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『海外クラブで働くということ』SVヴェルダー・ブレーメン鍼灸トレーナー・鈴木友規インタビュー(後編)

日本を離れ、ヨーロッパや南米で活躍する"サッカー人"は選手だけに限りません。指導者やクラブスタッフなど、サッカーに関わる仕事は多岐にわたります。今回はドイツ・ブンデスリーガ1部、SVヴェルダー・ブレーメンで働く、鈴木友規氏にご登場頂きました。彼の仕事はヨーロッパや南米の国ではほとんどお目にかかれない、鍼灸トレーナーです。後編では「海外のクラブで働くときの心構え」などについて、話して頂きました。(取材・文・鈴木智之)

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4546869334_c1c68abb0d_o__580.jpgPhoto by Benjamin Radzun Training 23.04.2010


――1週間の仕事の流れはどのようなものでしょうか?
朝8時にクラブハウスに行くのですが、その時間からドクターがケガ人を集めて診察をするんですね。リハビリの中の選手がいたら、いまの状況はこうで、こういうメニューをやろうといった形で、選手の状態をチェックします。そこで、今日はトレーニングに参加する、しないを判断します。それが終わったあとにフィジオセラピスト(トレーナー)と話をして、いつ私のところに選手が治療に来るかを決めます。仕事のメインは治療で、一日に約5、6人を診ます。

――治療以外の時間は何をしているのですか?
ケガをしていない選手とのコミュニケーションも大切だと思っているので、ケガ予防についての話などをしています。ドイツの選手は、日本の選手と比べるとケガを予防する意識がそれほど高くはないんですね。いまは週に1回の頻度で診察に来てくれる選手や、なかには毎日来る選手もいます。

――ケガの予防とは、どのようなことをするのでしょうか?
選手の体を診て、「関節のこの動きがスムーズではないから、ケガにつながりやすい」などのアドバイスをします。選手にベッドに寝てもらって、右足と左足を片方ずつ上げて、「右足の方が上がりにくい」や、ひざを曲げたときに「左足が固いね」など、気になるポイントを伝えて、それを良くするためにはこういうことをしよう、ここに気をつけようといったことを伝えています。

――日本の選手とドイツの選手で、ケガの種類が違うことはありますか?
多少はあります。日本の場合、外傷で一番多いのが足首のねんざなのですが、ドイツではそれほど多くはありません。一方、日本に比べて、ドイツのほうが、ひざのねんざやひざの靭帯、半月板損傷は多い印象があります。これは私の考察なのですが、ドイツ人は身体が大きいので、芝に足をしっかりと踏み込んで動きます。体重が足に乗り、芝に固定された状態で無理な動きをしようとして、ひざをひねるケースはよく見かけました。ドイツのグラウンドは芝が長く、地面が緩いのでしっかりと踏み込むことが必要です。ドイツで苦労をする日本人選手は、踏ん張る習慣がないので、ボールを蹴る動きがスムーズにできないという話を聞いたことがあります。日本のきれいな芝や人工芝でやっていると、無理をしなくてもボールを蹴ることができるので、ピッチ環境が悪くなると差が出るのではないでしょうか。

――働く環境について、日本との違いを感じることはありますか?
最初にクラブに入ったとき、教育してくれる人や新人を導いてくれる人もいないので、自分からアクションを起こさない限り、なにもすることがありませんでした。治療の段取りにしても、ドクターやフィジオが何を考えているかを先回りして考える、洞察力はつきましたね。ドイツ語が理解できない時期は、いまチームで何が起きていて、自分は何をしなければいけないかを感じ取って行動をしなければいけません。ここにいたら、いろんな意味でタフになるなと思いました(笑)

――今後、めざすビジョンは?
プロの世界は先が約束されている場所ではないので、やるべきことをやって、監督や選手、スタッフの信頼を得ること。そして、自分の居場所を作ること。それは一年目から変わりません。最初はあいさつすらされませんでしたから。

――その中で、どうやって選手やスタッフと信頼関係を構築していったのですか?
仕事で結果を出して、目の前の人からの信頼を得ることはもちろんですが、それ以外にあいさつはひたすらしていました。ドイツに行った当初は話すことのできる言葉が限られているわけです。一人と長時間話す語学力もないので「おはよう」「元気?」を、全員に言おうと思って。渡独当初、何を頑張っていたかというと、あいさつですね。あとは「ありがとう」「ごめんなさい」とかをしっかり言う。自分ができること、やるべきことはしっかりやろうと。あとは、ひたすら現場に足を運ぶことですね。チームで何が起こっているかを知りたかったんです。最初の頃は、次に何が行われるかがわからないことが、こんなに不安なことなのかと思いましたね。

――それは、トレーニングの一日の流れなどですか?
そうです。キャンプに初めて帯同したときは、その日に何が行われるか、まったくわからないんです。だれも、何が行われるかは教えてくれません。もちろん、自分から聞きに行けば教えてくれるのですが、気を利かせて教えてくれることはないので(笑)。何時にどこに集合するのかとか、その都度聞いていましたね。

――最後になりますが、海外で働きたい人に向けて、メッセージがありましたらお願いします。
興味本位で行くには、リスクはあると思います。大変なこともたくさんありますから。現地のクラブで働くためには、現地の文化の中で、自分の良さを出さなければいけません。日本で仕事をするときよりも、柔軟性や忍耐力は必要だと感じましたね。ただ、日本人はその能力はかなり高い方だと思いました。僕自身、いろいろな人に助けてもらいながら、ブレーメンで働くことができています。こうすれば海外のクラブで働くことができるという道はなくて、人それぞれだと思いますが、一生懸命やれば、なんとかなるというのも伝えたいですね。

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【プロフィール】
鈴木友規(すずきともき)。SVヴェルダー・ブレーメン鍼灸トレーナー。アスレティックトレーナー、鍼灸按摩マッサージ指圧師。専門学校卒業後、川崎フロンターレの育成部でトレーナーとして活動し、2012-13シーズンよりブレーメン所属。

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