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良質なパスとは?強くて速いパスを要求するメリットとデメリット

※サカイク転載記事(2014年12月17日掲載)※

世界中に普及しているサッカーですが、各国それぞれが違ったサッカー哲学や趣向を持っています。有名どころでは、守備を重要視するイタリアであったり、テクニカルな攻撃サッカーを好むブラジルであったり、強いキックで構成されるパスサッカーを好むイングランドが挙げられます。

イングランドでは一般的に、ジェラードのように強いキックを蹴ることが求められます。なぜなら、パススピードが速いと相手DFも反応することが難しくなるため、普通に出せば通らないパスも、スピードをあげることで通すことが可能になります。実際、欧州トップレベルのチームのパススピードのアベレージは速い。しかし、強いキックを盲目的に推奨することは危険でもあります。イングランドの現場でコーチとして活躍する宇治誠さん(リヴァプールFCサッカースクールコーチ、イングランド4部トランミア・ローヴァーズFC U13コーチ)にお話をうかがいました。(取材・文/内藤秀明 写真/wonker

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■パスミスとトラップミスの境界線

宇治さんは、次のように言います。「イングランドの子どもたちは、スパーンと強いキックを蹴りたがる傾向にあります。FAでも言われるたとえ話をご紹介しましょう。スペイン人が何人かいます。彼らにボールを与えます。するとなにを始めると思いますか? 彼らはポゼッションゲーム(ロンド)を始めます。同じことをブラジル人で試すと、彼らは周囲にあるものを使ってゴールを設定し、試合(ストリートサッカー)をはじめます。これがイングランド人の場合は、ターゲットをつくって思い切りシュートを打ち始めます。壁打ちやクロスバーチャレンジなども好みます。そういうプレーが好きだから、自然と中長距離まで届く強いキックを蹴ることができる選手は増えますし、縦に早いサッカーを発展します」

「基本的に彼らのパスはつねに速く、緩急もありません。たとえば、中盤の選手が前線の選手に縦パスをあてるときも、日本だと考えられないようなライナー性の速いパスをあてるし、FWもそれをぴたりと止めることを求められます」と明かします。宇治さんはこの点が、イングランドのストロングポイントであることを認めつつも、「ただ、キックに関して強く蹴ることしか練習してこなかった子どもが多いからか、自分のパスが速すぎて味方がミスした場合や、パスに味方が追いつかなかった場合でも、『とれない味方が悪い』と言って、味方のせいにすることが多いです。これは、パススピードをコントロールする意識も能力も低いから起こる現象だと思います」

■状況に合わせた適切なパススピード

パススピードをコントロールする能力は重要です。たとえば、味方のストライカーがペナルティボックス内の狭いスペースに飛び込んだとき、適切なコースとスピードで縦パスを供給すれば決定機に繋がります。ただ、コースが正確でもスピードが速すぎれば、追いつくのは難しいですし、仮に追いついても狭いスペースの中で正確にトラップしてシュートまで繋げるのは難しくなります。また、CBがMFに緩いパスをあてることで、相手ディフェンダーを一枚引き付けてスペースをつくり、そのスペースをうまく活用して攻撃することもできます。パスは速ければいいというわけではありません。現代サッカーでは、状況に応じて緩急を用い、相手の守備に隙を生みだし、そこを突くことが求められます。

■つねに速いパスは、体の向きが疎かに

宇治さんは、この強いキックを蹴る文化が育成面で障害になっている可能性があることを次のように説明します。

「強いボールを蹴ったり、止めたりすることはできますが、ボールを止めることに注意しすぎて、体の向きが疎かになりがちです。縦パスをスペースにいる前線の選手が受ける時、ワンタッチもしくはノータッチターンで前を向いたほうが、次の攻撃に早く繋げやすい場面でも、いつも強いボールがくるからなのか、それをまず止めるためにボールに正対してしまうことが多々あります。つまり、そのボールを正対して受けるのにワンタッチ、ツータッチ目でターンして、スペースを突く攻撃に移行する。だからいいパスが入っても、次の攻撃に繋がりにくく、前進するための攻撃の機会を逃してしまう可能性もあります」

速いパススピードでボールを回すことは大切なことです。ただし、状況によっては速いパスが不適切な場合もあります。よって「つねに強いパスを出せ」というコーチングはデメリットを孕みます。子どもたちには、強いパスを蹴ることができる重要性を理解してもらいながら、少しずつでもいいので、状況に合った判断のもと適切なコースや強さのパスを出せる雰囲気をつくり出してもらいたいと思います。

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