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レフェリーの判定とどう向き合う? サッカーの精神からレフェリーについて考える

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 前回はサッカーの精神、その成り立ちからルールの基本概念に立ち戻って「ファウル」について考えてみました。今回はルールを運用した結果である「判定」と、その運用者である「レフェリー」について考えてみたいと思います。

<<前回記事:なぜファウルをしてはいけないのか?サッカーのルールとのつきあい方<<

■レフェリーも試合を作り上げる仲間の一員

 サカイクでも8人制移行に伴う審判1人制導入の際に判定のとの向き合い方について取り上げています(『この試合の目的は何なのか?』1人制審判の試合が、保護者の目線を少しずつ変えていく!?)が、レフェリー(referee)の語源はもともと、キャプテン同士の話し合いでどうしても決まらなかったことについて、refer(問い合わせる、ゆだねる)だったという説があることは、ぜひ覚えておいて欲しいことです。

 サッカーのルールは試合中、すべてレフェリーに委ねられます。ルール運用へのアプローチは競技によってさまざまありますが、サッカーはレフェリーに関しても決して対立する立場ではなく、ともに試合を作る仲間として存在しています。プロスポーツとして商業的にも成熟したサッカーでは、レフェリーの存在はときに勝敗を左右する「誤審」などの問題点がクローズアップされることがですが、不思議なことにサッカーのルールは「レフェリーは人間だから間違えることもある」という基本に立って運用されます。こうした考えとは逆に正確性を求めて機械化に舵を切る競技も増えています。

 ロンドン五輪で団体銀メダルを獲得し、話題になったフェンシング。騎士たちの剣術鍛錬から誕生したこの競技は、近代競技として成立する過程で公正さを求め、電子審判機を積極的に導入しました。剣がメタルジャケットに触れると電流が流れ、有効打撃を検知できる仕組みです。さらに、判定に不服があった場合には選手からビデオ判定を要求できるようになりました。日本女子が黄金時代を迎えているレスリングでも「チャレンジ」と呼ばれるビデオ判定要求権が選手に認められています。

 サッカーでは、2012年7月からついにゴールを機械で判定する「ゴールラインテクノロジー」の導入が決まりましたが、これはあくまでも補助的なもの。レフェリーの判定が最終的に優先されます。ビデオ判定についてはFIFAのブラッター会長が「ゲームを止め、モニターを使って判定するようなことはしない」と明確な方針を打ち出し、レフェリーの判定もサッカーの一部であるという立場を崩していません。

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■ビデオ判定にNO サッカーが大切にしていること

 ロンドン五輪では柔道のジュリーや体操の判定が覆ったシーンなどが別の意味で脚光浴びたように、ルール運用に関する問題が噴出した大会でもありました。機械判定、人による判定、さまざまな試みが行われていますが、どの競技もこの問題を解決するに至っていないようです。だからこそ、サッカーの示すルール運用へのアプローチは存在価値があると思うのです。

 サッカーをプレーする子どもたちのことを考えたとき、判定とどう向き合うのが正しいのでしょう。ここでもサッカーの精神、フェアプレーの精神は揺らぐことはありません。紳士はルールに則り、最高のプレーを発揮した上で、レフェリーとレフェリーの判定を尊重します。そしてレフェリーは選手の努力に報いるために最高の努力をします。

 また、サッカーは攻守が常に入れ替わる「流れの」スポーツです。すでに下された判定に抗議をしていては、試合の流れをつかみ損ねてさらに不利な状況になる可能性もあります。抗議よりも次のプレーの準備をした方が、よほどいいと思いませんか? レフェリーも万能ではありません。特に子どもたちのサッカーではお父さんレフェリーが笛を吹くこともしばしば。「この試合のために一生懸命努力してきた」「子どもたちがかわいそう」との思いから観戦中に声を荒げる親御さんの気持ちもわかりますが、ピッチの中はもう次のプレーに移行しています。子どもたちが次のプレーに集中するためにもこうした判定に対する異議は声に出すべきではありません。

 他競技の例をいくつか紹介しましたが、サッカーのように人間が判定していることを前提にした面白い例があります。初速300kmを超えると言われる"最速のスポーツ"バドミントンでは、ラインズマンがインかアウトか見えなかった場合、両手で目を覆う「見えませんでした」という判定があるのです。この場合、主審が適切な判断をしますが、主審も見えなかった場合はノーカウントに。嘘のような話ですが、見えないものは見えません。いい加減なジャッジをされるよりは、よほどいいのではないでしょうか。

 もちろんサッカーにはこうした判定はありませんが、ファウルの見逃しやルールの解釈の間違いは起りうることです。ルールを「ルールだから」という理由でも守っていると自分と違う基準で判定されたときに対応できなくなります。そんなときはサッカーの原点、紳士の精神、フェアプレーの精神に忠実であること。そして次のプレーを大切にすること。伸び盛りの子どもたちにも、子どもたちを全力でサポートしている親御さんにも、判定に文句を言っている暇はないのですから。


大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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