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心と体の緊張は繋がっている!選手に自然体を維持させるコーチングとは? 高椋浩二(アレクサンダー・テクニーク講師)

「心身一如」という言葉がある。肉体と精神は一体のもので、決して分けることはできないという意味だ。宗教的な側面が強く、仏教やヒンドゥー教でその教えが広められていたという。(取材・文/中村僚)

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■全身に影響を与える「後頭下筋群」

この言葉は科学的にも根拠があった。アレクサンダーテクニーク講師の高椋浩二さんはこう語る。

「人間には後頭下筋群という箇所があります。体の中でもっとも背骨に近い場所にある、とても細かい筋肉です。この筋肉は心の動きにとても反応しやすく、手先足先まで、全身に影響を与える筋肉です。例えば、恐怖や驚き。突然恐怖を感じたとき、とっさに首を縮めていませんか? これは体を守るために、首を固めて身を守る反応です。恐怖を感じることで首を固め、それが全身を固めることにつながっているのです」

「心と体はつながっているとよく言われます。心が緊張しているから首が固まってしまうとも言えますし、首が固まっているから心が緊張することも起こります」

恐怖や驚きは、サッカーの場面でも多くの心当たりがある。

「例えばゴール前の決定的な場面。『これを決めれば勝ち抜け、絶対決める!』と意気込み、首をほんの少し固めるだけで、普段の動きは失われてしまいます。その結果、枠を外すようなシュートになってしまいます。逆に言えば、自分の首が固まっていると自分で気付けるようになれば、そういった無意味な意気込みや緊張を防ぐことができるのです」

■指導者の声が選手の緊張を生む

首を固めてしまう原因には、相手からのプレッシャーや、試合の重要度に比例した緊張感など、さまざまなものがあるだろう。そしてそのひとつに指導者からの指示もあるかもしれない。これは私たちが多いに見直したい点だ。

「ボールを良く見て。ミスをしないように、丁寧にプレーしよう」

この言葉は、選手にプレッシャー、つまりはミスをすることへの恐怖を与え、首を固めさせることにつながっている。首を固めることの影響は、先に述べた通りだ。指導者がよかれと思って口にしている言葉も、実は選手に無用なプレッシャーを与えているのかもしれない。そして、この指示による首の状態の変化を認知できる指導者は少なく、また自覚できる選手もほとんどいない。

「心と体は外からさまざまな刺激を受けて緊張します。それは当然の反応なので、首が固まってしまうのは仕方のないことなんです。しかし、そこから抜け出さない限り、同じミスを繰り返してしまいます。緊張から抜け出すには、まずは自分で気付くこと。『あ、いま緊張してるな、首固まってるな』と気付ければ、試合の中でも自分でプレーの質を変えていくことができるのです」

では、実際にどうやって自分の緊張に気付くのか? また、緊張させずに自然なプレーを引き出せる指示は、いったいどのような声なのか? 高椋さんは、選手の意識を外に向けさせ全体を把握させる声の掛け方や、背骨の位置を気付かせ緊張を解くエクササイズを教えてくれた。

実際の動きについて詳しく知りたい方はCOACH UNITED ACADEMYにご入会ください。


高椋浩史
大学時代は筑波大学蹴球部に所属。毎週少年サッカーの指導を行う中で、選手が伸び伸びと自分の力を発揮するためにはどのような指導をすればよいかというこ とを探求し始める。卒業後は一般企業に就職するが、好きなサッカーに関わっていきたいという思いから退社し、筑波大学大学院に入学しサッカーコーチ学を学 ぶ。日本サッカー協会の指導者養成コースの補助員を行い、日本のトップコーチ陣の指導を間近で見て学ぶ。2001年から2年間、青年海外協力隊員としてバ ングラデシュへ赴任。サッカーを指導する。そこで出会った人たち、特に肉体労働をしている人たちの身のこなしの美しさや強さ、精神的なたくましさ、人間的 な器の大きさなどに衝撃を受ける。探求をしていたカラダの使い方のお手本のような人達をみて、自分もカラダの使い方を教えることができるようになりたいと 思い、様々な身体鍛錬法やメソッドを学んだなかで最後に出会ったのがアレクサンダー・テクニークであった。2006年からはBODYCHANCE教師養成 コースで学び始め、2010年に認定を受け教え始める。2012年11月に吉祥寺にアレクサンダー・テクニーク教室FUN!を設立、現在に至る。

スポーツが上手くなる姿勢レッスン/COZY アレクサンダー・テクニーク