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強さの秘密は1対1にあり。UEFA A級ライセンス保持者が語る、ドイツの育成(後編)

過去3度のW杯優勝、4度の準優勝の成績を残し、ゲリー・リネカーをして「最後に勝つのはいつもドイツだ」と言わしめるドイツ。ブンデスリーガも好調で、ワールドカップベスト8に残ったチームの中で、もっとも多くの選手を輩出したリーグでもある。では、なぜドイツはこれほどまでに勝負強いのだろうか。UEFA A級/ドイツA級ライセンス保持者の三枝寛和氏に話を聞いた。

9639894473_a6dd181957_o_580.jpg鈴木智之(取材・文) Photo by yose chateauvert


■ドイツ人が重要視する"ツバイカンプフ"


サッカーはスポーツだが、"闘い"の側面もある。ブラジルワールドカップで繰り広げられた死闘の数々は、『ただボール扱いが上手いだけでは、勝つことができない』というサッカーの真理を教えてくれた。闘いの局面が顕著になるのが、球際の争いやドリブルでの突破など、1対1の場面だ。ドイツでは1対1を"ツバイカンプフ(2人の戦い)"と言い、重要視している。三枝氏は語る。

「ブンデスリーガのテレビ放送の中に、両チームの選手の1対1の勝敗がデータとして表示されることがあります。指導者ライセンスの講習会時に、様々な試合データを分析することがあったのですが、ボール支配率やシュート数などは、試合の勝ち負けにそれほど因果関係はありませんでした。唯一、局面での1対1の勝率が、試合結果と関係があることがわかりました。もちろんデータなので、カウントの仕方による差異はあるとは思いますが、興味深いデータであることは間違いありません」

1対1の局面では、だれの目にも勝敗が明らかになり、勝ち負けもはっきり出る。高校年代のチームを指導する三枝氏は「日本の高校年代のトレーニングに、1対1を戦略的に取り入れてもいいのでは」と提案する。そのひとつがチーム内での1対1リーグ戦だ。

「1対1をするグリッドを作り、1試合30秒で行います。試合数は1日1試合を基本とするのが良いと思います。年間を通して1対1のチャンピオンを決めるのも良いですし、1日2、3試合(試合間隔は3分間程度で完全レスト)で3~4ヶ月単位で勝敗を競い、1部リーグと2部リーグに分けて、昇格や降格を味あわせるのもおもしろいと思います。さらに、ホーム&アウェーという形で対戦形式を2回にし、分析してトレーニングをする期間を設けるのも良いですよね。練習で時間を作るのが難しければ、朝練や昼休み、練習後の短い時間でできる環境を作れば可能だと思います。1試合30秒ほどなので、グリッドを複数作って同時進行で行えば、短時間で終わります」

具体的なアイデアとしては非常におもしろい。審判を置き、勝敗を記録することで選手たちのやる気もアップし、1日1試合しかないので、『この場面ですべてを出し切る!』 と強い気持ちで臨むことにもなる。

「一般的な高校生で、『1対1+GK』であれば、グリッドの広さは24m×14m程度で、あとは選手のレベルに合わせて大きさを変え、負荷を調整します。1対1はトレーニング負荷が高いので、1試合、長くても30秒に設定します。突破に行くプレー、ボールを奪いに行くプレーが大切なので、ミス待ちやディレイはさせず、オフェンスもディフェンスも自分から仕掛けさせます。チームにGKが少ない場合は、グリッドを20m×12mにしてゴールゾーンを設け、そこでボールを止めたら一点とするなど、方法はたくさんあります。1対1の勝敗を順位表にして張り出して、練習試合のポジションを決めるのもおもしろいですよね。練習での真剣勝負の積み重ねが、勝利に対する強いメンタルにつながっていくのだと思います。」

■1対1の強さが選手の評価に直結する

1対1の結果が試合出場につながるのであれば、トレーニングの緊張感や密度は高まっていく。さらに他の選手のプレーを観察し、分析するのも良いトレーニングになる。スマートフォンで動画を撮り、練習後に振り返るのも効果的だ。次の対戦相手の分析をする選手が出てきたら、このトレーニングの大きな成果だろう。プレーの分析眼を養い、自分のストロングポイントを生かすプレーを考え、自主練をする環境になれば、チームや個人の成長にもつながっていく。

「サッカーはチームスポーツです。11対11で行うので、試合の勝敗に対する責任は分け合うことができます。しかし、ゴール前での1対1の場面など、ひとつのプレーが勝敗に直結することもあります。1対1で勝つことを追求することは、選手個人のプレーに対する責任感を高めることにもなると思います。1対1で大切なのは、華麗な突破だけではありません。強引に突破して、打ったシュートが相手に当たって入ることもあります。相手をブロックしながら突破してシュートを打つ技術、競り合いの中で身につける体の使い方などたくさんあります。守備の面では、リスクを冒して奪いに行く場面と、セーフティなプレーを覚えること。一人でボールを奪いきることやスライディングタックルの技術など、1対1のトレーニングで学ぶ部分は多岐にわたります」

ブラジルW杯の日本代表の戦いを見て、数的有利を作ってボールを奪うプレーだけでなく、同数や数的不利の状態であっても、"1人でボールを奪い切る能力"の必要性を感じた人も多いだろう。また、数的不利でも突破に踏み切るメンタリティ、テクニックの重要性もしかりである。そのための第一歩が1対1のトレーニングだ。そして、1対1の状況において「目の前の相手に勝ってやる」という強いこだわりや気持ちを持ってプレーする習慣をつけさせること。これも選手を成長させるために、指導者がすべき重要なアプローチだといえるだろう。

<プロフィール>
三枝寛和。渋谷教育学園渋谷中学高等学校サッカー部顧問。大学卒業後、ケルンスポーツ大学で学ぶ。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス、UEFA公認A級ライセンス保持。


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