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サッカーの指導は長い道のり。プロに到達するまでに必要な段階的学習

サッカーサービスのダビット・エルナンデスです。我々は日本サッカー協会のプロジェクトコンサルティングディレクターを務めるほか、日本で様々な活動を行っています。2011年には『知のサッカー』という指導者向けDVDを出しました。その中で、主に『トレーニング初期』と呼ばれる14歳頃までの選手に対して、いつ、なにを、どのように教え、トレーニングをしていくべきかについて、実践的な練習メニューを紹介しています。

サッカーの指導は、長い道のりです。最終的にプロに到達することを考えると、トレーニングのレベルを4つに分けることができます。6~13歳までの『トレーニング初期』、14~18歳までの『専門的トレーニング期』。さらには18~23歳、そして23歳以上と段階を経て、サッカーを学んでいく必要があると考えています。

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■選手のレベルに合った最適なトレーニングを行う

大切なのは年齢ごとに段階を経てステップアップすることです。トレーニング初期を飛ばして、専門的トレーニング期に入ることは、選手の成長から見ると良いことではありません。例えるなら、足し算、引き算を理解していないのに、方程式の解き方を教えるようなものです。

段階を経て指導をし、選手が成長していくことは理想的な姿です。しかし、現実は理想通りにいかないこともあります。たとえばU-15のチームを見ているとして、チームの中には段階的にサッカーを学んできて、『専門的トレーニング期』にスムーズに入ることができる選手もいれば、その年代までに身につけるべきことを教えてもらっておらず、『トレーニング初期』から始めなくてはいけない選手もいるでしょう。

そこで重要になるのが、その選手のレベルに合った最適なトレーニングをすることにあります。指導の際に重要なのは、すでに知っている内容に近いもので、少しレベルの高いものを教えること。専門的トレーニング期の選手とトレーニングをするのであれば、トレーニング初期で行った練習との共通点を理解してもらうことが大切です。

■段階的に専門性を高めていく

たとえば『FWのサポートの動き』をテーマにトレーニングをするとします。4-4-2システムで、1人のFWが前目にポジションを取り、もう1人のFW(セカンドトップ)が下がり目の位置でサポートをします。セカンドトップの選手は、相手のDFとMFの間にポジションをとりながら、もう一人のFWをサポートする動きをすることが重要な役割となります。

トレーニング初期で『サポートの動き』を身につけているのであれば、選手は「どのような身体の向きでサポートしなければいけないのか」を知っています。そこで、セカンドトップへのアドバイスとしては、「相手のCBが自分のマークについてこないのであれば、DFラインとMFラインの間にポジションを取り続けよう」です。

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一方、CBが前方へ出てくるのであれば、MFのラインまで下がるのが良いでしょう。なぜなら、CBを最終ラインから引き出すことができるからです。自分がボールを貰う位置にはいませんが、そのような動きをすることによってできたスペースを、もうひとりのFWが使うのです。

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ここで紹介したセカンドトップの動きは、サイドバックの選手には指導しません。なぜなら、サイドバックには必要のない、専門性の高い動きだからです。『トレーニング初期』でサッカーに対するベースの部分を身につけ、次のステップである『専門的トレーニング期』では、ポジションごとの役割やポジションごとの基礎を身につけていきます。それこそが、段階を経てトレーニングをすることなのです。

次回の更新では、どのようなトレーニングを通じて、セカンドトップの選手にサポートの動きを身につけさせるかという、練習メニューとトレーニングの組立を紹介したいと思います。


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ダヴィッド・エルナンデス・リヘロ/ David Hernandez Ligero
サッカーサービス社代表。2012年より日本サッカー協会プロジェクトコンサルティングディレクターを務めるほか、2010年より、日本のジュニアからJリーガーまでの指導・コンサルティングを実施。カタルーニャサッカー協会副テクニカル・ディレクターやVic大学「フットボール方法論」教授などを歴任し、プジョルのパーソナルトレーナーを務めた経験を持つ。


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