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湘南ベルマーレ 曺 貴裁監督 特別講義(前編)「ポゼッションとカウンター」

2010年南アフリカW杯。スペイン代表はポゼッションサッカーでこの大会を制し、初優勝を遂げました。2014年ブラジルW杯で優勝したドイツ代表は、カウンターとポゼッションを併用し、タイトルを獲得しました。現在のサッカーの潮流は、2つの戦術を組み合わせるものへとの推移しています。2014年J2リーグを制した湘南ベルマーレの曺 貴裁(チョウ・キジェ)監督も、カウンターを第一の選択肢と考えながらも両スタイルを併用させ、チームをJ1復帰へと導きました。『カウンター』と『ポゼッション』。その使い方を、曺 貴裁監督が指導して下さいます。(取材・文/河合 拓 photo by himanisdasGlobovision

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サッカーの局面は、大きく分けて『攻撃』と『守備』という2つの展開から成り立ちます。一般的に、ボールを持っているチームが『攻撃』をする側であり、ボールを持っていないチームが『守備』をする側となります。さらに『攻撃』という局面も、2つに細分化することができます。それが、『ポゼッション』と『カウンター』です。では、『ポゼッション』『カウンター』とは、具体的にどのようなプレーでしょうか。

『ポゼッション』は日本語に訳すと『保持』となります。守備陣形が整っている状態の相手のマークを、パスをつなぎながら、一つひとつはがしていく攻撃のことです。一方、『カウンター』は直訳すると『速攻』です。こちらは相手の守備が整っていない状況のうちに、可能な限り素早くフィニッシュに持ち込む形です。

『ポゼッション』という言葉が注目を集めるようになったのは、ジュゼップ・グアルディオラ監督が率いたバルセロナの影響が大きいでしょう。ショートパスをつなぎ、相手の守備を崩して、ゴールを陥れたスタイルは、世界を席巻し、2度のクラブW杯優勝に輝きました。さらに、そのチームをベースに構成されたスペイン代表も、2010年の南アフリカW杯で初めて世界王者に輝いています。

以来、世界的に『ポゼッション』を高めていく流れが強まっていきました。ところが今シーズン、圧倒的な強さを見せつけてJ2リーグを優勝した湘南ベルマーレの曺 貴裁監督は「うちは、カウンターアタックが優先順位の一番です」と言い切ります。『ポゼッション』は、あくまで『カウンター』ができないときのオプションであり、『ポゼッション』する中でも、常に最短でゴールを狙える『カウンター』を狙うことをチームに意識付けていると言い、「これが『湘南スタイル』の大事なポイントです」と、続けます。

常に『カウンター』という名のナイフを相手に突きつけておく。そのためには、選手たちにどのようなアプローチをとればいいのでしょうか。曺 貴裁監督は、「選手たちのチャレンジを咎めなかった」と言います。

たとえば、中盤でボールを持った選手が顔を上げたとき、最前線のFWが相手のマークを外す動き出しを見せました。中盤ですから、近くには他の味方もいる状況です。ここでボールを保持した選手には、

①最終ラインの裏にロングパスを蹴る。
②近くにいる味方にショートパスを蹴る。

と、2つのパスの選択肢があります。

それぞれのメリット、デメリットを挙げると、

①一気に相手のゴールを狙えるが、精度が低い。
②ボールを失う危険性は低いが、相手に守備陣形を整えられる。

と、なります。
 
そもそもサッカーは、最初に示したとおり、『攻撃』と『守備』という2つの局面から成り立っています。得点を挙げられる『攻撃』を90分間続けて、『守備』をしないことが、もっとも理想的な展開といえるでしょう。

攻撃を続けるためには、ボールを持ち続けなければいけません。そうなると、②の選択肢が正解となりそうですが、曺 貴裁監督は①にチャレンジしてボールを失ったとしても、「ボールを奪ったあとに、なぜ、またすぐに失うようなことをするんだ!」と、選手たちを責めたことは一度もなかったと言います。

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「2010年のW杯あたりから、ボールを動かすことは主流になってきました。しかし、2014年のブラジルW杯で優勝したドイツ代表を見てもらえば分かるように、『カウンターアタック』というナイフを右手に持ちながら、左手には『ポゼッション』というナイフを持って、両方の刃で相手を切りつけないといけません」

『カウンター』だけでは、帰陣のスピードが早い相手を崩せなくなり、逆に『ポゼッション』だけでは、攻撃にメリハリが付かずに対応されてしまいます。そのため、曺 貴裁監督は、『ゴールを奪う』という目的に沿った『カウンター』を常に狙わせ、それができないときに『ポゼッション』することで、再び『カウンター』を仕掛ける機会をつくり出せるチームづくりをしてきました。

実際、湘南は『カウンター』が強調されていますが、シーズン後半戦に入ると対戦相手の帰陣が早くなり、ボールをつないで相手を崩さなければならない局面が増えました。その際には、スペイン代表のように、パスをつないで相手の守備をはがす『ポゼッション』が不可欠でした。

「今のサッカーは、『カウンター』と『ポゼッション』の両方が必要です。シーズン最初は『カウンター』から70%、『ポゼッション』から30%という攻撃の比率でスタートしましたが、今は『カウンター』が55%、『ポゼッション』が45%。カウンターの比重を強くしながら、ポゼッションの要素も持っているチームに、なりつつあります」(曺 貴裁監督)

 この1年で湘南をJ1で通用するチームに育て上げる。その目的を持ち続け、曺 貴裁監督は、シーズンを通じて『カウンター』と『ポゼッション』という2つのナイフを研ぎ澄ませました。「その使い分けこそが難しい」と、監督は言いますが、それができるチームになったからこそ、彼らは2014シーズンのJ2で、101もの勝ち点を積み上げ、初めてJ2の王者に輝けたのでしょう。

後編>>

チョウ・キジェ(曺 貴裁)
1969年1月16日生まれ。京都府出身。早稲田大卒業後、柏レイソルの前身である日立製作所サッカー部に入部。その後プロとして柏、浦和レッズ、ヴィッセル神戸でプレー。1997年に引退すると、ドイツのケルン体育大でコーチングのノウハウを学び、2000年に川崎フロンターレのトップチームアシスタントコーチに就任。セレッソ大阪のトップチームヘッドコーチ、湘南ベルマーレジュニアユース監督などを歴任し、2012年より湘南トップチーム監督に就任。今季はJ2リーグ戦を制し、J1リーグ復帰へとチームを導いた。

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