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[書評] 子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング ボトムアップ理論で自立心を養う

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※本記事は、ブログ『22番の蹴球ファカルティ』様の同名タイトル記事の転載となります※

自主性を最大限に開放する創発型アプローチの提言。

育成年代の部活やクラブにおけるミッションとは何なのか。根本的な問いであるが、普段目の前のトレーニングや試合に没頭していると忘れがちになってしまう。ここがブレると目標設定などもブレてしまうので、しっかりと設定しておくべきである。

果たして、試合に勝つことや大会で優勝することがミッションなのだろうか。

もちろん、そういったミッションもありだろう。一方で、育成年代でサッカーをしている少年、青年の99%以上はプロ選手を目指すわけではない。育成年代におけるサッカーを社会に出て一人の社会人として活躍していくための教育の一環と捉えるのであれば、必ずしも勝つことだけがミッションというわけではなくなってくるだろう。

社会に出て求められる能力とは、いわば自ら問題解決をする能力である。
そのために、

  • 問題を発見し
  • (原因分析から)有効な打ち手を考え
  • 粘り強く打ち手を実行し
  • 必要に応じて周りを巻き込む

ことを「自ら」実施できる行動が求められる。

では、部活やクラブにおけるサッカーを通じてこれらの能力、特に「自ら」の部分を指す自主性を涵養することができるのか。

その問いに対する回答として「ボトムアップ理論」を紹介しているのが本書である。

ボトムアップ理論とは何か

ボトムアップ理論の説明については拙ブログを参照してほしい。
ボトムアップ理論はプレイヤーズ・ファーストを具現化する新しい指導の形

拙ブログから冒頭の説明を引用しておく。

ボトムアップ理論とは、畑喜美夫氏が提唱した、プレイヤーが主導してチーム運営を行う指導方法である。プレイヤーは練習メニューから公式戦に出場するメンバー、戦術、選手交代などをすべて自ら決定していく。指導者は必要に応じて問題提起などを対話を通じて行いながら、プレイヤーの可能性を引き出すファシリテーターとして機能する。

本書の著者である畑氏によるDVD教材も販売されている。2巻組で、1巻目が理論的背景などの紹介、2巻目が畑氏と他2名の座談会となっている。


なぜ今ボトムアップなのか

ボトムアップ理論は決してサッカー以外の能力を育成するためだけに導入するわけではない。畑氏は前任の広島観音高校サッカー部の監督として、ボトムアップ理論を用いて2006年に高校総体で優勝を成し遂げている。

ボトムアップ理論を推奨する理由として、畑氏はこのように語る。

近年、指導者の大半がテクニックや技術論、戦術論にばかり目がいって、チーム指導のベースとなる組織論についておざなりにされている方が多いと思います。インターネットで検索すれば、バルセロナやマンチェスター・ユナイテッドの技術指導の情報は、簡単に手に入れることができます。世界中の強豪チームの指導方法も知ることができます。

でも、その通りに指導したら、どこでもバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドのようなチームになれたら苦労はありません。全国の指導者はもう頭打ちの状況で、何か打開策はないか悩まれているんだと思います。

ですから、話題のテクニックや技術論、また戦術論に飛びつきがちですが、大切な指導目的や哲学、組織論について、いま一度、見直しが必要ではないかと思います。(P.130-131から引用)

サッカーは自主的に判断する場面の連続である。1回1回のプレーが途切れ、監督の指示が重要になる野球やアメリカンフットボールとは根本的に特性が異なっている。であれば、自主性を育むように環境面からサポートすることが大切になることは自明である。

一方、サッカーという競技として、指導はトップダウンがよいのか、またはボトムアップがよいのか考えてみると、まず、競技の特性として、選手が状況に応じて判断をする場面の連続ですよね。

しかも、瞬時の判断が要求されます。

ベンチの監督から「右に行け!」「逆サイドに廻せ」なんてコーチングの声が聞こえてから、動いていたら、相手の選手にインターセプトされたなんて、よくある光景です。どう考えても、ピッチの選手が判断する方が、スピーディにスムースに展開されてくると思います。(P.147から引用)

ボトムアップ理論を導入することで、社会で必要とされる能力を涵養できるばかりでなく、試合に勝つために必要な能力も育成できるのである。

教えないことが良いことではない

ボトムアップ理論の上辺だけを取り上げると「指導しないことが良い」と捉えられかねない。それは間違いであるので注意が必要である。指導しないことが目的ではなく、プレイヤーが自主的に判断することを支援することが目的である。最初から自主的に判断することは難しいので、寄り添うようにファシリテーターとして機能することが求められる。

村松尚登氏はこの辺りの考え方について、小澤一郎氏との共著『日本はバルサを超えられるか』(筆者のレビュー)の中で次のように語っている。

まったく教えないというのは指導放棄になってしまいます。単に放置するだけでは基本の習得すらままならず、子どもの遊びの延長になってしまう危険性もある。そのためにも選手が自らトレーニングをオーガナイズできるためのノウハウの提供は必要で、もしかすると自分たちでトレーニングを組み立てる選手たちを対象とした「指導者選手講習会」の需要が出てくるかもしれません。

(中略)

私が今春まで指導していたバルサスクールでは、誤解を招くかもしれませんが「教えすぎている」と言っていい状態です。ただしそれは、ゲーム形式の練習を通じて、判断材料を与え、教育するという感じの詰め込みで、一般的なつめ込み指導とは異なると自負しています。(P.66-67から引用)


教えることと教えないことの均衡については拙ブログに考え方をまとめたので参考にしてほしい。

教えずに気づくのを待つのか、教えて気づきに足場をかけてあげるのか

もっと多くの人に知ってもらいたい

全ての部活やクラブでボトムアップ理論を、とは考えていない。トップダウンがダメとは僕は思っていないし、とても大切なアプローチだと思っている。

よくないのは、トップダウンや「やるべき」という外発的なアプローチが全てだと考えてしまうこと。選択肢を用意した上で、ミッションに照らしあわせてボトムダウンや「やりたい」という内発的なアプローチも考えていくことが重要である。

ただし、どちらのアプローチも中途半端な使い分けは難しく、どちらかを選択したら基本的にはその世界観で運用していくことで初めて効果を発揮する。しっかりと世界観を理解した上で適用できるように、プレイヤーよりも指導者がまず学びを自主的に実践することが重要であることにも気づかせてくれる一冊である。

 

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鈴木洋平(すずきようへい)
1979年9月10日生まれ、神奈川県横浜市出身。早稲田大学政治経済学部卒。採用や育成を手がける人事コンサルタントを本業としながら、背番号22番をつけてサッカーやフットサルに興じる。ワールドカップは98年より連続現地観戦。趣味はラーメンの食べ歩きで年間200杯食べる。ブログ:サッカー書籍の書評ブログ「22番の蹴球ファカルティ

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