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「選手の"器"を大きくする」3つのポイント / ジュニアユースから逆算したジュニア年代に必要な指導

2016年度の高校サッカー選手権で活躍した、青森山田のGK廣末陸(FC東京加入内定)や市立船橋のキャプテン杉岡大暉(湘南ベルマーレ加入内定)など、FC東京U-15深川はFC東京U-18に進む選手以外にも、多くのタレントを輩出した。2014年には高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権で優勝し、中学年代の日本一に輝くなど、日本トップレベルの育成組織であるFC東京U-15深川。

同クラブが考えるジュニアユースから逆算したジュニア年代に必要な指導とは? 2012年より同チームの監督を務め、2017年より同クラブの育成部長に就任した奥原崇氏に話を聞いた。(文・鈴木智之)

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■「器の大きさ」が選手の成長を大きく左右する

COACH UNITED ACADEMY前編のテーマは「U-15年代までの選手の導き方」。奥原監督は自身の経験から、育成年代で大切なのは「選手の器を広げていくこと」だと語る。

「私は日々の指導で"選手が持つ器の容量"を、どれだけ大きなものにしてあげられるかを大切にしています。ジュニア年代でサッカーを始めたとき、選手の器は小さいところからスタートします。そこから指導者が働きかけて、器の大きさを少しずつ広げていくことで、グラウンドの中で選手自身が表現できる量が増えていくのだと思います」

選手自身の器が小さいと、トレーニングをしても吸収できることは少ない。そのため、指導者として器を大きくする作業を行い、その上で選手それぞれが持つ個性を積み上げていく。それらをグラウンドで発揮できる人間性を身につけていき、両方を最大化することができた選手が、プロの道にたどり着けるのだろう。

では、器を大きくし、多くのものを吸収できる容量を持つ選手へと導くために、指導者はどのような働きかけができるのだろうか? 奥原監督は3つのポイントを以下のようにあげる。

(1)サッカーを楽しむこと
(2)意思を持ってプレーすること
(3)必殺技を持つこと

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■"サッカー漬け"にすることの弊害もある

(1)サッカーを楽しむことについては、近年、ジュニア年代の選手が所属クラブの活動に加えて、スクールやトレセン活動などに励む結果"サッカー漬け"になっているケースも少なくない。奥原監督が育成・普及(スクール)のコーチをしていた頃は、苦しそうな顔でサッカーに取り組んでいる子どももいたという。

「その子はFC東京のスクールに、週に2回通っていたのですが、それ以外の日もクラブやトレセンの活動など、毎日のようにサッカーをしていました。子どもながらに、親に月謝を払ってもらっている手前、スクールやクラブに行きたくないとも言えず、体力的にも精神的にも苦しい中でサッカーをしていたようです。そこで私がその子と話をする中で、スクールに通う日を一日減らしてみては? と提案をしました。休養日を作ることで疲労も回復し、保護者からも『休むことでパフォーマンスが上がりました。休息も大事なんですね』という声を頂くこともできました」

サッカーが好き、楽しい、面白いという気持ちがあれば、ポイント(2)の「意思を持ってプレーすること」のように、自然と「こういうプレーをしてみよう」というアイデアが生まれてくる。ジュニア年代でサッカーを習い事のようにとらえると、どうしても指導者にやらされてしまう、受け身の気持ちになってしまうもの。そこで、サッカーを始めるきっかけとなった、好き、楽しい、面白いという気持ちを思い出させてあげるのも、育成年代の指導者にとっては大切なポイントのひとつだろう。

(3)必殺技を持つことについて、奥原監督はこう述べる。

「必殺技とは、選手個々のストロングポイントのことです。サッカーをする中で、このプレーだけは負けたくない! と思うものが、誰にもひとつはあるもの。選手個々に自分の必殺技(武器)はこれなんだと認識させて、グラウンドで成功体験をたくさん与えます。そうすることで、選手はどんどん伸びていき、もっとサッカーがしたい、うまくなりたいという気持ちになっていきます。そうして磨いた必殺技を、どんなピッチコンディションでも、相手が強くても、発揮することを目指します。サッカーの楽しさを感じ、自分の意思を持った上で、ストロングポイントを磨いていく。U-15年代へ進むジュニアの選手に対しては、そのようなイメージで導くことを意識しています」

COACH UNITED ACADEMY動画前編では、ここで紹介したテーマに加えて「基礎の反復とサッカー理解」を、数学の勉強にたとえて紹介。街クラブを経て、FC東京のJrユース(U-15)に合格する選手は、どのような土台を12歳までに作っているのかといったテーマにも言及しているので、興味のある方はぜひ動画をご覧頂ければと思う。

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奥原 崇/
現役時代は1995年から1999年まで、FC東京の初代背番号10を背負い活躍。引退後、東京ガスでの社会人経験を経て、2003年に指導者に転向。その後、FC東京普及部コーチとして、ジュニア年代の指導に6年間たずさわる。2008年にトップチームコーチとなり、11年にU-15深川のコーチ、12年より同チームの監督に就任後、17年に育成部長となる。
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