TOP > コラム > ワイドプレーヤーをどのように育成すべきか? 現代サッカーにおける特殊性を考える

ワイドプレーヤーをどのように育成すべきか? 現代サッカーにおける特殊性を考える

4918289875_df86cebb15_o_580.jpg

TEXT:GARY CURNEEN 訳:澤山大輔

COACH UNITED編集部です。今回は、Garycurneen.comから「THE SPECIAL WAY OF COACHING WIDE PLAYERS」と題された記事の翻訳をお届けします。

元記事が掲載されたのは2014年2月6日と、少し前のものです。文中ではチェルシーがマンチェスター・シティを破ったことを取り上げ、優勝に近づくのではないかというニュアンスが語られています。ご存知の通り、5月11日の最終節でプレミアリーグ優勝を決めたのはシティですが、この記事の主眼はあくまでウインガーの役割の変化を述べていること。内容的に、このタイミングでも翻訳してご紹介すべき価値は十分にあると判断し、公開させていただきました。さっそくお読みください。

      ◆   ◆   ◆

今シーズン当初、多くの人々と同様、私はなぜフアン・マタがジョゼ・モウリーニョ政権下で出場機会を得られないのかと訝しんでいた。恵まれた才能を持ち、まばたきをする間にディフェンスを切り裂くマタは、プレミアリーグのどのチームにおいてもレギュラーでプレーすべきだと。

しかしこの月曜(訳者注:2月3日。チェルシーはアウエーでマンチェスター・シティを1-0で下した)の夜、"ザ・スペシャル・ワン"は世界に対し、なぜフアン・マタが彼のシステムにフィットしないのか高らかに示した。そして、より重要なこととして、モウリーニョは「モダンサッカーで成功するシステム上において、彼のようなタイプの選手に居場所があるのか?」という疑問を投げかけてもいるのだ。

エティハド・スタジアムでシティを打ち負かしたチェルシーには、ウィリアンとアザールという2人のワイドプレイヤーがいた。いずれも、チームのディフェンス、オフェンス双方をマスタークラスに引き上げる選手だ。カウンターアタックで破壊力を発揮し、守備に喜んで参加する2人は、35%のポゼッションしか握らなかったにも関わらずチェルシーを勝者にふさわしい存在にした。

『Monday Night Football』において、ギャリー・ネヴィルはモダンサッカーにおけるワイドプレイヤーの進化についてこう結論づけた。

「フルバックはウインガーとなり、ウインガーはフルバックとなった。そこにエクスキューズは存在しない」

ヨーロッパを席巻するドルトムントやバイエルンのようなチームは、この例にならっている。こうした"学派"は、試合に勝つこと以上の価値を見出していない。

シティの左サイドのアタッカーであるダヴィド・シルバは、ゴールに直結する2つの大きなミスをした。1つ目は、トランジションの際ピッチ中央にポジションを取ったこと。そこには、シティの選手たちがすでにポジショニングしていた。2つ目は、自陣に戻ってチームのためにハードワークしようという意思を全く見せなかったこと。その結果、チェルシーのイバノビッチに攻撃参加を許し、アタッキングサードへ侵入され、決勝点を奪われてしまった。

もっとも、シルバだけに責を負わせることはできない。彼は今シーズンのシティにおいて、革命的な役割を果たしてきた。しかしモウリーニョなら、こういうミスをした選手を許すだろうか? マンチェスター・ユナイテッドが今冬に獲得した選手が、その答えだろう(訳者注:チェルシーから放出されたマタのこと)。

フィラデルフィアで行なわれたNSCAA(National Soccer Coaches Association of America)の会議で、デイヴ・キャロランは「今日のゲームにいかにフィジカル的な要素が求められるか、コーチングにいかに大きなインパクトを与えているか」という鮮烈なプレゼンテーションを行なった。

彼は、モダンサッカーにおける「新しいポジション」を開拓した選手としてダニ・アウヴェスの名を挙げる。アウヴェスは主として守備の役割を与えられながら、多くの時間帯において相手のサイドでプレーし、バルセロナの攻撃には必ず参加している。

アウヴェスに要求される1試合平均でのフィジカル面での要求は、11.3kmの走行距離、39回のスプリント、それらをたった46秒のリカバーで行なうことだ。これは、バルセロナの全選手の中で最も高いフィジカルな要求となる。

アウヴェスは同じポジションに留まることなく、複数の責任を課され、右サイド全域を支配することを期待されている。月曜日のチェルシーの試合を振り返ってみれば、イバノビッチがこの役割を果たしていたことがわかるだろう。データを観れば、彼の平均的なポジションはハーフウェーライン上にあることがわかる。

こうしたワイドプレイヤーの進化は、コーチに対して多くの困難を強いる。実際問題、高給を喰む選手で、ボール保持時とそうでない時の両方に関わるような選手を見つけ出すことはできるだろうか? "高給を喰む選手"とは、例えば守備面での責任を負わないマタやシルバのようなタイプのアタッカーのことだ。また、前線に上がっていかないで中央のCBと連携をとり続ける伝統的なフルバックはどうだろうか? もし、双方のタイプの選手を抱えているなら、あなたのチームは多くを諦める必要があるし、トップレベルの相手には蹂躙されてしまうだろう。

さらに、コーチには難題がある。こうしたタイプの選手を、どうやって育成すれば良いかだ。今日のトレーニングセッションは、高いレベルでのインテンシティが求められる。すでに技術に秀で、フィジカル的にも十分なものを持つ選手をより高いレベルに押し上げ、この特殊なポジションに求められる要求を満たすレベルに到達させるためだ。

コーチの難題は、ピッチ外にも及ぶ。ワールドクラスのアスリートによって占拠される今日のゲームにおいて、こうした選手のポテンシャルを最大限に引き出し、成長させるためには、あらゆるスポーツ科学を総動員する必要がある。

さらに、心理学的な観点も忘れてはならない。いったいジョゼ・モウリーニョは、どうやって数百万ポンドを稼ぐタレントたちを前線からプレスバックさせ、これまで経験したことのないような運動量を許容させたのだろうか?

シティ戦のあと、モウリーニョは「マンチェスター・シティがボールを持った時、我々は"謙虚であり、準備ができていた"」と語っている。彼はその能力と共に、キャラクターの強さも賞賛されている。ゆえに、彼は「マスター・オブ・ディテール」と呼ばれる。そして、彼にこうしたやり方を止める理由はない。ビッグタイトルは、ごくわずかの差で手元に転がり込んでくることがある。さて、5月にプレミアリーグのトロフィーが掲げられるとき、こうしたゲームにおける変化がどの程度の重要性を持っていただろうか?

<了>

自宅にいながら “プロの指導法が学べる” コーチのための会員制オンラインセミナー コーチユナイテッドアカデミー 充実した講師陣による多彩なセミナー

  • JFA技術委員長
    霜田 正浩 氏

  • 湘南ベルマーレ監督
    チョウ キジェ 氏

  • 大学全日本選抜監督
    神川 明彦 氏

  • アヤックス アナリスト
    白井 裕之 氏

動画1本 無料視聴キャンペーン!

「興味はあるけどいきなり入会は不安」「実際にどんな動画セミナーが受講できるのか見てみたい」,そんなあなたに 簡単なフォームからお申し込みいただくだけで,セミナー動画1本分を無料プレゼント!!

“自ら考え行動する選手”を育てる指導法で、公立校を全国制覇に導いたボトムアップ理論"を全て解説

サンプル動画

【無料】動画のお申し込みはこちらから