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90分間で見せた変幻自在のサッカーが今大会のドイツの強さ

LS_CU02_580.jpgフランスの攻撃を0封したドイツの守護神ノイヤー

(取材・文=らいかーると)

ドイツ1-0フランス

サッカーは相手のあるスポーツだということを象徴するような試合だった。相手の状況に応じて、自分たちのスタイルを変化させる。例えば、バルセロナのように、ボールを保持することで、自分たちのサッカーを変化させる必要のないチームもあるが、ほとんどは試合中に起こる様々な現象に対応してカメレオンのように色を変えなければならない。

それに応じるのは相手だけではない。変化するスコアと刻み続ける時間とも対峙する。残り時間、スコアの状況によって、求められるプレーは常に変化するのだ。この試合、ドイツが見せたカメレオンのような対応力は見事としか言いようがなかった。

■魔の6分間で奮起したフランスの攻撃陣

序盤、フランスは自陣でドイツの攻撃を迎え撃つ慎重な姿勢をとった。ドイツはいつも通り、ゆっくりとしたビルドアップでルーティーン作業を行うかのようにボールを回して隙をうかがう。守備もしっかりと大胆に行っていた。ポイントとなっていたのは、今大会初先発のFWクローゼだった。強烈なプレッシングによって、フランスのGKロリスにバックパスを連発させるように仕向けていた。

その大胆なクローゼのプレスによって、フランスはGKロリスからロングボールを供給する場面が多かった。ドイツのGKノイアーに比べると、キック精度の劣る。彼のキックはボールを相手に渡してしまうことも多く見られた。それがドイツにマイボール率を高めるきっかけにもなる。

フランスは、スタートして6分ぐらい守備に追われた。ドイツは焦ることなくボールを保持するので、フランスはこのまま90分が過ぎ去ってしまうのではないかと錯覚に陥るほどだった。だが、その状況を打開するためにフランスは動いた。そのきっかけを作ったのはFWベンゼマだ。味方からのパスを待っているだけでは何も始まらないので、ドイツのGKノイアーまでプレッシングを仕掛け始めたのだ。ドイツに対してボールを奪い返し、自分たちのサッカーをするという意志を強く表明したのである。

アルジェリア戦でノイアーが再三、ペナルティエリア外への飛び出しを見せたように、そもそもドイツのDFラインは高めに設定している。フランスはDFとGKの間のスペースにロングボールを供給し、ポジショニングを自由に変化させるヴァルブエナを使ったショートパス、中盤のマテュイディの飛び出しによるスペースメイクと自分たちの攻撃を仕掛け、いつもの表情を取り戻していった。

■明確な狙いを定めたフランスの攻撃

しかし、先制したのはドイツだった。前半12分にセットプレーであっさりゴールを陥れたのだ。この早い時間帯でのゴールが与える影響は、フランスにとっては少ないはずだった。だが、刻一刻と時は過ぎていくにつれ、リードされているフランスは徐々に苛立ちを大きくする。その原因は効果的にボールを奪えないことにあった。相手陣内の深いエリアまで飛び出せば、ノイアーがこの日右サイドバックの位置に入ったラームにピンポイントのロングパスを通す。センターサークル付近からプレッシングを行えば、プレッシングを外されてMFとDFの間のスペースを狙われたのだ。

この日、フランスのFW陣は自分の仕事以上のことをしなかったが、MF陣は自分の仕事以上のことをしようと努めた。しかし、周りの味方を巻き込むほどの勢いと推進力をもたらすことはできなかった。ボールを保持している選手やボールを受けようとする選手に気を取られ、彼らMF陣のポジショニングが消極的になってしまった。DFの前のスペースを埋めてドイツの攻撃に対応していたにもかかわらず、攻撃に関しては効果的な仕掛けまで行えなかった。一方で、ドイツは時間と共にポゼッションからカウンターへと攻撃のスタイルをシフトし、臨機応変に姿を変えた。

時間が過ぎていくと共に、先制に成功したドイツはワントップのクローゼを含めて守備に力を注いだ。相手がGKとDFの間のスペースを狙っているならば、DFラインを下げることで、そのスペースを消してしまえばいい。そのドイツの変化に対して、フランスもDFラインが下がる前に自陣の深い位置からでもロングボールを蹴ることで、自分たちの攻撃の狙いを継続させようとプレーする。

ロングボールによる攻撃は、速攻と表現してもいい。フランスの速攻に対して、ドイツの面々は自分のゴールに身体を向けながら帰陣することになった。当然、帰陣と同時にボール、味方、相手、スペース、ゴールを視野に入れながらプレーすることは難しい。フランスはその難しさを利用するために、マイナスのクロスを多用する攻撃を仕掛けた。

■フランスの攻撃にきっちり対応したドイツのうまさ

前半に見事なポゼッションを披露したドイツに残された時間は45分。守り切れば、8チームで最も早くベスト4進出が決定する。だから、後半は相手の狙いを消すことを優先した。前線から守るのではなく、DFラインを下げて守備をすることを選んだ。具体的には、アンカーのシュバインシュタイガーと中盤のケディラを横に並べることで、フランスのマイナスのクロスに対応した。

だが、冒頭で述べた通り、サッカーは相手のあるスポーツである。フランスも戦術に変化をつけた。ヴァルブエナは中央から左サイドに常駐するようになり、マテュイディはさらに前線を追い越す動きを実践し始める。さらに、SBのエブラも明らかに攻撃参加を増やすことで攻撃的な姿勢を押し出した。フランスの狙いは右サイドバックのラームだった。前半に高いポジショニングで攻撃の起点になっていた彼に守備にさせることで、攻守にラームサイドの制圧をはかった。

そのフランスの狙いに対して、ドイツもロングボールからのカウンター、セカンドボールを拾ってから相手を押し込める形で攻撃を仕掛けた。だが、アルジェリアと延長戦での体力的な影響からか、単発で終わってしまう。フランスはラームの大外からグリーズマンが飛び出したり、マテュイディとヴァルブエナのワン・ツーを決めたりと、自分たちが狙った攻撃を徹底して実行した。

守備面でさらなる変化を迫られたドイツだが、今大会はそこで柔軟性を発揮できるうまさを持ち合わせている。疲れの見え始めたクローゼの代わりにシュールレを投入し、前線からのプレスとパスを引き出すために新たなカードを切った。アルジェリア戦では見事に試合の流れを変えたシュールレ。この日はラームを助け、攻守にダイナミックな動きを見せてレーヴ監督の期待に応えた。

その後、フランスはレミーを入れて、右サイドからの攻撃にも取り組むも、中盤のキャバイエが交代でいなくなったことで、ドイツのプレッシングを交わすことができなくなった。最後に、FWジルーを入れてパワープレーに願いを託すもドイツが落ち着いて対応。時間と状況に応じて臨機応変に戦術を変えられる懐の深さを見せつけたドイツは、この試合であらためて今大会の優勝候補の一角であることを証明した。

<了>


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