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ゴールを奪う、守る。日本の育成現場で見失われがちな『サッカーの本質』

海外の指導者に日本の印象を聞くと、「選手のレベルは高い」「日本ほど指導者が勉強している国はない」という声は少なくありません。しかし、少なからず今回のワールドカップでも感じられた『世界との差』は、どこにあるのでしょうか?

今回は、イングランド、オランダ、ドイツなど様々な国で指導者として活躍し、国内でも横浜F・マリノスやFC東京など豊富な指導経験を持つ平野淳さん(ファンルーツアカデミー代表)にインタビューを行いました。

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Photo:IMG_8358 / okebaja

■"サッカーの本質"を捉えた欧州のトレーニング

インタビューの冒頭、平野さんに「日本の育成年代に足りていないものは?」との質問をぶつけると真っ先にこんな答えが返ってきました。

「日本の育成年代に一番足りないのは国際経験だと思います。おそらく日本人の選手個々のタレント性や、指導のノウハウは世界的にみても優れています。ただ、欧州は、たとえば、ドイツは30分圏内にオランダやベルギーがあって、飛行機に2時間乗ればスペインにも行ける。国際大会もカテゴリー問わず色々とある。そういう環境が日本人には足りていません。

それを補おうと日本の子どもたちが海外遠征をすると、現地のプレーの感覚にようやく合ってきた頃に帰国しなくてはならない、というパターンがほとんど。そのプレーの感覚の違いというのは、単純にいえば、ゴールへの意識と、球際の強さ。特に、球際の強さは海外遠征を経験した日本人の選手たちが口を揃えるところです」

現在、欧州の育成現場を牽引しているのはオランダだと平野さんはいいます。

かつてバルセロナはオランダのアヤックスから育成手法を学びました。いま、若手が台頭するなど育成面でも成功しているドイツも、オランダ協会と提携するなど積極的に学んでいるのです。

「欧州の育成メソッドのベースはオランダにあります。そのオランダ流のトレーニングにはゲームをキーワードに置いており、その中で『ゴールを奪う』、『ゴールを守る』という要素が大前提として念頭に置かれている。それらの要素が、サッカーの本質の部分だと捉えられているからです」

そう平野さんは強調します。

「ところが、日本の指導現場では、サッカーの本質を見失い、ある技術的な一部分を切り取った指導をしているケースがしばしばあります。私がドイツや日本で一緒に仕事をしている元1.FCケルンの育成部長クラウス・パブストも同じことを指摘していました。

もちろん、指導者によって差はあるし、日本にも素晴らしい指導をされている指導者もたくさんいます。欧州に比べて日本が劣っているという言い方はあまりしたくありませんが、たとえば、日本ではインサイドキックの指導を細かく切り取りすぎてしまうようなケースも見受けられるのは事実。『しっかり面をつくって』『蹴るときの足の角度はこう』という"細かすぎる指導"です。

欧州にもマニュアルに偏った指導をする指導者もたくさんいるのですべてを肯定するつもりもありませんが、欧州では、インサイドキックの技術を細かく指導することよりも、やはり、ゴールを奪う、守るといったサッカーの本質の部分を念頭に置いて指導するのが大事だと考えられているのです」

たとえば、二人一組の対面パスの練習を行うにも"サッカーの本質的な部分"は意識されています。

「『2秒以内』『2タッチ』などというルールが設けられることもあります。実際のゲームではパスを受けてから考えている時間はありません。そこには『できるだけ早いリズムで相手にボールを返そう』という意図があり、受けたボールを2秒以内で相手に返すとなれば、ファーストタッチは必ず良いところにコントロールしなければなりません。

さらにパスを出す相手のことも考えないとパス交換のリズムが崩れてしまう。単純な対面パスの練習にプラスαの要素を入れることで実践を意識させているのです」

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Photo:ING Ballenjongens en -meiden Selectiedag met Bondscoach Louis van Gaal / ING Nederland

■選手の集中を削がない"一貫したオーガナイズ"

また、平野さんは「欧州ではトレーニングのオーガナイズの一貫性もしっかり意識されている」と指摘します。

「これが日本の場合、もちろん指導者にもよりますが、たとえば、ウォーミングアップのオーガナイズが終わったら、次は、オーガナイズを変えて別のトレーニングに移行する、といった指導風景がしばしば見受けられることがあります。が、この点について欧州はといえば、先ほどのクラウスなどは、はじめは単純なターンのドリルワークから始まっても、ターンに徐々に様々なバリエーションをつけて、さらにはターンをする時間制限を設けてリレー形式にしたりします。

そして対人の要素を入れて、さらにゴールをつけて実践を意識させて、最後に4対4や5対5のミニゲーム。そのようにトレーニングを一貫した流れの中で行います。

欧州の指導風景では、単純なトレーニングから始まって、練習が終わる頃には複雑なものになっていることがほとんど。その単純なトレーニングであっても、徐々に相手がいて、ゴールがある、という状況に発展していくのです。だからこそ、子どもたちは常にボールの置き方を意識しないといけないし、ゴールへの意識を持たなくてはならない状況があるというわけです」

すべてはサッカーの本質の部分を捉えてトレーニングを構成しているからこそでしょう。平野さんはさらにこう続けます。

「欧州でも育成年代のエキスパートであるクラウスはこう強調しています。『子どもは負けず嫌い。だから、必ず人やゴールをつけて、子どもたちに競わせる要素を入れてあげると、どんなトレーニングでも飽きずに90分間、集中してやってくれる』と。子どもたちの内面的なところまでしっかり見ながら、うまくトレーニングを構成して子どもの積極的な姿勢を引き出せる指導者はそう多くはありません」

欧州では、アベレージ以下の指導者の質を底上げしようと各国で試行錯誤しています。一方、日本の育成現場では、指導者各々が氾濫する情報のなかから、それぞれが試行錯誤してもがいているのが現状かもしれません。進むべき方向性を見極められないでいる指導者もなかにはいるのではないでしょうか。

では、平野さんが考える、指導力を向上させるために、まず取り組むべき第一歩とは何なのでしょうか。

「指導者は何よりもゲームを見るときの観察力がないといけません」
平野さんはそう指摘します。次回で詳しく紹介します。


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平野 淳(ひらの・じゅん)
大学卒業後、欧米にコーチ留学。UEFAライセンスをはじめ、イングランド、スコットランド、オランダ、ドイツ、米国などで指導者ライセンスを取得。横浜F・マリノスやFC東京などJクラブのジュニアからユース年代の指導に携わったほか、海外でも子どもたちの指導経験を持つ。現在はファンルーツアカデミーおよびFCトレーロスの代表を務め、国内外で普及活動を展開している。


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育成改革によりEURO2000の惨敗からたった10年で復活を遂げたドイツ。個の強さにテクニックと創造性を備え、全員が走ってパスをつなぐ最強の「モダンフットボール」へと進化しました。名門1. FC ケルンの育成部長も務め、多くのブンデスリーガを育てたクラウス・パブストがその最先端トレーニングを伝授。U-12指導者向け教材『モダンフットボール【MODERNER FUSSBALL】』
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