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ユース年代識者・川端氏が見た「ユース世代のサッカーのピリオダイゼーション」

11月19日(水)、ワールドフットボールアカデミー(WFA)によるWEBセミナーが開催された。世界最高峰と呼ばれるフェイエノールト・ユースアカデミー(オランダ)を築き上げたレイモンド・フェルハイエン氏による今回の公演は、テーマは「ユース世代のサッカーのピリオダイゼーション」。このユース世代が主題のセミナーを、日本の育成年代をよく知る識者・川端暁彦氏が視聴し、その見解を述べる。(文・川端暁彦 写真協力・WFA/B Mlry

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■"12カ月の差"を解消し、タレントを発掘

 ワールドフットボールアカデミーの「ユース世代のサッカーのピリオダイゼーション」と題した同アカデミーのCEO、レイモンド・フェルハイエン氏のウェブセミナーを受講させてもらった。

 フェルハイエン氏がフェイエノールトのアカデミーでの経験などを踏まえつつ語った1時間半の熱弁は、ユース世代のコンディショニング、週間スケジュールの設定方法、練習時間をコンパクトにすることの意義、実際のトレーニングメニュー、その組み合わせ方、あるいは指導のフィロソフィーに関わる部分など多岐にわたり、そのすべてを紹介するのは難しい。ここでは、セミナー全体で個人的に強く印象に残った「タレントの発掘」に関しての考え方を紹介させてもらえればと思う。

 一般に日本で選手の年齢的なカテゴリーを捉える「学年」だろう。オランダでもその点は大差なく、1月1日を区切りとして(つまり大会カテゴリーの区切りである)「別の年齢の選手」となる。だが、ユース年代においてはここに難しい問題が生じているとフェルハイエン氏は指摘する。たとえば、「1月生まれのプレーヤーと12月生まれのプレーヤーの間には"12カ月の差"が存在している」というわけだ。

 極端な話をすれば、12月31日に生まれた選手と1月1日に生まれた選手の間には「1日」しか年齢的な差はない。しかしこの二人は「違う年齢の選手」として扱われることになる。12月生まれの選手は最大で12カ月の年齢差がある選手たちと「同じ年齢」として比べられる一方で、1月生まれの選手は「最大12カ月のアドバンテージ」を得た中で活躍するようになっていく。すると、1月生まれの選手が「タレント」と見なされやすい一方で、12月生まれの選手の才能は不当に低く評価されるようになってしまう。

 逆に言えば、出生日を意識することで「不当に低く評価されているタレント」を発掘・獲得する機会を得られるということでもある。フェイエノールトでは出生月に応じて4つのカテゴリーに選手たちを分割し、その評価をしていたという。すなわち、「1-3月生まれ」「4-6月生まれ」「7-9月生まれ」「10-12月生まれ」の4カテゴリーに分けて、それぞれセレクションを行って、同数を採用することとした。

 単純にユース世代の強いチームを作ることを目的とするなら、こうした形は必要ない。ただ、フェイエノールトのアカデミーが目指しているのはあくまでもトップ選手の養成だ。タレントを逃さぬために、こうして年齢を分ける工夫を行っていた。

 フェイエノールトでは毎年9月~2月を翌シーズンに向けた選手発掘のスカウティングにあて、3月~5月を上部カテゴリーに選手を昇格させるか否かの判断に宛てていたそうだが、そのいずれもがこの出生月カテゴリー別に行っていたというのだから徹底している。セレクションのためのトレーニングもゲームも、すべて「誕生月別」にすることで、より厳密なタレントの評価を図っていたわけだ。

 フェイエノールトではU-15→U-17とカテゴリーが上がる段階で少なくとも50%の選手が上がれないことになるそうだが、そうしたシビアな環境だからこそ、「誰が真のタレントなのか」は厳密に判定される必要があるということだろう。「このタレントとタレントを比べたときに、二人は何歳差なのか?」ということではなく、「何カ月差なのか?」というところまで突き詰めて比べているところに、徹底がある。

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■評価を間違われたタレント

 レアル・マドリードのスカウティング部門も出生月を重視するそうだが、あくまで「学年」で考える志向の強い日本ではまだまだ馴染みが薄い発想だろう。だが3月生まれの高校1年生と、4月生まれの中学3年生の間には絶対的な年齢差があるように感じられても、実際には1カ月の年齢差しかないのだ。この発想ができるかどうかで、結構な差が生じてくるのではないか。

 Jリーグでもプロ野球でも選手の出生月は明確に偏っているが、そこには「評価を間違われたタレント」の存在が見え隠れする。

 現在、最も日本サッカー界のエリートが集まっていると言われるJクラブのユースチームは、如実にタレントの出生月に偏りのあるクラブが多い。ジュニア(U-12)、ジュニアユース(U-15)年代からの持ち上がり選手の割合が多いクラブは特にこの傾向が強くなりがちで(小学校6年生時のセレクション結果をそのまま引っ張る面が強いからだ)、たとえば名古屋グランパスU18のJユースカップ登録選手37名の内、実に22名が4~6月生まれの選手たちである。フェイエノールトなら全体の25%に制限される選手が、59.8%を占めていることになる。これは月を追うごとに、7~9月生まれが24.3%、10~12月生まれが10.8%、1~3月生まれが0.5%と激減していくことになる。

 フェルハイエン氏が指摘する「最大12カ月の差」を無視して、「同じ年齢」の選手として比べれば、フィジカルアドバンテージを得やすく、精神的にも自信を付けやすい「より年を取った」出生月の早い選手たちが高い評価を得やすくなるのは半ば必然だ。

 近年、Jクラブのアカデミーに対する評価として、「高校年代で選手が伸びない」という声が聞かれるようになっているが、「伸びない」のではなくて「伸びるのが早かった」選手を獲得し、「真のタレント」を逃してしまっているのではないかという疑念が浮かぶのは自然なことではないだろうか。

 もちろん、出生月だけで機械的に選手の早熟・晩熟が判断できるはずもなく、そこに複合的な判断が必要になってくるのは言うまでもない。ただ、一つのやり方、タレント発掘の方法論として、「この選手は何月に生まれて、あの選手とは『何カ月の差があるのか?』」を考えることは、意義のあることではないだろうか。

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川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、サッカー専門紙『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画(2004年10月創刊)。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年よりフリーランスとしての活動を再開。現在は『エル・ゴラッソ』、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『月刊サッカーマガジンZONE』『ゲキサカ』などへ寄稿。2014年5月より『J論』編集長も務めている。

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