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あなたのチームは「オープン」ですか?/FCトリプレッタ代表・米原隆幸氏のチームビルディング 前編

チームのメンバーが入れ替えとなる4月。気持ちも新たに新体制・新戦略で臨むにあたり、3月はその準備期間として最も重要な時期となる。「コーチの補強」「新選手の分析と対応」──それと同時に大事になるのが「指導計画の見直し」だ。家を建てることをイメージしてほしい。頑丈な基礎があってこそ、安定した家が成り立つのであって、チームを組み立てるのも同じこと。まさに「チームビルディング」だ。東京・渋谷区を中心に活動するFCトリプレッタは、キンダーからトップまで約500人の選手を抱える大型クラブ。今回はその代表を務める米原隆幸氏に、チームビルディングの理論と実践について聞いた。(取材・文・写真/隈崎大樹)

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■「選手が作る」チームビルディング

米原氏が担当するトリプレッタユースの特徴として、選手が能動的にチームビルディングを行うシステムがある。

「ユースになると『選手から選手へ教える』という環境を用意しています。それがスムーズにいくように『キャプテン』『副キャプテン』『教育係』といった役職を決め、それぞれの役割を認識させることから始めました。中にはキャラクター性が良くムードメーカーとなる子に"宴会部長"なんて役職も(笑)。それらはすべて選手のみで運営し、我々コーチ陣は介入できないんです。3年生が卒業するとき、引き継ぎの発表があるのですが、それも我々には人事権がありません。選手から発表があるまで、次は誰が何の役職につくのかまったく予想がつかないのです。こちらでも予想はしておくのですが、毎回予想外の発表に驚かされていますよ。選んでいる3年生は真剣に考え抜いた結果なので、我々もなぜ彼らがその答えを選んだかを考えてみるんです。しかし、我々がその理由を発見するのは、ある程度時間が経った後だったりするんですよね。それだけ3年生は仲間のことをよく知っているということですが、裏を返せば、私たちが見えていないことがいかに多いかということに気づかされます」

それだけ仲間を信頼し理解している関係は、学年の壁を取り払ったオープンなグルーピングが影響しているという。良好な関係の中で、彼らは1年間の目的・目標を設定していくのだ。

「先ほど紹介した『役職』が決まったら、今年のスローガン(目的)を設定し、その達成のために3つの目標を決めます。例えば、スローガンが『◯◯杯ベスト4進出』だとしたら、それに対して『攻守の切り替えを早く行う』『最後まで走り切る』『みんなで盛り上げる』といった目標を掲げるといった具合です。最後に、その目標を1年間維持するためにどうしたらいいか――『遅刻をしない』『力を抜かない』などの約束を設定していくのです。大切なのは、『土台となるルール』ができているか。その確認作業も、1年生から3年生を縦割りグループにすることで、選手同士が意識を高め合う環境を作っています」

トリプレッタでは選手が能動的に計画を立て、学年を気にしないオープンな関係を作ることで選手主体のチームビルディングを実現している。

■トレーニングを左右する選手とコーチの関係

「選手とコーチ。この信頼関係が何よりもトレーニング、ひいてはプレーに影響します。それは私自身も実感するところであり、やはり思いを一つにして、目的に向かって行くことのできる組織作りがベストなんです。そのために、私が常に自分に問いかけながら指導していることは、『選手の気持ちを理解しているか』ということ。もっと若い頃は子どもたちに混ざってトレーニングをしていました。そうすることで、選手と自分の距離感がグッと近づくからです。指導者としてキャリアを積んでいくと、自分では気にしていなくても選手が私に身構えてしまうことがあったり、アイスブレイクまでに時間がかかることもあります。いまでは体力的にも選手と一緒にプレーすることが難しくなりましたが、距離を感じたらすぐに選手とコミュニケーションを取るように心がけています。トレーニングの内容においても、どのくらいの強度で行えば適切か、選手にとってオーバートレーニングにならずかつ満足感を与えられるか、という判断を常に行っています」

筆者もいくつかのチームで指導の経験がある。やはり、選手と一緒に走り、蹴ることは一番のコミュニケーション方法だと感じている。特にフィジカルトレーニングのような、身体への強いストレスを感じる内容を一緒に行うことで、"戦友"とでも表現したくなるほど、お互いの距離はグッと縮まる。コーチが選手と同じ気持ちを体験することで、選手は「自分たちのことをわかってくれている」とオープンマインドになりやすいのではないだろうか。

また、選手との意思の疎通においてもうひとつ大事にしなければならないことは「コーチの配置」だ。ジュニアユース・ユースの選手は、ジュニアで積み上げてきたスキルに加えてサッカーを理解する力が備わっている。つまり、コーチが考えるコーチングを理解しているということだ。レベルの上がった選手たちには、その場しのぎの薄っぺらい内容では容易に見透かされ、結果として信頼関係を得られるはずもない。この「コーチの配置」について米原氏はこう話す。

「コーチとは、単にトレーニング法を学び、選手に伝達するのが仕事ではありません。これまでのトレーニング法を分析する力が必要であり、現状で伸ばしたいストロングポイント、克服したいウィークポイントの的確な洗い出しが必須だと思います。そこがより的確であればあるほど、選手の納得度は増すはずですし、取り組み方も違ってくるのではないかと思います」

■新チームをどのように選抜するか?

「ある程度選手と時間を共有すると、スターティングメンバーの11人はすんなりと決まります」。そう切り出した米原氏だが、難しいのは残りのサブを決めることだという。

「12人目からのメンバー決めが悩みます。そこで決め手にするのが『チームにどれだけプラスの効果をもたらしているか』です。チーム内で自分の役割を理解している選手、サブでもレギュラーの選手に精一杯声を出して応援している選手、技術は他の選手より劣っているけれど、それを補うために試合の最後まで走りきる選手――。技術がある選手から順に決めるのではなく、選手のキャラクターや他の選手にどのような影響を与えているのかを考慮して決めるようにしています」

そこでケアが必要になるのが、メンバーやサブにも入れなかった選手たちのモチベーション。米原氏はすべての選手にレギュラー入りのチャンスがある体制をとることでそれらを維持している。

「選手のモチベーションを落とさないために、新しい大会ごとにメンバーを決めています。すべての選手を入れ替えることは難しいですが、少なくとも1~2名は必ず入れ替えます。チーム内の"新陳代謝"を行うことで、選ばれなかった選手は『次もチャンスはある! それまでにレベルアップしよう』となり、モチベーションが上がることを狙っています。反対に、レギュラー選手はトレーニングやコンディション管理に手を抜くと、他の選手にレギュラーの座を奪われてしまうという緊張感が出てきます。またグループをAとBに分けたとき、Bよりレベルが高いAに入る実力を持っている選手を、あえてBに入れることもあります。もしAに入ったとしてもなかなか試合に出ることができないのであれば、Bでプレー回数を確保する方法もあります。ただ、選手にはなぜAに入れなかったのかをしっかりと説明し、モチベーションを下げないようにケアをすることも忘れないようにしています」

勝たせてあげたい気持ちが先行するあまり、育成を忘れた選考をしがちではないだろうか。育成年代の指導ベースは、米原氏のように選手の成長を第一に考えて行う必要があるだろう。

後編:「魅せる」チームはこうやって作る!>>

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