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「個人的には、日本に合うのはオランダだと思います」三浦俊也(ベトナム代表監督)×幸野健一対談(後編)

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<<前編:「ベトナムのレベルが低いという印象はない」三浦俊也(ベトナム代表監督)×幸野健一対談(前編)<<

幸野 ここからは三浦さんのサッカー観をうかがいたいと思います。27歳でドイツのケルン体育大学に留学されたそうですが、ドイツでの経験は三浦さんにとってどのようなものだったのでしょうか? 

三浦 いまの自分のベースになるものですね。僕が学生の頃はたくさん練習をして、走らされて...というのが当たり前でした。でもヨーロッパのチームと戦うと手も足も出ない。「なぜなんだろう、彼らは僕たちよりももっと練習をしているんだろうか?」と疑問を持ちまして。ドイツは当時から世界の強豪でしたし、指導者ライセンスも整備されていたので勉強に行きました。

ドイツに行って驚いたのは、日本との環境との違いです。日本は学校の部活動でサッカーをしているので、部員が150人いても試合に出られるのはレギュラーの12、3人だけ。トーナメント方式なので、弱いチームであれば年間に2、3試合しか公式戦の場がありません。そのために毎日必死に練習をして...というのが当たり前でした。

でも、ドイツには学校単位ではなく、それぞれの町にスポーツ施設があって楽しむために用意されている。毎週末のリーグ戦で真剣勝負を戦う中で、選手が成長していきます。指導やシステム、戦術にはそれほど違いはなくて、「こんな練習は見たことがない!」というのはあまりなかったです。

幸野 僕も三浦さんと同じで、ヨーロッパの強豪国には秘密の練習があるのではないかと思って、30年前に世界を周りました。だけど、実は秘密なんてないんですよね。僕が海外に行ってわかったのが、いままで日本でスポーツだと思ってやってきたことが、実は体育だったんだなということでした。スポーツは本来楽しむためにあるものなのに、教育の「育」が入ってきた。そこでスポーツに本来必要のない礼節や先輩・後輩のヒエラルキーができた結果、楽しむためにあるスポーツが、いつしか楽しくないものに変わってしまった。日本の場合、学校の部活動でサッカーをするシステムなので、楽しむ部分よりも教育的な面が大きい。いまでもその傾向はあると思います。

三浦 そうですね。僕がドイツで学んだことは、『普通のことを当たり前にやること』です。ドイツ人は自分たちに何ができて、何ができないかを理解しています。できないことはやらないんですね。逆に、自分たちの良さ、強みを活かすことは徹底してやります。テクニックではブラジル人にはかないません。でも勝負に対する気持ちは絶対に負けない。メンタルの強さはありますよね。試合に対する集中力はすごいですよ。

幸野 オンとオフの文化ですよね。オンがあるからオフがある。サッカーの練習にしても仕事にしても、日本は80%ぐらいの力で長時間やる。ドイツを始め、ヨーロッパの多くは『オンのときに最高のパフォーマンスを出すためにオフがある』という考えです。長期休暇をしっかりとったり、残業はなるべくしないなど、社会の仕組みがそうなっています。ビジネスマンもしっかりバカンスをとって、働く時はしっかり働く。そのメリハリが大事で、サッカーにも色濃く反映されています。オンの時の集中力が高くて、最高のパフォーマンスが求められるときにしっかり出せる。日本の選手は、最高のパフォーマンスを出すべきときに疲れてしまっているような気がするんですよね。

三浦 いわゆる強国と呼ばれるヨーロッパの国は、プレーにメリハリがありますよね。ドイツに行って感じたのは1対1の戦いを大事にする文化です。ルーズボールなど、球際の競り合いで弱いと評価されないんです。足元でボールをこねくり回しても、まったく評価されません。僕はオランダにもよく行っていたのですが、ドイツとはまったく違う哲学なんですね。勝つためにプレーするのがドイツ。オランダ人は攻撃サッカーを標榜し、勝ち負けよりも内容を大切にします。その違いにはおどろきましたね。

幸野 ヨハン・クライフの登場以降、オランダは結果だけでなく内容も求めるようになりましたからね。

三浦 ドイツとオランダ、地理的に近いのにサッカーに対する考え方は真逆なんだと、カルチャーショックを受けましたね。個人的には、日本に合うのはオランダだと思います。

幸野 三浦さんが1999年に大宮アルディージャのコーチになったとき、監督はオランダ人のピム・ファーベークでした。彼から学んだことは大きかったですか?

三浦 彼の影響はすごく大きかったです。普段は優しい人なのですが、ピッチに入ると厳しくて。選手を魅きつける力もありました。当時はまだ、ポゼッションという言葉はありませんでしたが、ピムはボールを支配するサッカーを通じて、攻撃的なサッカーに対するイメージを与えてくれました。攻撃ではポゼッション、守備ではゾーンディフェンスをするという、いまでは当たり前のように行われているスタイルですが、当時の僕らが先駆けだったと思います。

幸野 当時、ピム監督の口からポゼッションという言葉をよく聞きました。三浦さんが監督に就任した2000年から、(1)-4-4-2のシステムでゾーンディフェンスをするようになりましたよね。

三浦 いまでこそ『守備のブロックを作る』という言い方をしますが、当時はそのような言葉はなくて、ピムがやってうまくいったので引き継いだんですね。攻撃の基本はボールをキープすること、守備はゾーンで守る。ただ守備に関しては「オランダ人に守備のことは聞くな」という感じだったので(笑)、僕のほうでアレンジしました。

幸野 どのようなアレンジをしたのですか?

三浦 『組織で守る』をベースに、誰がボールホルダーにプレスに行って、誰がカバーに行くか。また、自陣にロングボールを蹴りこまれたときに、どのタイミングでディフェンスラインを下げるか。最終ラインはフラットなので、選手のラインが揃わないとオフサイドがとれません。最終ラインがどのタイミングで上下動するのかを、細かく決めました。マンツーマンで守備をする場面も含めて、決め事はかなりありましたね。攻撃はポゼッションをしながら、相手がボールを追えないほどに走らせる。だから、先制点をとると楽になりましたよね。

幸野 そろそろ時間なのでまとめに入りますが、日本はヨーロッパから離れたところにあり、サッカー面においては地理的なハンデを背負っています。そのなかで強化をするためには、選手や指導者ができるだけ海外に出て行くことが必要だと思います。もしくは海外の選手、指導者にできるだけ来てもらうこと。僕としては三浦さんのように、海外で指導をするというチャレンジ精神を持った指導者が増えていくことを期待しています。

三浦 僕自身、選手として無名だったにも関わらずJリーグの監督になれたのは、当時は海外で勉強した指導者が少なかったとことが理由として挙げられると思います。いま新しくJクラブの監督になる人は元日本代表選手が大半で、プロ選手の経験がない人が監督になるのは難しいですよね。僕が若い頃は、『他の人がやっていないことをやりたい』という気持ちでドイツに渡りました。今回、ベトナムで指導者として働くことは、20代の自分がしたチャレンジと根底でつながっているのかもしれません。

幸野 リスクがあるということは、成功した時の価値も大きいと思います。ちなみに、ベトナム代表ではどんなサッカーをやりたいと考えていますか?

三浦 実はまだイメージがないんです。選手のクオリティを見てみないと決められないですね。8月中旬まで国内リーグを視察して、11、12月はSUZUKI CUP。次にシーズンが始まるのが1月なんですね。9、10、11、12と代表の活動で使うことができます。その意味では、他国の代表チームよりも長く活動できるので、おもしろいなと思います。

幸野 ベトナムではどのようなことを期待されていると感じていますか?

三浦 代表チームを率いるので、まずは結果を求められていると感じています。協会からは長い目でチームを作り、指導者養成の部分でも貢献してほしいと言われています。短期的な結果という意味では、11月に開幕するSUZUKI CUPです。熱狂的な大会なので、ぜひ見に来てください。

幸野 ありがとうございます。三浦さんの新天地での活躍を楽しみにしています。

三浦 がんばります。ありがとうございました。
 
<了>
 
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