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ドルトムントも導入! 新メソッド『ライフキネティック』の効果とは

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 ブンデスリーガの活況、A代表の成功だけでなく、育成年代から次々と好プレーヤーを排出しているドイツ。その育成の成功には様々な要因がありますが、一つには先進的な指導者が持ち込んだメソッドを取り入れたところにもあるようです。現地在住のコーチ・鈴木達朗さんに、『ライフキネティック』の概念について解説をお願いしました。

■クリンスマンが導入したトレーニング法
2004年7月、自国開催のワールドカップを2年後に控えたドイツ代表の監督にユルゲン・クリンスマンが就任しました。現役時代はドイツ代表のエースストライカーとして活躍し、引退後はアメリカ合衆国に住んでいた彼は、これまでのドイツ代表が行っていたやりかたを刷新し話題を呼びました。

当時は多くの抵抗もありましたが、アンダーカテゴリーを含めその後のドイツ代表の活躍を見れば、クリンスマンが導入した新しいトレーニングの数々は成功だったと言えるでしょう。現在では、ドイツサッカー協会が指導者のために発行しているテクニカルな雑誌にも、そういったやりかたが取り上げられている号もあり、徐々に広まりつつあります。

今回は、そのうちのひとつである、『ライフキネティック』というメソッドの基本コンセプトを紹介しましょう。ユルゲン・クロップ(ボルシア・ドルトムント)、ラルフ・ラングニック(元シャルケ、元ホッフェンハイム)、トーマス・トゥヘル(マインツ)、ロビン・ドゥット(ブレーメン)、そしてディーター・ヘッキング(ヴォルフスブルク)といった、ドイツの監督たちがこのメソッドのコンセプトを自分たちのトレーニングに導入していると言います 。日本人選手がこれらの監督の下でプレーしていたこともあって、皆さんも名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。

なぜメニューではなく、コンセプトを紹介するのか? それは、メニューを紹介してしまうと、それを真似することで満足してしまう可能性があるからです。ここでは「なぜ」「なんのために」そのトレーニングをするのか、という「考え方」を紹介することで、自分なりに消化して応用できるようにして欲しいと思っています。

■サッカーで発揮される『ライフキネティック』の効果
『ライフキネティック』のトレーニングをすることによって、鍛えられるのは大まかに次の4点です。

1.)ボールを扱う技能
2.)認知の能力
3.)視覚的な能力
4.)インテリジェンス(脳に関連するほぼ全ての機能、情動も含まれる)

サッカーで、プレーをするプロセスは、

1.)認知(情報を集める)し
2.)その情報がストックされている長期記憶と結びつくことで
3.)状況を理解し
4.)選択肢がイメージされ
5.)決定し
6.)実行する
7.)この実行した経験が長期記憶として保存されて、学習が強化されていく

というものです。ここで知っておきたいのは、決定と実行にかかわるのは脳の感情を司る部分であり、この部分が働かないと経験として長期記憶にはストックされないということです。

戦術的なトレーニングでも、この仕組みをうまく使う必要があるのですが、今回のライフキネティックは、これらのプロセスに必要な基礎能力を発展させます。つまり、脳に負荷がかかる運動をすることで、視覚、長期記憶、そして身体の反応の関係の最適化を目指すのが、トレーニングの目的です。

例えるならば、戦術的なトレーニングは、コンピューターを「いかに使うかを訓練する」ものですが、このライフキネティクスは「コンピューターそのもののパフォーマンスを上げる」ためのトレーニングと言えます。それでは、具体的に見て行きましょう。

■『ライフキネティック』の抑えておきたいポイント
 トレーニングの基本コンセプトは非常にシンプルです。:

1.2つの非規則的な運動を交替しながら行う(動作の交替)
2.2つの異なる運動の組み合わせ(運動の連鎖)
3.非規則的な運動と規則的な運動の自然な繋がり(動作の流れ)
+α. 回転する運動、身体の中心を横切るような動き

時間は週に一度60分のトレーニングが適しています。あるいは、30分のトレーニングを週三回でも同等の効果が得られます。このトレーニングは、毎日行うのではなく、最低でも一日は休まなければなりません。疲弊した脳神経系を、再びフィットさせる必要があるからです。
 
このトレーニングの目的は、技術トレーニングのように、ある一定の動作の完璧な再現性を目指すのではなく、それらの動作を組み合わせることで、脳の機能を促進させることです。そして、この脳の働きが良くなることで、サッカーのプレーの質を上げることができるようになるのです。

基本的に、このライフキネティックのトレーニングでは、笑いが自然と出てきます。むしろ、笑うことが望まれています。もちろん、一人で集中的に行うこともできますが、チームやグループで行うことは、楽しさがより増します。選手同士で、動作が合っているかどうかを確かめ合いながら、その動作のおかしさを笑い合うことで、気分が良くなることも、効果のひとつと言えるでしょう。

このトレーニングは、課題の動作を完璧にマスターすることではなく、むしろ、身体が自動化するのを妨げるために、複雑性を上げていきます。10回中5,6回できるようになったら、動作の複雑性を上げる目安です。

■練習サンプル:実際にやってみて、実感からトレーニングを組み立てる
このトレーニングのためのウォーミングアップの例に、次のようなものがあります。

1.右足で立ち、左足は前後に振る。
2.同時に右腕は横に開いて伸ばした状態で上げ下げする。
3.同時に、目は左右に動かし続ける。

これを30秒。その後、左右を入れ替える。休憩に、ゆっくり数分ドリブルして、今度は目を上下に動かす。この目を動かすことで、目の筋肉および脳の活性化を促します。では、ボールを使ったトレーニングでは、どのようなものがあるでしょうか。

とてもシンプルなものだと、二人組みで、リフティングしながら計算をする、というのがあります。二人で交互に問題とパスを出し合っても良いですし、一人がリフティングして、もう一人が計算問題を出す、あるいは九九の一段を言わせるなど、でも良いですね。

肝心なのは、脳の様々な部分を同時に働かせることなので、この場合は脳内の運動に必要な部位と言葉や計算を使うときに必要な部位を使っていることになります。よく、試合の合間にしりとりリフティングなどをやって遊ぶことがありますが、このように科学的に分析すると、このような遊びにも、しっかりとした効果があることが分かりますね。

他にもバスケットボールのドリブルをしながらサッカーのドリブルをしたり(種類の異なる動きの組み合わせ、周辺視野の拡大)、選手が横一列に並んで一斉に歩く速度でドリブルをしながら、コーチが右手で進行方向を示したらその方向へ、左手のときはその逆へ移動する(視覚、情報処理と実行の組み合わせ)など、試してみてください。単純に、片目を塞いだ状態でドリブルやパス、といったトレーニングでも視覚と実行の能力を鍛えることになるので良いと思います。

ポイントは、一見関係なさそうなことを組み合わせて、同時に行うことです。コーチの方々の想像力をフルに使った課題(ゲーム)で、選手たちが楽しみながら頭と身体を使えば、自然と頭の良い選手が育つかもしれませんよ。

鈴木達朗(すずき・たつろう)
宮城県出身、ベルリン在住のサッカーコーチ(男女U6~U18)。主にベルリン周辺の女子サッカー界で活動中。ベルリン自由大学院ドイツ文学修士課程卒。中学生からクラブチームで本格的にサッカーを始めるも、レベルの違いに早々に気づき、指導者の目線でプレーを続ける。学者になるつもりで渡ったドイツで、一緒にプレーしていたチームメイトに頼まれ、再び指導者としてサッカーの道に。特に実績は無いものの「子どもが楽しそうにプレーしている」ということで他クラブの保護者からも声をかけられ、足掛けで数チームを同時に教える。Web: http://www.tatsurosuzuki.com/


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