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判断力を鍛えるトレーニングメニューとは?|ドイツの育成『ジュニアの技術論』(後編)

※サッカークリニック2月号より転載

昔からある「勝負強さ」はそのままに、「華麗なパス・ワーク」を植えつけ成果を挙げたドイツ。ここでは世界王者の「ジュニア年代のテクニック」に迫る。ドイツのケルン体育大学で講師を務め、ケルンで初となるサッカースクールを創設するなど、「育成の第一人者」として名高いクラウス・パブスト氏に、「日本の育成」へのヒントを聞いた。(取材・構成/井上直孝、髙野直樹 通訳/近藤友希[ファンルーツアカデミー・コーチ] 協力/サッカークリニック編集部

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<<前編 子供のシュート意欲を高める。

■ドリブルもパスも同じように大切

ドイツはかつて、フィジカルを前面に押し出したスタイルで戦っていたと思います。そうした時代にも、テクニカルな指導は行なわれていたのでしょうか? それとも、ある時期を境にテクニックを伸ばす風潮に変わっていったのでしょうか?

パブスト:昔はコンディションを整える練習が多かったと思います。しかし、2000年のヨーロッパ選手権での惨敗(ドイツにとっては初めてのグループステージ敗退)を機に指導方法が変わり、2004年から少しずつ結果が出るようになってきました。
オランダと比較され、ドイツはあることをよく言われてきました。「オランダは良い選手はいるけれど勝てない。しかし、ドイツには『勝つメンタリティー』がある」と。それを改善するため、ドイツはオランダやフランスなどのサッカーからテクニックの部分を学び、それを「勝つメンタリティー」に上積みしていったのです。その過程で、ジュニア年代では「1対1」を熱心に行なっていくようになりました。

日本人指導者は、「1対1」を行なう前に「ボールを扱えるようになる必要がある」という考えを持っている気がします。ドイツではそのような「段階的な考え」はありますか?

パブスト:ドイツではそうした段階を踏みません。
私は昔、テニスをしていたことがあります。テニスであれば、まずは右手で右側(フォアハンド)のボールを打てるようにし、その後、右手で左側(バックハンド)で打てるようにし、さらに、ボレーをマスターする、というような段階がありました。しかしサッカーでは、ドリブルと同じくらいパスも重要であり、プレーするには両方が必要なのです。そして、サッカーにおいて欠かせない重要な基本要素を多く含んでいるのが「1対1」の練習だと思うのです。
またサッカーは「判断すること」が最も多く求められるスポーツだと思います。「1対1」の練習をしていると、判断を求められるシーンが多くあり、この点においてもいい練習なのです。
練習でも試合でも、指導者からのアドバイスも多少はあるでしょう。しかしピッチ内では、子供たち自身の判断が結果を左右するというのが望ましいと思います。
なお私は、どんな練習であってもタッチ制限は加えません。それも、子供たちに判断してほしいからです。「ツータッチ限定で行なおう」などとすると、子供たちから「考える力」を奪ってしまうと思っています。ただ、素早いプレーは心がけてほしいので「なるべく少ないタッチ数で行なおう」とだけは伝えたりします。

■ドリブラーこそドイツでの良い選手

ドイツで言う「良い選手」とはどんな選手でしょうか?

パブスト:私はイングランドのリバプールの練習を見に行ったことがあります。そのとき、リバプールのコーチは「スピードと判断力がある選手」が良い選手だと話していました。しかし私は、「ドリブルができる選手が良い選手」だと思っています。ジュニア年代でその部分をしっかり見極めるのは難しいかもしれません。しかし見極める手がかりはあります。「ドリブルができる選手」というのは、「攻撃の正しい考え」「テクニック」「スピード」の3点を持っているはずです。その3点を兼ね備えているのが良い選手であり、良いドリブラーだと思うのです。

日本では「ドリブルができる選手が良い」と言うと、「頭の中がドリブルばかり」という選手を想像してしまいます。

パブスト:すると、ドリブル練習、パス練習、ボール・コントロールの練習、そして「1対1」という練習構成になるかもしれません。すべての練習テーマが切り離されているのです。
しかし私の場合、「ドリブルができる選手が良い」と言ってもドリブルだけ切り離した練習は行ないません。ドリブルだけでなく、「パスとシュート」「ボール・コントロールとシュート」など、試合により近い形になるような練習を行なっています。

ボール扱いがうまくなく、ボールを扱うことに恐怖心を抱く子供にはどんなアプローチを採ればいいのですか?

パブスト:「1対1」の練習でも十分に自信をつけさせることはできます。しかし、相手とのレベルが違いすぎるのは自信を失うことにつながります。それを避けるためには、レベルを1段階下げるなどし、成功体験を得られるような状況にして自信を持たせてあげるようにすべきでしょう。
私は、ミスを恐れて行動に移せない子供には「みんなミスをする。クリスチアーノ・ロナウドだってミスをするから(笑)。失敗から何を学ぶかを考えよう」と話しています。大切なのは、子供が同じミスをしないようによく考えさせ、再度チャレンジさせることです。それでもできなかったら、指導者からアドバイスをもらって再び挑戦すればいいのです。そしてそのとき、しっかりアドバイスできるのが指導者の役目なのです。

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[ドイツ流指導の3つのポイント]
1:「1対1」を数多く行なう
2:どのメニューにも「ゴール(目的)」を設ける
3:どのメニューでも得点を競わせる

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「フィニッシュを向上させる」トレーニングメニュー紹介

【練習1】シュート練習1
進め方:ボール保持者はマーカーでつくられたエリア内にボールを出す。ボールに合わせてエリア内に入り、シュートを打つ。チーム対抗で行ない、どちらが多くゴールを決められたかを競う

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【練習2】シュート練習2
進め方:ボール保持者はコーンにボールを当てられたら中央のマーカーへ進む。コーンにボールを当てられなかった場合は列の最後尾に並ぶ。先に全員がコーンにボールを当てられたほうのチームが勝ちとする

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【練習3】シュート練習3
進め方:ボール保持者は目の前にある2つのコーンをドリブルでジグザクに通過してからシュートを打つ

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【練習4】シュート練習4
進め方:2チームで順番にゴールキーパーを務めるシュート練習。ボール保持者はコーンが設置されているところまでドリブルし、シュートを打つ。シュートを打ったあとはすぐにゴールキーパー役となり、ゴールマウスに立つ。ゴールキーパー役だった選手はシュートに対応したあとに、自チームの列の最後尾に並ぶ

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【練習5】シュート練習5
1の選手の進め方:1の選手はドリブルしたあとシュートを打つ。シュートを打ったあとはすぐに2の選手に対して守備を行なう。2の選手の攻撃が終わったあとは、2の選手とともに3の選手に対して守備を行なう
2の選手の進め方:1の選手がシュートを打った直後にドリブル開始。1の選手の守備を交わしシュートを狙う。攻撃が終わったら1の選手とともに3の選手に対して守備を行なう
3の選手の進め方:2の選手がシュートを打った直後にドリブル開始。1の選手と2の選手の守備を交わしシュートを狙う

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【練習6】試合形式でのフィニッシュ
進め方:マーカーで区切られたグリッド内で2つのゴールを設けた「4対4」。白チームはどちらのゴールを狙ってもいい。黒チームがボールを奪った場合はポゼッションのみ行なう。3分で攻守交代。2人のゴールキーパーは守備側(黒チーム)とする

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育成改革によりEURO2000の惨敗からたった10年で復活を遂げたドイツ。個の強さにテクニックと創造性を備え、全員が走ってパスをつなぐ最強の「モダンフットボール」へと進化しました。名門1. FC ケルンの育成部長も務め、多くのブンデスリーガを育てたクラウス・パブストがその最先端トレーニングを伝授。U-12指導者向け教材『モダンフットボール【MODERNER FUSSBALL】』
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