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日本にはむしろボトムアップ式が合っている。畑喜美夫が語るボトムアップ理論

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 COACH UNITED編集部です。先週に引き続き、ボトムアップ理論の先駆者、広島・安芸南高校サッカー部畑喜美夫監督にお話を伺いました。
 
 前回は『コーディネイト力の高い人=優れた指導者。畑喜美夫が語るボトムアップ理論』と題し、どういったバックグラウンドを持つ指導者の方がボトムアップ理論を取り入れているのかを中心に伺いました。
 
 今回は、ボトムアップ理論を取り入れたチームが具体的にどのような形で発展しているのか、畑先生が「日本のストロングポイントはボトムアップ的な発想にあるんじゃないか」と考える理由はどこにあるか、といったお話を伺っています。
 
 なおオンラインセミナーでは、ここでしか聞けない最新のボトムアップ理論、実践方法を収録しています。この機会に、ぜひご加入ください。(取材日:2014年4月6日 文:大塚一樹)

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■サッカーを変える、日本を変える
――勝利だけが成果ではないとおっしゃいましたが、ボトムアップ理論を取り入れたチームが勝利という結果を残すようになってきました。

 高校で言えば選手権ベスト16入りした長野の松商学園がそうですよね。昨年度からボトムアップを取り入れて、新人戦から4大会をすべて制覇し4冠したというチームですが、新人戦からチームのやり方を変えたら、子どもたちが「もっともっと」と自ら求めてきたそうなんです。それで高山剛治監督がGWに選手を連れて広島まで来られて、ボトムアップを徹底的に取り入れた。僕が示したのは軸でしかないので、あとは監督と選手たちの工夫ですよね。選手監督なんて僕でもやったことのないような素晴らしい取り組みを見せてくれて、独自の道で結果を出されています。

 野洲高校を破って選手権に出場した滋賀の綾羽高校もそうですね。ボトムアップを取り入れてから岸本幸二監督が「一番変わったのは自分です」とおっしゃっていましたよ。野洲の山本監督も「(綾羽に敗れた)前回の予選は、ベンチの様子が違った。先制されても慌てないし、選手に任せている安心感が伝わってきた」と言っていましたからね。

 あとは東京の堀越高校も早くからボトムアップでやっていますし、神奈川の秦野高校、中学年代や小学校でも取り入れているチームがたくさんあります。松商学園と綾羽高校の例なんかを見てもらうとわかるんですけど、ボトムアップ的な手法を取り入れているチーム同士は、試合のフィードバックもすんなり行えます。

 私たちの練習でとても大切なもののひとつがミーティングなんですが、このミーティングが最近進化してきて、自分たちのチームのミーティングの後に、相手のチームも交えてミーティングをやるようになったんです。「こうやられた方が嫌だった」「積極的にプレスをかけたのは良かった」など、自分たちの意図と、相手がどう感じたかをハーフタイムで指摘し合って、さらに自分たちのサッカーを高めていく試みです。

 これは、紅白戦はもちろん、同じボトムアップを取り入れている中との試合でも取り入れて、実践していることです。

 昨年12月にはボトムアップクリニックというのを主催したんですが、全国各地から8校が来てくれて、Aチーム、Bチーム補欠なし、指示なし、30分ゲームをやったら30分ミーティングという試合をやったんです。ミーティングのうち10分は自分たちのミーティング、10分は相手チームとの合同ミーティング、最後の10分はまた自分たちのミーティング。もちろん司会役、ファシリテーター役も選手たちです。
 
 はじめは「どうですか?」「どう思われますか?」と聞かれても意見が言えないような選手でも、子どもたち同士の話し合いから自然と意見が言えるようになってくる。また、意見が言えるような視点で観るようになる。こういう変化が魅力あるチーム作りには欠かせません。

――ボトムアップで選手に任せれば、選手が自分たちから成長してくれるんですね?

 選手に対する見方もゼロベースからはじめられて、加点方式で行くので、指導者は怒らなくていい、怒鳴るのだって疲れるでしょう? ボトムアップの方が同じペースで長く続けられますし、ミーティングを重ねていけば改善、改善で行けるんです。ボトムアップクリニックでは、1試合ごとの勝ち負けではなく、総合点で勝敗を決めたんですが、そのときそのときの勝ち負けじゃなしに、改善していって盛り返したり、BチームがAチームを助けたりと、会場のあちらこちらでボトムアップ的なことがたくさん起きていました。

 "日本式のトップダウン"なんて言われ方をしますが、私はむしろ日本にはボトムアップでやっていくやり方が脈々とあって、こちらの方が日本に合っている、むしろ、これからの日本サッカー、サッカーだけじゃなしに日本のストロングポイントはボトムアップ的な発想にあるんじゃないかと思っています。

■実はチームが変わるのも早いボトムアップ
――試行錯誤を繰り返し、選手に考えさせるボトムアップは時間がかかるイメージがありましたが、方向を変えてしまえば実は変わるのが早いのでしょうか?

 トップダウンで上から通達した方がスピード感があって早いという人もおられますが、あれもこれも上から言っていては、そのとき良くてもすぐに元に戻ってしまいます。
 
 ボトムアップなら、多角的な意見のなかで方向性が決まるので、ベクトルが向いてしまえばチームや組織が変わるのは、かえって早いような気がしますね。他の学校さんやチームも結果を出していってくれていますし、勝負に対する結果というのも実は早かったのかもしれません。

 トップダウンの指導は、トップが間違っていたらずっとそのままです。しかしボトムアップは間違っていたら軌道修正ができる。こういうことを誰もが言い出せるというのがトップダウンとボトムアップの大きな違いなんです。

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■目指すべきは"未来の勝利"
――勝利至上主義を追い求めずに、結果にもつながる?

 ボトムアップが目指しているのは、人の成長なんです。実績や勝利、優勝トロフィーを追い求めているのは、箱だけで立派で中身は粗悪ということを生みかねません。長らく問題になっている食品偽装についてもそうですよね。箱は立派でも問題を起こしているのは人なんです。

「はじめは粗末な箱でも、中の人が育って一流になれば箱も立派になっていく」

 こういう考え方をしていると、目先の勝利ではなく、もっと先の、子どもたちの将来を見据えた"未来の勝利"が見えてきます。私たちがサッカーやボトムアップを通じて「素敵なチームになろうよ」と呼びかけ、実現しようとしているのはこういうことなんです。

――未来の勝利ということで言えば、先生の教え子の方も社会に出て活躍しているとか?

 プロサッカー選手もいますし、20代で社長、店長、教員になるものも多いですし、みんな頑張っていますよ。「サッカーは良かったけど、教え子はどうしていますか?」「いや、知りません」では、意味がありませんよね。サッカーをやった数年間で、悔しいこと、悲しいこと、うれしいことをたくさん経験して、勝つことよりも大切なことを学んで素敵な人間になってくれたら、こんなにうれしいことはないですよね。

 こうした卒業生とは、「畑塾」という交流の時間を持って、いまでもお互いに学び合い、高め合う関係を続けています。

――今回はCOACH UNITED ACADEMYでさらに詳しいお話を全国の指導者のみなさんにお伝えさせていただけることになりました。指導者のみなさんにメッセージをお願いします。

 私も含めて指導者が一番大切にしなければいけないのは学ぶ姿勢ですよね。忙しい方もたくさんおられて、全国各地に学びたいという方がおられる中で、こういう機会がある、オンラインで学べるチャンスがあるというのは、私にとってもうれしいことです。

 いろいろな人たちの話が聞ける有意義なツールとして、しっかり活用して、指導に活かしてほしいと思います。もちろん目的は素敵な子どもたちを育てることですよね。プレイヤーズファーストで自分が学んだこと、いろいろな人たちがお話しされることをうまく取り入れて、また自分もそれを発信できるような軸を作っていく。こういうことの積み重ねが子どもたちの成長、未来の勝利につながっていくものだと思います。
 
 
 COACH UNTIED ACACEMYでは、実例を交えてさらに深い話をしてくださった畑先生。我々取材スタッフ数名とカメラを前にしたセミナーに「どこを見たらいいかわからんかった」と笑いますが、すぐに表情は引き締まり「この先にいる聞いてくれる人たち、全国の指導者のみなさんがここにいるつもりで、ライブ感を持って話ができました」とおっしゃいます。

 サッカー指導者に向けたオンラインセミナーという新しい試みに「面白かった」「もっとやろう」と終始笑顔で協力してくれた畑先生。先生の周りに人が集まり、先生の人間力に惹きつけられる人が多いのも納得の収録になりました。

■畑喜美夫(はた・きみお)
 1965年広島市生まれ、広島県立安芸南高等学校教諭。小学2年生から大河サッカークラブにてサッカーを始め、東海大一高(現・東海大学付属翔洋高)に越境入学。順天堂大学時代にソウルオリンピック代表候補に選ばれるも、腰の負傷により辞退。卒業後は現役を引退し、廿日市西高の体育教師を経て1997年に公立の広島観音高校サッカー部に赴任。

 2005年、同校にて全国高等学校サッカー選手権大会にて準々決勝進出、2006年には全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会にて広島県勢初の全国制覇を達成したことで、一躍そのボトムアップ理論が注目を集めた。著書に『子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング ボトムアップ理論で自立心を養う』、『「強いチーム」をつくる ~「ボトムアップ理論」による企業の組織作りとは~』がある。

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