなりがちなシンプルな練習メニューにも関わらず、子どもたちが集中していた点が良かった」

・「コピーしやすい内容だったので、自チームの練習にも取り入れたい」


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【講師】小山直樹/
大山田サッカースポーツ少年団の6期生であり、現在は大山田SSSの代表兼監督を務める。
また、三重県ジュニアトレセンのアドバイザー、47FAコーチエデュケーションチューターとして指導者講習会を開催するなど、指導者の育成についても幅広く活動している。「JFA公認指導者ライセンスA級U-12」所持。